第21話 エターナル魔石を探しにいこう

 「ふひゅー……つかれたでしゅ」

 

 テントのリビングに帰って来て、ソファーの上にパタリと倒れ込む私。そんな私をヒョイっと抱き上げて、膝の上に乗せてくれるバージさん。

 

 「ユイをあの2人がなかなか帰さなかったからな」

 「見てる分には面白かったぞ」

 「まあ、それだけ感謝しているって事ですよ」


 私達の後にリビングに入ってきたダンさん、グラレスさんも苦笑いしているけどね。


 「こっちはさっぱりわからないわ」

 「そうね、もう街を出るなんてびっくりよ」

 「説明を求める」

 「そうですわ」


 その後に入って来た待機組は、何が何やらわからない内に街を出る事になり不満顔。街を出てから説明するって話だったからね。うん、テントの中なら大丈夫かな?


 「ごめんなしゃいでしゅ。おちちゅいてかんがえたかったんでしゅ」

 

 私がバージさんの膝の上から謝ると、今度は慌て出す4人。そう私がお願いしたの、街を出たいって。理由はね……


 「“権限”?」

 

 グラレスさんが一連の事を話してくれたんだけど、ルインさんが首を傾げて聞きかえす気持ちわかるわ。私もよくわからないんだもの。


 「ああ、実はブラスと共にもう一度リソースポータルスポットに入ってみたんだが、すると今度はユイのステータス画面の文字が変化したんだ」


 そう、バージさんが言う様に、あの後自分も確認したいというブラスさんの希望でもう一度入ってみたんだけどね……


 『閲覧するには権限がありません』


 さっきは開けたのにもう一度確認しようとしたら、ステータス画面にこう記載されていたの。他の魔導具ショップサイトの画面は開くのに、リソースポータルスポットの画面は何回入ってもその表示しか出てこないのよ。


 焦って色々試したわ。だってその画面が開けないとエターナル魔石を手に入れても回復出来ないじゃない。さっきまでなんとかなりそうな雰囲気だったのに、また振り出しに戻しちゃったのよ。


 3歳児の精神に引っ張られちゃったのかしらね。思わず泣き出しちゃったわ。どうして?なんで?しか思えなかったの。


 ブラスさんもミセスブラウンもそんな私に優しかったのよ。

 「解決策がわかったのです。一歩前進ですわ!」

 「君が責任を感じなくても良いんだ。済まない」

 ……ブラスさんに謝らせちゃった。折角喜んでいたのに。


 その後はそれでも感謝をしたい、というブラスさんやミセスブラウンの誘いをなんとか断り、商業ギルドを後にしたの。


 必ずエターナル魔石を持って、この問題を乗り越えて戻ってくるからって約束して。


 「待っていますわ」

 「ああ、それまでは今日のことは我々の胸のうちに秘めておこう」


 そう言ってくれた2人の別れ際の笑顔が晴れやかだったのが、印象的だったわ。こんな私の言葉を信じてくれたのよ。……嬉しかったわ。だからこそ、街で必要な物だけ補給してすぐに街をでたの。ルインさん達には悪かったけどね。


 「まあ、そんな事があったんでしたの……」

 

 シャルさんが俯いている私の頭を、優しく撫でてくれたわ。エレンさんもカエラさんも

 「大丈夫よ。一緒に考えましょう」

 「そうよ!みんなで一緒に乗り越えましょ」

 こう言って私を慰めてくれたの。嬉しくてまた涙が出て来た私を、優しく抱きしめてくれるバージさん。本当にみんながいてくれてよかった。


 「……魔導エクレシア辞典が示したのは、[マパヤ]のページか……」

 

 そんな中1人ずっと考えていたルインさんが何か思いついたみたい。魔導TVをつけて、私にリモコンを持って近づいて来たルインさん。


 「ユイちゃん、リモコンを持って周辺地図を出してくれないか?」

 「わかったでしゅ」


 ルインさんの言う通りに私がリモコンを持って周辺地図を出すと、朝はポータルスポットしか出ていなかったクウィラの街が、きちんとリソースポータルスポットって表示されていたの。


 「良し!やっぱりそうか!ユイちゃん、今度はそこからパルフール山脈の方まで引き伸ばせるか?」

 「やってみましゅ」


 ズームアウトって事よね。多分上のボタン押していくといけるんじゃないかしら?そう思ってやっていくと……


 「思った通りだ!ユイちゃん!パルフール山脈に魔鉱石ポータルスポットがある!しかも、途中途中にポータルスポットがある事までわかるぞ!」

 「ほああ!しゅごい!るいんしゃんしゅごい!」


 私とルインさんがハイタッチしていると、今度はグラレスさんが思いついたの。


 「おそらく、初回は閲覧可能でも2回目からが権限が必要なんでしょうね。そして権限で確定しているのは、魔導エクレシア辞典です。ブラスが入れた事がいい例でしょう。すると考えられるのは……」

 「まずエターナル魔石が必要なのは、魔導エクレシア辞典って事か!」


 グラレスさんがバージさんの答えに、にっこり笑って頷いたの。そっか!魔導エクレシア辞典もバージョンアップする必要があるのね!


 「ユイさん。見つける手段と助ける手段の目処がつきましたよ。大丈夫、みんなで考えるとなんとかなります」


 頼もしいグラレスさんの言葉に「はいでしゅ!」と言いながら抱きつく私。嬉しくなってみんなにもハグして回っちゃったわ。満面の笑顔になった私にみんなもホッとしたのね。和やかな雰囲気に戻ったわ。


 私も安心したせいか、眠気が襲ってきたの。まだ予定を決めなきゃいけないだろうし、「うにー」と言いながら目を擦っていたんだけど、バージさんが「ユイは少し寝ろ」って寝室に連れて行ってくれたのよ。


 ベッドに横になるとストンと眠りに入った私。

 あ……ウィルを出してない……な……

 そう思いながら私が寝た後、リビングに戻ったバージさん。みんなとこんな話をしていたみたい。


 「かなり気を張っていたんだな。すぐ寝たぞ」

 「そうでしたか、バージありがとう。……では、打ち合わせをしましょうか。まずは問題はこれです」


 グラレスさんが指差す先は、私がズームアウトアウトした周辺地図。それもパルフール山脈の魔鉱石ポータルスポットの周り。


 「……不自然だな。なんでポータルスポットが近くにあるんだ?」

 「そうね、ダン。ポータルスポットは大概一つで発見されるわ。なのに、ここには二つ一緒にあるのよ」

 「エレンさんの言う通りです。そしてこの周辺地図を見たときから、私の【先見】が急ぐ様に示しているんです」

 「ねえ、貴方。それは良い方?悪い方?」

 「シャル……残念ながら悪い方で急ぐ様に示しているんです。でも我々が早く着く事によって、それが薄まるんですよ。ですから、皆さん、明日の早朝に出発出来る様にしましょう」

 

 この話は起きて早々に私も聞いたわ。なんと次の日の朝までぐっすり寝ていたのよ、私。そしてすぐに行動に移したんだけどね……


 「うぃるー、ごめんなしゃい!ゆりゅしてくだしゃい!」

 「ヒュ!ヒュイヒュイ!」


 移動中の魔導ハイヤーの中で、1日魔導テイムポシェットに入っていたウィルのご機嫌は斜め。魔導テイムポシェットの中に入っているとお腹は空かないみたいだけど、今朝出したら凄い勢いで食べてたのよね……ごめんって!まだ私が行くと逃げるのよ、ウィル。他の人には抱かせるのにね。


 仕方ないから、機嫌が直るまで魔導具ショップサイトを開いてみた私。

 

 【生活魔導具サイト】

 【移動魔導具サイト】

 【産業魔導具サイト】←NEW!


 すると、メイン画面に新しい項目が増えていたの!開いてみるとね……


 [農林漁業用魔導具]

 [鉱業、製造業用魔導具]

 [建設用魔導具]

 [運輸・通信魔導具]

  ・ 

  ・


 「こりぇは……!」


 声を出した私の側に集まり出す車内メンバー。説明すると

 「これはいずれ役立ちますよ!」

 「ええ、魔導具があれば助かる作業が多いですわ!」

 反応するグラレスさんとシャルさんに対して、

 「そうか?」

 と関心の薄いバージさん。あ、昨日の代わりに、今日移動中に魔導エクレシア辞典を読んでいるのよ。

 

 これが今後どうなっていくのかわからないけどね。

 でも今、私が一番気になるのは……


 「うぃるー、おやちゅでしゅよ」

 「ヒュイッ!」

 

 返事はしてくれるけど、近づいてくれないウィルのご機嫌を直す事。

 この後、ご機嫌取りを1日続けてやっと許してくれたのよ。

 もう絶対忘れないようにしなきゃ!

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