第18話 順調な1日を満喫しよう
「ありぇ?いちゅのまに?」
朝気づいたらベッドの上で寝ていた私。ウィルも隣りで寝ていたのね。私の声で起きて毛づくろいしているわ。多分バージさんが連れて来てくれたのね。後で感謝しなくちゃ。
「んー‼︎きもちよかったでしゅ!」
身体を伸ばして思いっきり空気を吸い込んで、さあ起きよう。トイレに行って、一人で着替えて……っと。小さな手はまだまだゆっくりしか出来ないのよね。朝の支度をすると、ウィルがピョンと私の頭に乗ってきたの。この場所が良いの?仕方ないなぁ。ウィルを頭に乗せて扉を開けると、パンの良い匂いが漂っていたリビング。
「おはよう!ユイちゃん」
「おはようございます」
グラレスさんとシャルさんが、笑顔でキッチンから挨拶してくれていたの。よく見るとスープとパンが出来ていたのよ。ええ!シャルさんもしかして作ったのかしら?
「おはようごじゃいましゅ。しゃるしゃんちゅくったんでしゅか?(おはようございます。シャルさん作ったんですか?)」
「んふふふ。そうよって言いたいけど、旦那さまよ」
「私もスープくらいなら作れますからね」
自慢気に言うグラレスさんと、そんなグラレスさんを誇らし気に見るシャルさん。うん、お似合いね。この夫婦。ちょっとホッとしていると、玄関側の扉からガヤガヤ声が聞こえて来たの。みんな鍛錬から帰ってきたかしら?
「うお!良い匂い」
「あ、グラレスさん特製スープね!」
「美味しいのよねぇ」
「やっぱり素晴らしい!この空間は!」
「あ、ユイ。起きたか」
お腹をおさえたダンさんや、匂いで作った人を特定したカエラさんとエレンさんが笑顔で入って来たかと思ったら、まだテンションの高いルインさん。バージさんは私にすぐ気づいてくれるのよね。
「おはようごじゃいましゅ。すぐたべれましゅよ」
アイテムボックスからパンを出したり、作り置きを出したりしていた私とシャルさん。グラレスさんはスープを盛り付けてくれていたの。2人手伝ってくれるとやっぱり早いのよね。手を洗って席に着くみんなに、先に食べて貰うようにお願いする私。
「ユイ?何するんだ?」
「しらべりゅでしゅ」
不思議そうに聞くバージさんに、手を伸ばして壁掛けリモコンを取る私。そう、この備え付きの壁掛けTVも多分魔導具よね、って思っていたの。出発前に調べたかったのよ。
リモコンの電源ボタンを押すと、プッ……と電源が入る大型TV。みんなも食べながらこちらを注目しているわね。画面が映ると文字が表示されていたわ。
『現在魔導エクレシア辞典と同期中……残り時間0:01』
え?TVと辞典が同期しているの?みんなもざわつく中、同期が完了したらしく画面がきりかわったの。そしたら……
『 メインメニュー
1・魔導エクレシア辞典
2・周辺地図
3・周辺映像
4・映画
5・ドラマ
6・アニメ
7・クラシック音楽
8・クラシックゲーム 』
「こりぇでもまどーえくれしあじてんみれりゅんでしゅか!(これでも魔導エクレシア辞典見れるんですか!)」
しかもリモコンを持っている人の必要なページにいくらしいの。だから私が今押すとこれが出てきたわ。
『[エターナル魔石]
魔導具ショップサイト経由で出した魔導具のバージョンアップに必要な魔石。
・魔導ハイヤー 0/1
・魔導エクレシア辞典 0/10
・三つ選択可能 【生活魔導具サイト】の中から選択
(購入済み魔導具限定) 0/1 』
「ユイ!魔導エクレシア辞典が加わっているぞ!」
「また面白い事になっていますねぇ」
「うおお!次!是非触らせてくれ!」
「ルイン……落ち着けよ」
まだ魔導エクレシア辞典に隠されているものがあるのね。バージさんやグラレスさんもすぐ反応したけど……ルインさん、椅子から立ち上がってお願いしているわ。ダンさんが落ち着かせて椅子に座り直したけど。よっぽど好きなのね。
とりあえずメニュー画面に戻すと、女性陣は興味は下の方に行ったわね。やっぱり映画やドラマって、女性の琴線に引っかかるものなのかしら。上手く説明できなかったから、これは後で見ようって事になったわ。
それよりも周辺地図は良いわね。大画面でみんなで確認が取れるから有り難いもの。現在位置文字で表すとこんな感じかしら。
王都 ← ヘルーガ ← クウィラ ← 現在位置
今はケーリット山の中央位置にある洞窟内。そこからクウィラの街までがバイクとハイヤーで10時間、クウィラの街からへルーガまでハイヤーで二日、ヘルーガの街から王都までハイヤーで1日なんですって。
クウィラの街は変わった布がある街だから、此処にはグラレスさんの希望で寄る事に。クウィラの街で食料も補給して一気に王都まで行く事になったわ。ヘルーガの特産物は王都でも手に入りやすいから、ヘルーガは素通りする予定なの。
で、意外に面白いのが周辺映像ね。コテージテントの360度の画像が見れるのよ。映像は暗いところだと暗視スコープ映像になるのね。おかげで洞窟内も見やすいけど……
「みぎゃあ!」
ビックリしたわ!右に何かあったな、と思ったら魔物のドアップなんだもの!「あ、悪い」って謝るダンさんが言うには、鍛錬中に襲って来たワイルドベアですって。私に収納してもらおうと持って来たそうなの。凄いわよね!試しに画像見たまま収納できるかなぁってやってみたら、入ったのよ!これが!凄い便利。
その後は素早く食べ終わったルインさんと交代して、ご飯をモキュモキュ食べ始めた私。ルインさん、凄いわぁ……あっという間に使いこなすのよ。今クラシック音楽聴きながら、魔導エクレシア辞典見てるわ。ついで全員で見れるからTVで見るのも良いわね。
そんな感じで少し長めの朝食をとって、今日こそ王都へ向けて移動開始!で、私はいつもの格好ね。今、バイク運転中のバージさんに背負われているわ。
洞窟を出て、グラレスさんの指示の通りに山道を下り街道に出た私達。私は早速魔導ハイヤーを出して、クウィラに向かっているの。今日の車内は私、グラレスさん、シャルさん、ダンさん。他のみんなはバイクで移動中。
今日の魔導エクレシア辞典の優先権はダンさんね。本当はルインさんだったんだけど、ルインさんはTVで見たいんだって。よっぽど気に入ったのね。で、ダンさんは……
「へえ!こうすると力が半分で済むのか!」
「おおー!こんな技まである!」
後部座席で1人エキサイトしていたわ。というか戦いの指南書まであるのね。でもそうなるとページ数が分厚くなると思うでしょう?これがその人にあった情報の本になるのよ。全く仕組みがわからないわ。まあ、こういうのって受け入れた方が早いのよね。
途中休憩を挟んで、今日の旅は順調に進んだのよ。おかげでもう見えて来たのよ。
『間もなく本日の目的地クウィラの街に着きます』
タクには街まで行かずに、今日は近くの広場で止まって貰う事にしたのよ。ここで今日はテントを出して宿泊。ルインさん、一目散に中に入っていったわ。本当に楽しみにしていたのね。
今日は夜の鍛錬お休みの日なんですって。ダンさんは本の魔導エクレシア辞典に夢中だし、ルインさんもTVで夢中になってみてるし、エレンさんもTV一緒になって見ているし。
で、グラレスさんとバージさんは、ゆったりお風呂に浸かりにいって、私とシャルさんとカエラさんで夕食作り。えへへ、今日はカエラさんもいるし、明日食料も補給出来るしで贅沢にしてみたの。
「きょうのばんごはんは、ぱんとろーしゅとおーくとぼあしちゅー、くだものでしゅ(今日の晩御飯は、パンとローストオークにボアシチュー、果物です)」
「「はーい」」
料理番組みたいに始める私に、ノリ良く付き合ってくれる2人。早速指示を出す私に嫌な顔せず動いてくれるの。助かるわ。
もはやパン作りはお任せしても良いシャルさんにはパンを。カエラさんにはシチューの具材をカットして貰って、私はオーク肉の塊を調味料と合わせて袋の中でモミモミ。調合魔導プリンターでローストビーフのタレとビーフシチューの素作っていたから本当に楽なのよ。クップロックも作れたから手も汚れないしね。
カエラさん監修の下、シャルさんに大鍋でお野菜とお肉煮込んで貰って、ルーを入れてしばらく煮込んだらボアシチューの出来上がり。オーク肉って圧力鍋いらないくらい柔らかいのよ。
ローストオークの方は魔導レンジで2回チンをするだけで出来るのよ。漬け込み時間も焼き時間も短縮出来るの、この魔導レンジ。便利ねぇ。で、後は量を作って行くだけ。パンとシチューの良い香りがして来たら、お肉をスライスして貰って出来上がり。
丁度お風呂から上がって来たグラレスさんとバージさん。エレンさんも配膳を手伝ってくれて準備は万端。なかなか席につかないダンさんとルインさんも強制的に席に着かせて、やっと頂きますが出来たの。
美味しい食事に気の合う仲間で今日も一日が締めくくられて……
ってそうならなかったのよね。食事中に見ていた「王宮のレシピ」ってドラマに女性陣がどハマりしたの。王宮の厨房に召し抱えられた女性の成り上がりドラマなんだけど、第三王子との恋愛も入ったりと、この世界の食事と恋愛模様が上手く構成されていて男性が見てても面白いらしいのよ。あのダンさん、バージさんまで見ていたからね。
私は勿論途中で眠っちゃったけど、流石に深夜になったらグラレスさんが終了させたんですって。だってあのドラマのコンテンツ見てみたら、第4部まである超大作ドラマだったの。
ハマり具合を見たグラレスさんの取り決めにより、夜だけそれも4話ずつ視聴する事になった次の日の朝。話題はドラマ一色。その日から夕食がみんなの楽しみになったのよ。
でも一体誰が作ったのかしらね?
自分のスキルだけど、本当に不思議。
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