第2話 魔導具ショップサイトって?

「おはようごじゃいましゅ!」


 あ、皆さんおはようございます。やっぱり一人でも挨拶って大事よね。って事で起きて早々に声に出してみたの。


 それにしてもこのテントの中って面白いのよ。窓があるし、外の景色が見えるの。光も入ってくるのよ?一体どうなっているのかしら?


 ま、でも考えたってわからないものはわからないし、何よりも「くうぅぅぅぅぅ」って小さなお腹が騒いでいるの。これをまずは満たさなきゃね。


 「ちゃんと、りびんぎゅ(リビング)でたべるんでしゅ」


 あ、これも聞き流してね。話せば話すほど赤ちゃん言葉治らないかなって思って一人だけど話す事にしたの。……寂しい訳じゃないのよ。


 寝室のドアを開けて、リビングのドアを開けて、まずはおトイレへ。もう開けるの大変だから、寝室とリビングへの扉は開けたままにする事にしたの。3歳児の身体って不便なのね。あ、トイレは大丈夫よ。女子トイレの入り口に近い一番右側のトイレに足台がちゃんとあったの。でも、今回は間に合ったから良かったけど、頻繁にトイレに来た方がいいかしらね……。


 「ふう……しゅっきりでしゅ!」


 これはつい出ちゃった。小さい子の体ってあんまり我慢出来ないのね。今私だから大丈夫だったんだもん。ってトイレネタはもういいか。


 「あとはー、ごはんをたべましょー」


 一応ね、昨日作るのが面倒でお弁当買ってきてたの。幕内弁当とペットボトルのお茶ね。あ、でも小さい子の身体だからカフェイン気をつけた方がいいかしら?念のためお水かな。アイテムボックスからお弁当とお水を出して食べたんだけど、買ってきたままの状態であったかかったの!アイテムボックス、時間停止決定ね!伊達にラノベ読んでないのよ。


 「いただきましゅ!」


 最初は箸が上手く握れなかったけど、何とか食べられたの。うーん!美味しい!それにしても3歳児でも結構食べれるのね。ペロッといっちゃった。


「ごちそうしゃまでしゅ。おにゃかいっぱいでしゅね。でもかんがえりゅこと(考える事)ありましゅし」


 よいしょっとソファーの上に移動して腕を組んでみる……つもりだったけど、うまく組めないのね。仕方ないから腕をぶらぶらさせながらスキルの事をまずは思い出していたの。


 「まずかくにんしゅべきは、まどーぐしょっぴゅしゃいと(魔導具ショップサイト)でしゅね。しゅてーたしゅででりゅかにゃ(ステータスで出るかな)?」


 早くちゃんと言えるようにならないかなぁ、と思っていたらステータス画面が出てきたから「魔導具ショップサイト」をタップしてみると……


【生活魔導具サイト】

【移動魔導具サイト】


 の二つが出てきたの。


「こりぇはしぇいかちゅからでしゅね(これは生活からですね)」


 そう、まず確認したかったのは「生活魔導具サイト」。何があるんだろう、ってちょっとワクワクしてきちゃった。買い物好きなのよね、私。


【生活魔導具サイト】

〈家電魔導具〉

〈家具魔導具〉

〈雑貨魔導具〉

〈日用品魔導具〉

〈護身魔導具〉←本日のおススメ!


 結構種類あるのね!面白い!でもこのサイト面白すぎない?本日のおススメ教えてくれるの?折角だから、タップしてみよ。


〈護身魔導具〉


 *本日のおススメ*

「魔導ペンダント」 MP10,000

「魔導ブレスレット」MP10,000


 魔導……

 魔導……

 ・

 ・


 いっぱいあるみたいだけど、これは説明見てみないとわからないわね。


 「魔導ペンダント」 MP10,000

 ***こちらは本日限定の品でございます。小さくなったあなたに贈る貴方様専用の魔導具!即座に危険を察知し、魔物、盗賊などから貴方を守る半径2mの透明防護ドームを瞬時に作成。攻撃されたらどんな相手でも瞬時に気絶させます。おススメはオートモード。成長型AI搭載で貴方をいつも守ります。但し最初は誤作動もある事をご了承下さいませ。

 そして、もう一つのおススメの品「魔導ブレスレット」と併用してお使いになると更に便利!「魔導ブレスレット」MP10,000も貴方様専用の魔導具。こちらは単体では、生物(魔物、動物、人間問わず)の感情を認識できる魔導具です。。更に魔導ペンダントと同期させると、ペンダントの性能アップ、オート時でも貴方のタイミングで防護ドーム作成、反撃機能作動、AIのみ感情読み取り機能切り替えが出来ます。

 明日になると魔力単価が一つMP100,000になってしまいます!この初回アクセス限定のチャンスを是非活用して下さい!***


 ……どこのネットショッピングかしらねぇ。


 でもこれ実際に一人で行動する為に考えれば考えるほど必須よね。これは買いたいけど、魔力なんて使った事ないからどうすれば良いのかしら?とりあえず、ペンダントをタップしてみましょう。


 すると身体から何かが抜かれた感じがして、首元に小さな黒い石がついた銀のチェーンペンダントが現れたの。この魔導具は触れたら性能がわかる仕組みになっているのね。面白いわ。


 どうやら防水、耐熱、衝撃耐性機能が付いていて、私専用って事で、金属アレルギー対策や肌の摩擦が一切ない優れもの。私の成長と共に常に適切な大きさを維持してくれるの。成長型簡易AI搭載っていっても、どっかの小説みたいに意思は持ってる訳じゃなさそう。


 ブレスレットも同じ様に現れたけど、シンプルなデザインで、なんか腕時計はめてるみたいな丸い黒い石が付いているの。機能もAIが付いていないだけでほぼ同じ。どうやら一生付き合っていく感じのアクセサリーね。


「かわいいでしゅ。はだにふたんもにゃいでしゅし(肌に負担も無いですし)、いいかんじでしゅ」


 シンプルなアクセサリーって好きなのよね。なんか嬉しいわ。……時間はたっぷりあるし、ちょっとサイトショッピング巡りしてみようかしら?ふふっ、これは熱中しそうね。


「……ふあああ、おかしーでしゅ。いっぱいねたのにもうねむいでしゅよ……」


 結構集中していたものね。3歳児の体には堪えたのかしら。感覚からするともっと幼い気がするけど、まだこの世界に来たばかりだもの。仕方ないかも。


 まずはちゃんとトイレに行って、ふかふかのソファーで一休みしましょ。


 「おにゃすみなしゃいでしゅ」


 んー、気持ちいい……ふかふかのサラサラね!って思っていたらもう夢の中。そうしてしばらく寝ていると……


 ドーーン!ドーーン!ドーーン!


 「……うるしゃいでしゅ、なんなんでしゅか?」


 流石に目を擦りながら起き上がる私。どうやら入り口方向から聞こえてくるみたい。眠い目を擦りながら入り口まで歩いて行き、チラッと入り口のテントをあけると……


「ブオオオオオオオオオ!!」

「みぎゃーーーーー!」


 すかさずテントの中に入って寝室へ逃げ込んだわ。3歳にしてはなかなか素早かったと思うの。布団を被りブルブル震えながらさっき見たものを思い出してみたんだけど。


 あれは猪のでっかい版だったわよ!何あれ何あれ!こっちに向かって突進してた!いやー!怖い!あれがこの世界にいるという魔物ってやつ⁉︎怖すぎるわ!

 

 …………………でもなんでドーーン?

 そういえば猪の魔物何にぶつかっていたの?

 うー!怖いよぅ!でも確認に行ってみようか……


 恐る恐る布団から出て、しっかり毛布を抱きしめて入り口に戻って行くとやっぱりいた!


 目があって「ブオオオオオオ」と突進してくる猪の魔物。

 

 「こわいでしゅよ……!でもしっかりみるでしゅ」


 すると、テントの3m前で見えない壁にぶつかって弾かれる猪。結界……⁉︎かな。そう思ってテントの裾をぎゅっと握っているとヴァン……といきなり現れたステータス画面。


 《デラックス魔導テントと魔導ペンダントを同期させますか?  YES/NO》


ステータスの下に文字が現れて選択を促してきた!

同期できるの?って思っているうちにも猪は再度ぶつかってきている。


「……どーきできたらきじぇつしゅるかも(同期出来たら気絶するかも)……いえしゅでしゅ!」


思わずタップせずに叫んじゃったけど、画面を見ると

《承認を確認、同期します。これにより更にペンダントの威力が上がります。ショックを与える強度の選択が可能になりました。敵意が強い対象[レッドボア]に対して流す反撃の強さを選択して下さい。

      ↓(現在位置)

 弱いーーーーーーーーーーーーーーーーー強い

(気絶、1時間後に復活) (対象死亡レベル) 》


「まもにょはまたおしょってきましゅ。にゃら!(魔物はまた襲って来ます!なら!)」


思い切って選択をフルにしてタップすると……バリバリバリバリ!!!という大音量が辺り一帯に響き渡り、一瞬にして稲妻がレッドボアの身体全体をまとわりついていたの!


「ブギャアアアア!!!」と叫び声をあげて倒れるレッドボア。身体からは煙と肉が焼けた匂いがここまで届いてきたわ。


「たおしたんでしゅか……?」


 流石に近づけなくてペタリとその場に座り込んでいたらステータス画面にまた指示が出てたの。


《レッドボア死亡を確認。アイテムボックスに収納しますか?YES/NO》


これには即座にYESをタップ。するとシュン……と消えるレッドボア。アイテムボックスを確認すると一番下に[レッドボア×1]って出てたからこれでもう大丈夫よね。


 「さわらにゃくてもしゅーのーできましゅか……!(触らなくても収納できるんですか……!)」


 ホッとしたわ……近づきたくなかったの。


 ……でもこの世界はやっぱり危険なのね。私がこの世界で快適に過ごすためにはこのスキルの使い方が鍵になりそうね。って思っていたら、ん?なんか足元があったかい……?


 「みにゃあああああ!やっちゃったでしゅ!」


 足の間に挟んでいた毛布に水の地図を作ってしまったのよ。

 3歳児には刺激が強すぎたのよね。


 「しぇんたくき(洗濯機)はありましゅか⁉︎」


 急いで〈家電魔導具〉から[魔導洗濯乾燥機 MP320,000]を購入したのだけれど、あんまり慌ててたからステータス画面にこれ出ているの見逃してたのよね。


 《*◯anasonic斜めドラム洗濯乾燥機12kgタイプをお買い上げありがとうございます!この機種は自動で洗剤を育成、投入します。スチームでお手軽衣類ケア「シワとり・消臭」コースと毎回自動層洗浄を行い、清潔さをキープ!泡洗浄で洗い残しなし!常にふわふわな洗い上がりをお約束します!》


 そんなことを気にしていられない私は、毛布と濡れた服を脱ぎ洗濯乾燥機に押し込みスタートを……押せなかったのよね。


「さんしゃいじのからだはふべんでしゅ!(3歳児の体は不便です!)」


テント内を裸で走り、キッチンにもあった足踏み台を「よいしょ、よいしょ」と運んで、やっと洗濯機のところに持ってきたの。スタートを押してホッとすると、やっと気づいたのよ。


「だいをあいてむぼっくしゅにいれればよかったでしゅ……(台をアイテムボックスに入れたら良かったです……)」


 焦っている時って、まあ仕方ないよね。無駄な努力に脱力しながらアイテムボックスから下着と服を出して着替えたわ。そしてもう一つ気づいちゃった。


「にゃんで……こんにゃにたかいまどーぐかっちゃったでしゅか……⁉︎(何で……こんな高い魔導具買っちゃったんですか……⁉︎)」


 ショックでその場にペタリとしゃがみ込んじゃったわよ。だって節約家がこんな高いもの買っちゃったのよ!もっと安くていいものもあったのに……大家族じゃあるまいし、このサイズはいらないってば要らないのよねぇ。


「じぇんとたにゃんでしゅ……(前途多難です……)」


ふうとため息をつき哀愁の背中を醸し出す3歳の私。

異世界もなかなか大変な事を身に染みた二日目でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る