第23話 王都で収集しよう
次の日、私達は朝一で門に並んで、王都へ入ったの。街に入ったら予定通りそれぞれで動きだしたのよ。私とバージさんで食料補給、グラレスさん、ダンさん、ルインさんで商業ギルドで情報収集、エレンさん、カエラさん、シャルさんで冒険者ギルドに魔物を卸して情報収集って感じにね。何かあったら魔導リア・ウォッチで連絡する事になっているの。大体お昼過ぎに門に集合予定にして。
「ばーじしゃん、ちゅぎはあれでしゅ!」
「はいよ」
それで今私はバージさんに抱えられながら、市場の中で目当ての物を指差していっているのよ。さすが王都ね。人が多すぎて歩けないのよ。でもこの方がバージさんも安心だから良いんだって。私も抱っこ慣れてきたしね。
そして私が指差しているのは、イエローグレープ。木漏れ日の宿で食べてから大好きになったのよ。
「お、可愛い子だねぇ。買っていくかい?」
「ああ、金貨二枚分くれ」
「おお!有り難い!兄さん、これもどうだ?バイオレットグレープ!種はあるが美味いし、色々使えるぞ!」
「ばーじしゃん!」
「ああ、もらおう。同じ分だけくれ」
「毎度!」
結構豪快に買うでしょ?これはちょっとお願いしていたの。やってみたい事があってね。おじさんが木箱にイエローグレープとバイオレットグレープを詰めていくのを見届けながら、アイテムボックスに入れて行く私。
「おお、良いねえ。アイテムボックス持ちかい?……アイツらもそれがあればもっと持って駆けつけただろうに……」
意味深な事を呟くおじさんにバージさんが聞いてくれたわ。
「ん?なんかあったのか?」
「ああ、兄さん達知らねえのか。今パルフール山脈に魔物が集まっているらしくてな。特別依頼でウチの常連のパーティも駆けつけて行ったんだ。どうやら現地の民が食料補給できなくて困ってるらしい。持っていけるだけ持っていったが……無事に帰って来れば良いんだがな」
おじさんも良い人なのね。でも、パルフール山脈は私達も行くところじゃない!もしかしてポータルスポットの影響かしら?そうだとしたら……
「ばーじしゃん!」
「……買えるだけ買っていくか!」
お金は魔物を卸せば入ってくるし!と思っていたら会話を聞いていた他の屋台の人達がね……
「お!兄さん達こっちもどうだい!」
「新鮮な野菜まだあるよ!」
まあ、売り込む売り込む。私達も値切ったり、交渉したりしてね。……結構買っちゃったのよねぇ。
で、お昼に門で集合して、早速出発したの。今回魔導バイクで警戒にあたっているのは、ダンさん、ルインさん、バージさんの3人。他の人はハイヤーの中で報告。そして私がまずは報告していたの。
「ああ、商人さん達は情報早いですからね。しかし、買いましたねぇ」
報告を聴きながら購入リストを見たグラレスさんがちょっと驚いているのよね。私のお金も持ち出しちゃって買ったからなぁ。でもアイテムボックスの中だから腐らないし!と思ったけど。
「かいしゅぎでしゅか(買いすぎですか)?」
「いや、旅に必要ですし、何があるかわかりませんからね」
「そうよ。こっちもお肉たっぷり補給出来たし、これで何があっても大丈夫よ」
少し反省する私を宥めてくれるグラレスさんとカエラさん。
そうそう、カエラさん達にはこれを渡していたのよ。
〈雑貨魔導具〉より
魔導拡張リュック MP 23,000 お買い得品!
***旅には必需品のリュック!それも空間拡張付きのこの品!マジックバックと同様に使用できますが、違いは時間停止機能に常時メンテナンス付きで空間をきっちり使い分けます。オシャレな女性が持っていても違和感のないデザインと、盗難防止用に個人認識機能もついて、手元から離れても自動で戻ってきます。勿論肝心の収納も大型オークがそのまま50体入る程!さあ、セールの今買って損はありませんよ、奥さん!***
誰が奥さんよ!って突っ込んだところでサイトなのよね。でも購入したらカエラさんエレンさんが喜んでくれたから良かったけど。
お肉の補給は今回時間なかったから、オーク50体分のうち10体分しか解体できなかったみたいだけどそれでもたっぷり。ついでにオーク討伐常時依頼の料金も貰ってきたみたいよ。カエラさん達残りのオークは売ってきて私達が使ったお金余裕で戻ってきたみたい。良かったぁ。
「冒険者ギルドで分かったのは集まっている魔物の種類ね。ビックホーンワイルドシープは勿論、ジャラズリザードの姿も確認が取れているみたいね」
「それに冒険者パーティが王都から三組派遣されているらしいわ」
エレンさんの報告にカエラさんも追加で情報を伝えてくれたの。現地の人には悪いけど、冒険者パーティがいるとエターナル魔石回収やりづらいなぁ。まだ見つかってなければ良いけど。
「そうでしたか。こちらの商業ギルドではマパヤの被害情報でしたね。希少な毛を持つマパヤも魔物には勝てないですからね。それに現在カシュミールの値段が高騰していました。どうやらヤナ族にも被害が出ているみたいですね……」
ヤナ族に顔がきくグラレスさんは少し心配そうな表情をしていたわ。出来るだけ間に合えば良いけど……
「まあ!こんなデザインもあるんですの?」
沈黙した車内で、1人違う反応を示すシャルさん。今日はシャルさんが魔導エクレシア辞典の優先日でさっきから読んでいたのよ。「まぁ」「あら」「こんなやり方が!」って後ろから聞こえてきていたしね。
デザインで釣られたカエラさんやエレンさんも巻き込んで、今は3人でキャイキャイ見ているわ。色んな服のパターンが出てきているみたい。
その様子に私とグラレスさんは顔を見合わせて苦笑い。報告会は一旦終了したの。その後はグラレスさんの隣りに座って王都について聞いていた私。
急ぎの旅の為、王都は数時間しかいなかったけど、本来なら見どころがいっぱいあったんですって。そもそも王都は水の都。噴水や池が多く、景観も家の色が青で統一されていたのよ。碧の街とも呼ばれているそうだけど、確かに見事だったわ。それに屋台の数多く、商品も珍しいものが集まりやすいんですって。
「ぐりゃれしゅしゃんは、なにかかったでしゅか(グラレスさんは、何か買ったですか)?」
「私は勿論ギルドで購入済みですよ、ほら」
魔導拡張リュックはグラレスさん達にも渡していたのよ。そのリュックからチラッと見せてくれたのはヤットの毛から作られた布。話を聞くとヤギみたいな動物ね。通気性もよく柔らかくて肌触りがいいの。カシュミールと同等の生地なんですって。
「この生地は中々出回らないですからね。良いものが買えました」
ホクホク顔のグラレスさん。あの短い時間で探し出すなんて流石ね。
「そういえばユイさん、やけにグレープの量が多かったですね」
グラレスさんが不思議に思う程買った理由はね、移動中に試したい事があったの。
「はいでしゅ!こりぇやりたかったでしゅ!」
私がアイテムボックスから取り出して、車内にドンと出て来たのは木製の樽。でもただの樽じゃないわよ。
〈雑貨魔導具〉より
魔導ワイン製造樽 MP 1,000,000
***新鮮なグレープが手に入ったら一度は試してみたいワイン作り!本来の工程の選果→ 除梗・破砕→ 主発酵・醸し→ 圧搾→発酵・熟成→ 滓引き→ 清澄・濾過を、この魔導具一つで行います!勿論酵母も自動育成。熟成期間も選べ、経過時間短縮機能も搭載!
そして是非同時購入して頂きたいのが、魔導ダストボックス!こちらと同期して頂くと工程終了後、余分な果皮・果肉・種子、酵母、滓を自動で廃棄します!貴方の手を一切汚しません!さあ、手作りワインを作ってみましょう!***
「おお!ワインが作れるのですか!」
「そうでしゅ!やってみたかったでしゅ!」
「そうなるとユイさんは飲めませんから、試飲は是非お任せ下さい!」
「そうなんでしゅよね……」
まあ、私は新鮮なジュースしか飲めないのが難点だけど。見つけた時からやってみたかったのよ。で、みんなが美味しく飲んでくれたらそれで良いし。お酒飲みの雰囲気って好きなのよね。
魔導ダストボックスも取り出してまずは、魔導ワイン製造樽と同期。その後グラレスさんに手伝って貰って、樽の中にバイオレットグレープを入れて、熟成度合いを甘口に設定。後はボタン一つで終わり。
「いどーちゅうにできましゅね!」
「なんと……本来数ヶ月から一年以上かかるワインが二、三時間で出来るとは……!旅の楽しみが増えましたね!」
私とグラレスさんがハイタッチで喜んでいると
『やりー!』
『ユイちゃんありがとう!後で、その魔導具見せてくれ!』
『おー楽しみだな』
外のバイクメンバーから魔導リア・ウォッチを通して聞こえて来たの。グラレスさん、報告会の時から外メンバーにも聞かせてたんだって。流石気が利くグラレスさん!
順調に進むハイヤーはこの日は何事もなく(途中で魔物出てたらしいけど、外メンバーが駆除したんですって)宿泊地に到着。
夕食に出したワインが好評で、行く先でグレープがあったら買い占めようって話になったわ。量もほどほどで悪酔いするだけはないから、明日の移動にも差し障りないからね。
ふふっ、みんなの笑顔が増えて良かったわ。
私もイエローグレープジュース美味しかったし、明日に備えられたわね。
明日は遂にウェルグロードに入るのよ。
ビッグシャムダイルや魔物は怖いけど、名所らしいし楽しみね!
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