第40話 温泉施設を作ろう 1

 「さぁーみなしゃん!がんばるでしゅよ!」

 「「「「おお!!」」」」


 凸凹だった地面はルインさんに直してもらい、ヤナ族の有志に穴を掘って貰う事にした私。ん?ルインさんに土魔法で掘って貰ったらって?そうしようとしたのよ?


 「我が村の為と聞きました。是非我らでやれる事はやらせて頂きたい!」


 村の若い男衆が私に嘆願してきたの。と言う事で送泉管を埋める溝を掘ってもらう事にしたのよ。でも道具が心許ないものだったから、出してみました魔導具ショップサイト!


 建設用魔導具より貴方におススメ!

 魔導スコップ MP 5,000

 ***力仕事もこれがあると大丈夫!硬い地面が豆腐を掘るようにスイスイ進みます!勿論、重量軽減効果もありますから、どれだけ重くても大丈夫!邪魔な根や岩さえ簡単に除去できます!穴掘り、土堀り、溝掘り、掘起こし等広範囲な作業分野で活躍しますよ!さあ、自動メンテナンス付きの逸品を村人の為にお買い上げ下さい!***


 まぁ、相変わらずどこまで事情が通じているのかわからないけど、とりあえず貴方におススメは助かるわよね。まずは10本買ったわ。ヤナ族のみんな、使った時の反応が凄かったわね……


 まあ、これで温泉から村の外れの一軒家までと、排水の為に川までの穴を掘って貰う作業は目処がついたの。因みに、この温泉施設予定の一軒家は、実は元村の集会所だったの。すっごく広いけど古くて最近は物置として使っていたんですって。だからね……


 「……うわぁ。きちゃないでしゅ……」

 「ま、そりゃそうだろ」


 私のお守りのバージさんも納得の汚さ。一緒にいるヤナ族の女性達は申し訳なさそうな顔をしてたわ。あ、ごめん。


 「にゃらば!きれーにしゅるまで!みなしゃん!おねがいしましゅ!」

 「「「「「はい!」」」」」


 ここも女性陣が自分達で綺麗にしたいって言うから、生活魔導具から道具を出したわ。


 魔導お掃除セット MP10,000

 ***長年の汚れでお困りですか?でしたらこのお掃除セットがお薦めです!まずは魔導伸縮ホウキ!ひと履きで細かい埃から長年の家のシミまで履き除きますよ。そして出てきたゴミは魔導ダストボックス塵取り仕様へお任せあれ!吸引力付きでどんなゴミも逃しません!収納したゴミは自動で除去されますので、ゴミ捨てを気にせずスイスイお掃除が出来ますよ!

 更に登場、伸縮魔導クリアモップ!こちらは水拭きから艶出しワックスまでが一度にできます!家中をピカピカにできますよ。そして今回限定の付属品、魔導布巾10枚セットもついてこの価格!自動洗浄付きで永続的に使えるこの道具は奥様達の垂涎の的!さあ、今すぐお買い求めを!***


 うん、これ奥様達欲しい逸品ね。しかも楽しそう!私もやらせてもらおうと思ってこれは3セット買ったわ。使い終わったらヤナ族のみんなで使い回してもらえたらいいし。


 そう思ってたんだけど……

 

 「ユイちゃん!これ良いですわ!我が家にもあった方がいいですわよ!」


 シャルさん乱入して来て感動しまくり。いやいや、うちのテントは自動清掃ついてるからいらないですって。


 まあ、汚れが見る見るうちに綺麗になるのって確かに楽しいのよね。私も魔導布巾でお手伝いしてたら夢中になったもの。それでいてゴシゴシする必要もないから、1時間もしたら全体が様変わりしてたわ。


 「ほわぁ〜!しゅごいでしゅね〜!」

 「ふふっ、凄いのは魔導具よ。ユイちゃん」


 私の頭を撫でながら、1番楽しそうだったシャルさんが満足気に元集会場を眺めていたら、バージさんが道具を持ってこっちに歩いてきたの。


 「ユイ!これめちゃくちゃ簡単に岩が切れるんだな!かなり岩タイル作って来たがどうする?」


 バージさんには魔導ノコギリMP5,000を渡して、石の床材を作って貰っていたの。これも豆腐のように岩が切れてヤスリ機能もついているのよ。試しに持ってきて貰った一枚を見たら、大理石かってくらい綺麗な石のタイルができていたわ。バージさん凄い!


 「あー!いいところにきてくりぇました!かべもきってくだしゃい!」

 「壁?ああ、部屋広げんのか?あ、柱はそのままにするぞ」


 バージさんすぐ理解してくれてサクサク仕事をしていってくれるの。しかも、男性陣捕まえて来てくれていたから除去作業も手早く出来たしね。ヤナ族の女性達よっぽど掃除用具気気に入ったのか、素早く現場を綺麗にして行ってくれるの。うん、助かります。


 いい感じで二つの部屋に分かれたところで、浴槽作りね。目指せ岩風呂!


 お風呂の設置場所の床を剥がして貰って……あ、グラレスさんも来てくれたのね!族長さんに言われてヤナ族の男衆集めて来てくれたって?うわぁ、嬉しい!


 ここでも魔導スコップがお役立ち。ヤナ族の家って、床レンガを敷き詰めただけの床だし、すぐ下が地面になっているんだもの。また簡単に掘り進めてくれたわ。


 更に登場、魔導一輪車(作業用)MP10,000!これは外の作業用に出したもの。重量軽減、積載量1トンクラス。荷台に空間拡張かかっているらしいの。移動もラクラク。子供の力でも押す事が出来るのよ。それを大人のヤナ族が使うと……


 「ユイ様、二箇所掘り終わりました」

 「は、はやいでしゅね……」


 私が驚くくらい早く作業が終わっちゃったの。勿論排水、温泉からの送泉管の穴も掘ってくれたのよ。一つ作業するたびにお掃除隊も動くから、驚きの綺麗な作業現場よ。


 後、魔導複合濾過ポンプセットを買って進めてしまいたいけどMPが結構取られるのよね……夜の寝る前に買いたいし。今日はこの辺にしようかな。

 

 「と、とりあえじゅきょーはここまででいいでしゅ!みなしゃん!またビールとワインだしましゅから、のんでいってくだしゃいね!」


 私の労いの言葉に「おお!」と喜んだのは、王都からきた冒険者達。そう、彼らも作業中のヤナ族の護衛を買って出てくれていたの。帰りにアンホークに乗って帰ってみたいからって。でも、毎日出すビールやワインのためじゃないかって思うくらいよく飲むのよねぇ。ま、楽しんでくれるならいいけど。


 みんなで集会場に戻りビールとワインを出すと、シーラさん達はも料理を作ってくれていたのよ。おかげで、今日も宴会みたいな騒ぎになったわ。


 でも私は飲めないしそろそろ眠気が来たから、バージさんにテントに連れてきて貰ったの。寝る子は育つっていうし、早く大きくなりたいしね。


 バージさんに部屋に連れてきて貰って、ベッドの上でウィルのもふもふ羽毛を堪能して、私はすぐにお休みモードに入ったの。


 


 「……うにゅ……?」


 ぼー……として起き上がると「ピッ」っと鳴いて私の頭に飛び乗るウィル。あ、ウィルも起きてたのね。


 どれくらい寝てたかなぁ?


 そう考えながらトテトテとリビングの扉を開けると、音楽をかけながらエレンさんとカエラさんがお茶をしていたわ。


 「あ、ユイちゃん起きた?」

 「何か飲む?」


 にっこり笑って迎えてくれるエレンさんと、飲み物を用意してくれるカエラさん。あ、二人が私の為に残ってくれたのね。


 「ありがとうでしゅ。ほかのみんなはどうしたでしゅか?」


 ジュースを受け取ってみんなの様子を聞くと、なぜか顔を見合わせる二人。ん?なんかあったのかしら?


 「ああ、違うのよ。他のみんなはまだ宴会の方に行っているわ」


 私が心配そうな表情をしたから、慌てて状況をエレンさんが教えてくれたわ。でもカエラさんは頭を抱えていたの。


 「問題はルインよ……」


 呆れた口調で教えてくれるカエラさん。


 「ルインしゃんがどうしたんでしゅ?」

 

 私の質問にため息を吐きながら、おいでおいでをするエレンさん。カエラさんは私の飲みかけのコップをテーブルに置いてくれて、私を抱き抱えてくれたの。


 外に移動するのかな?って思っていたら、玄関通路脇の部屋の扉を開けるエレンさん。カエラさんに抱かれたまま部屋をのぞいて見たらね……


 ゴウンゴウンゴウンゴウン………


 「……成る程。ここで繊維の選毛をする装置が作動している……この模様はなんだ?……異物除去か?」


 エレンさんが開けた部屋は、魔導紡績工房になっていた部屋だったのよ。それが稼働していて次々に糸が出来ていたの。でもルインさんは糸が出来ていても、気にせず紡績魔導具を観察しているだけで完成された糸が床に散らばっていたの。


 「あああ!もったいないでしゅ!」


 あれマパヤの毛で出来た糸よね!カシュミールの原料がぁ!


 「大丈夫よユイちゃん。……ほら来たわ」


 腕の中で慌てる私を落ち着かせて、カエラさんは玄関に顔を向けたの。ん?どういう事?


 「そろそろ溜まった頃合いかしら?」

 「あら、ユイちゃん起きた?」


 大きな袋を持ってきたカミンさんとコジュさん。疑問に思っている私をそのままに、慣れたようにマパヤの毛を魔導具の投入口に入れて、床に落ちた糸を回収していく二人。


 「助かるわぁー。今年は紡績作業が楽になるなんて!」

 「あ、ユイちゃん達の分のカシュミールはしっかり寄せてあるわよー!忘れずに持っていってねー」


 上機嫌に糸を回収して「また来るわねー」とパタパタ玄関に消えて行った二人。


 「にゃんと……しゅでにいとができていたんでしゅね……」

 「あー……、ほら。ユイちゃん温泉の方に関わっていたでしょう?ルインずっと気になっていたらしくって、どうせユイちゃんマパヤの毛を貰って糸を作るつもりだったの聞いていたから……ね?」

 「本当にユイちゃんより先に触るなんて……あの魔導具馬鹿は……」


 私が驚いていたら、カエラさんがルインさんのフォローを一応してくれたけど、エレンさんばっさり言い切っちゃった。


 というか、別に怒らないけど……エレンさん達は気を使ってくれたのね。


 「おお!これは!」


 呆れた空気を出す私達を気にせず、また何か発見をしたルインさん。一人で興奮しているわねぇ。

 

 うん……ルインさん心行くまで楽しんで……

 

 エレンさんとカエラさんに目で合図をしてそっと扉を閉めリビングに戻る私達。


 夢中になれるものがあるっていい事なのよね……?

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