第15話 ポータルスポットに入ってみよう
ドルルル……ドルン!
「いやっほう!」
「みぎゃあああああ!」
空中を舞う魔導バイクに乗ったバージさんと私。いつになくバージさんのテンションが高いのよね。まさか乗り物が好きだったとは思わなかったけど。でも、運転が結構荒いのよ!しかも今の私の格好はね……
「バージ、はしゃいでるわ」
「ユイちゃんおぶっている姿はウケるがな」
そう、後続を走るルインさん、カエラさん組が言う様に、バージさんにおんぶ紐で固定された姿なの。結構恥ずかしいのよ、これ。あ、どうしてこう言う状況になったかと言うとね、まあ、私のせいなんだけどね。
************
「きょりがあるでしゅか?」
「俺らが全速で移動して着く距離だな。ユイは抱くからいいとしても、グラレスさんとシャルさんが持たないだろ」
私の質問に答えるバージさんが言うには、歩いて行くにはちょっと時間がかかるという場所らしいの。
「頑張りますよ!」
「走るのは得意ですわ!」
気合いの入っているグラレスさんにシャルさんには悪いけど、確かに無理そうね……特にグラレスさん。ハイヤーは今日の時間は終了しちゃったし、そもそも山道だから狭いんですって。……じゃ、アレの出番かしらね。
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「うお!かっけえ!」
「へえ!一見馬に見えるが触ると本体の姿がわかるのか」
「なんと素晴らしい!こんな洗練された魔導具があるとは!」
「おお!なんと面白い!」
ダンさんは出してすぐ近づいて確認するし、バージさんは触ったり離れてみたりしているし、ルインさんに至っては涙流して確認しているし。グラレスさんまであちこち触ったり色々な角度で見てたりするのよ。
「男って魔導具好きよね」
「特にウチのメンバーはね」
「あらまあ。旦那様がはしゃいでるわ」
そんな姿を呆れて見ているエレンさんとカエラさん。シャルさんは相変わらずマイペースね。で、私は出した途端私の目の前に現れたおんぶ紐を見て、ため息ついているの。
「たしかにひちゅようでしゅけど……(確かに必要ですけど……)」
おんぶ紐にお世話になるとは思ってなかったのよね。まあ、バージさんに頼んだら、喜んでおんぶ紐を私につけて背負ってくれたわ。勿論魔導ヘルメットも装備した上で。
その姿に「まあ、面白いわ!」と笑顔のシャルさんと、爆笑する赤獅子メンバー達。うん、確かにバージさんには似合わないわ。私も当事者じゃなければ笑っていたわね。……はあ。
早速練習し始めた冒険者達。みんなすぐに適応していたわ。流石よね。で、ダンデムするから組分けはこんな感じ。バージ&ユイ組、ダン&グラレス組、ルイン&カエラ組、エレン&シャル組。先にあげた人が運転手ね。カエラさんも「運転したかったわぁ」って言ってたけどね。次回お願いします。
で、現在走り出して、バージさんが楽しんでいる所なの。まあ、私軽いからほぼ一人乗りみたいなものだしね。後続も順調に進んでいるわ。シャルさんの楽しそうな声聞こえてくるし。
走り出して30分くらい経ったかしら。バージさんの運転にも慣れて来た頃、林の中にぽっかり何もない空間があったの。結構広い丸い空間って思っていたら、ここで止まったから目的地に到着したのね。バージさんがバイクから降りて、私を降ろしてくれたわ。ふう、地面が嬉しいわね。
「ついたでしゅか?」
「ああ、あそこだ」
ヘルメットを脱いで真ん中あたりを指差すバージさん。何もないわよ?
「ユイさん、ポータルスポットは、こういった何もない空間の真ん中あたりに入り口があるんです」
「ちょっと待ってろ」
バイクから降りて来たグラレスさんと、ヘルメットを被ったまま走り出すダンさん。ダンさんが真ん中辺りで止まり腕を前に差し出すと、まるで波紋がひろがって行く様に揺れる景色。それにダンさんの手首から先が無くなったいるの。
「ポータルスポットは別名隠れ里とも言われているわ。魔物も集まり易いけど、あの先には空間が広がっているのよ」
「さ、急ぎましょう。魔物にも居場所が知られたわ」
「ユイ、魔導バイクを収納して、中に入ったらテントを出してくれ。結界が効くのか知りたい」
私の横に来て、情報を補足してくれるエレンさんに、私達に行動を促すカエラさん。バージさんは冷静に指示を出してくれたの。急いでバイクを収納して、私はバージさんに抱えられながら全員でポータルスポットの中へ入って行ったわ。
通り抜けた瞬間は、何か膜を潜り抜けた感触だったわね。バージさんに言われた通りデラックス魔導テントをアイテムボックスから出して、テントの側に集まる私達。すると……
「みぎゃああ!」
「オークか!」
「いっぱい居ますわ!」
私達のすぐ後に姿を現したオーク達。私の叫び声の後にグラレスさんとシャルさんも声をあげたわ。赤獅子メンバーにバージさんは、こうなる事が予測出来たのか冷静に陣形を組んでいたの。でもそこはデラックス魔導テントが仕事をしていたわ。3m先から入れない故に結界を叩くオーク達。その数およそ20以上。
こんなにすぐ集まってくるのね……と、いつの間にか震え出していた私をふわっと抱きしめてくれたシャルさん。私の前にはグラレスさんが立ち塞がってくれたの。バージさんや赤獅子は臨戦態勢に入っていたわ。
「ユイちゃん、みんながいるわ。さあ、やってみましょう?」
穏やかな声で私に笑いかけてくれるシャルさん。グラレスさんや、赤獅子メンバー、バージさんも振り返って頷いてくれたの。……そうね、私一人じゃないわ。
「しゅてーたしゅおーぷん!(ステータスオープン!)」
私がいつも通りステータスを出した途端、眩しい光がステータスボードから出た光が空間全体を包み、結界の外にいたオーク達を霧の様に消し去ったのよ。そしてボードには私に選択の指示が表示されていたの。
『魔導具ショップサイトを持つ渡り人よ。選べ。
1・サイトの増強
2・サイトの追加
3・自身の魔力の増強 』
え?私の魔力も増えるの?と、考えていたらどうやらこの選択画面はみんなにも見えていたみたい。
「ユイちゃんのスキルとポータルスポットが同調しているわね」
「本来ステータスボードは本人以外見えない筈だが……」
魔法を使えるエレンさんが空間の状況を読み取って、ダンさんはステータスボードが見える事に驚いていたわ。
「渡り人にとってはポータルスポットはスキルアップの場だったのか……!」
「凄いわ!新たな発見ね!」
ルインさんは相変わらず涙を流して感激してたわね。カエラさんもそんなルインさんの背中をバシバシ叩いて、感動していたわ。
「大丈夫よ。何を選んでも一緒にいるわ」
「うむ。まあ、ユイさんには変わりないですからな」
にっこり私を包み込むシャルさんに、私の頭を撫でながら安心させるグラレスさん。
「ユイ、大丈夫だ」
シャルさんから私を受け取って、抱き上げてくれるバージさん。いつものニヤリとした顔が安心するわ。ふふっ、私もう震えてないわよ、バージさん。
選択が、サイトの増強か追加か私の魔力の増強なら……選ぶのはこれね。
「しゃんでしゅ!(3です!)」
『承認』
私が選ぶと、ステータスボードにポータルスポットの空間が吸い込まれていき、気付けば外の空間に居た私達。テントも勿論戻っていたわ。思わず手を見ても何も変わらない小さな手の私。でも開いていたステータスボードの数値は変化していたの。
ユイ (3) 女 人間
HP 200
MP 10,000,000
スキル 魔導具ショップサイト
アイテムボックス
称号 異世界からの渡り人
クレーリアの祝福(魔力増幅)
センス ポータルスポット 1/100
「どうなっていた?」
もう私のステータスボードが見えなくなっていたバージさん。心配そうに覗き込んで聞いて来てくれたわ。私は魔力が上がった事とステータスボードの一番下に、訳がわからないセンスの表記と共にポータルスポットの欄が出来ていた事を伝えたの。すると聞いていたルインさんとダンさん。
「これはポータルスポットを探す旅にもなるな!」
「ああ!集めるとどうなるのか楽しみだぜ!凄え体験だったもんな!」
興奮気味な二人に呆れながらも、同意するエレンさんに何やら気合いの入ったカエラさん。
「そうね。ユイちゃんの為だものね」
「そうよ!また一つ解き明かさなきゃ行けないものが増えたのよ!これは探していかなくちゃ」
そんな中、いつの間にかテントから焼きたてのバターロールを持って来て私に見せるシャルさん。
「見て!ユイちゃん!こんなに美味しそうに焼けたのよ!嬉しいわ!初めて成功したのよ!」
そんなシャルさんを笑顔で見ているグラレスさん。
私を抱えるバージさんも含めてなんてあったかい人達なんだろう。こんなに素敵な人達と居られる事に感謝しなきゃね。それに焼きたてパンは焼きたてが命よ!
「うまくいったでしゅ!あ、ゆうはんできてましゅよ!にゃかにはいってたべましょー!(上手くいったです!あ、夕飯出来てますよ!中に入って食べましょう!)」
私の掛け声に同意するバージさんや、空腹を主張するダンさんとルインさん。期待をしながらニコニコ中に入って行くエレンさんとカエラさん。中で準備を始めたシャルさんに、シャルさんを手伝うグラレスさん。
今日はここで宿泊ね。予想外の事が起こるのも旅の醍醐味って言えるのは仲間があってこそ。私が3を選んだ理由は、魔導具でみんなをサポートしていきたいからなのよ。仲間は助けあっていかなきゃ。
「ねえ、ユイちゃん。なんか焦げ臭いわね?」
「ああ!シャルさんは触っちゃダメよ!」
「火を止めて!火を!」
私が少し考えていた隙に、スープを少し焦がしたシャルさんを慌ててカバーをするエレンさんとカエラさん。
うん、シャルさんは盛り付け担当決定ね。
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