第27話  ドユンとヂ―ミン

 

「実際にどう生きたかということは大した問題ではない。いずれ死ぬのだから、だから自分の好きなように生きて見せる。ワッハッハッハ!」

 ドユンの信念は子供の頃から一貫している。


 この男、人の事は全くお構い無し悪事の限り尽くすドユン。


 こんな男に育てられたヂ―ミンの人生には、暗雲が立ち込めている。ヂ―ミンはどのような大人になってしまうのか?


 

 🔷🔶🔷

 敗戦国となった日本には様々な暴動が起こった。それは今まで虐げられてきた第三国人によってもたらされた。



 日本の敗戦と共に、在日朝鮮人たちは各地で集会を開いて、朝鮮人会、朝鮮人組合などの朝鮮人団体を結成し、日本人との賃金格差撤廃などの運動を開始し、全国組織の在日本朝鮮人連盟を結成した。また、敗戦後、朝鮮人らは中国人・台湾人などとともに「第三国人」と呼ばれた。だが、こんな差別的な読み方を意味嫌い、自らを「連合国人」「解放民族」と名乗り、集団強盗、略奪、強姦、殴打暴行、破壊、占拠監禁などをおこない、日本人との軋轢を益々増幅させる元となった。




 1946年、敗戦による混乱の中、東京では第三国人(中国人、台湾人、朝鮮人)による凶悪犯罪が横行していた。それに対して東京の治安を守るべき警視庁はGHQの政策により弱体化し、「戦勝国民」である第三国人に対して有効な取り締まりの手立てがなかった。


 その中にあって、第三国人のボスがドユンだった。この男、オンマ食堂カルビとプルコギの店を妻に任せて、今では、あらゆる事業に手を出している。

 

 それは戦前からではあるが、朝鮮半島から麻薬の密売も行っていた。美味しい話は絶対見逃さない鋭い嗅覚で、事業を拡大している、かなりのやり手でもある。


「散々我々をバカにして、こき使いやがって!敗戦国日本に何が出来る。虫けら共が!オイ日本人に思い知らせてやろう!縄張りを取り返さなくては。皆一致団結して日本人をコテンパンにヤッツケテやろう!」

 そして…団結して悪事の限りを尽くす第三国人達。

 

 集団強盗、略奪、強姦、殴打暴行、破壊、占拠監禁などをおこない、散々警察に手を焼かせた。


 戦後GHQの存在で警察は弱体化していた。そこでヤクザと手を結んで第三国人狩りが行われた。


「なんだと――!三国人分材が、ガタガタ抜かしおって!皆の者コテンパンにヤッツケロ――!」



 1946年6月、新橋駅西口の闇市の利権に絡みM組と台湾人露天商の間で抗争が発生、M組側は機関銃を用いて台湾人を排除した(新橋事件)。また、同年7月には台湾人による渋谷署襲撃事件に対して警察は地元ヤクザのO一家らに救援を要請。共同でこれを撃退している(渋谷事件)。


 混乱期、警察当局はこうしてヤクザを利用して治安を維持した。ここに見られるように日本政治におけるヤクザは単純に悪と割り切れない難しさがある。なにはともあれこの一連の事件は、政治家に武装組織としてのヤクザの有用性に着目させる


 警察とヤクザは手を結んで台湾人を排除した。

バンバンバン バンバンバン バンバンバン



 🔶🔷🔶


 その頃ヂ―ミン一家は、実母リンランの婚約者加藤宅に台湾から命辛々辿り着いたが、余りにも不審な台湾人両親の身なりと、しつこさと、不気味さに、不審人物と見なされ、ピストルで番頭頭に育ての親は、撃ち殺されてしまった。それもヂ―ミンの目の前で無惨にも殺害されてしまった。


 当然の如く、その恨みは相当の物だが、それより何より恐怖で足がすくみ慌てて逃げた。


 ヂ―ミンは、育ての親の死を悲しむ暇もなく、恐怖で居ても立っても居られず、その場から只々怖くて逃げた。


 そして…荒れ果てた焼け野原を彷徨い歩いていたヂ―ミンは、なんとも人相の悪い男に声を掛けられた。それがドユンだった。


 こうして仮初めにも、ドユンという男との生活が始まった。だが、このドユンという男、どういう訳か、金だけは腐る程持っている。


 そして…ヂ―ミンは日本人と台湾人のハ―フだというのに、朝鮮部落での生活が待っていた。周りはハングル語が飛び交う中で育ったヂ―ミンは、すっかり朝鮮人に同化してしまった。



 だが、この父親代わりのドユンには恐ろしい一面が有った。


 ひとつ切れ出すと止まらない。ヂ―ミンも下手なことは言えない。刃物は振り回すわ物は飛んでくるわで生きた心地がしなかった。


 一方で戦前から繁華街利権を抑えていた日本の地元ヤクザも第三国人の急速な進出によりその縄張りを侵食され戦後の経済混乱と相まって苦境に追い込まれていた。


 そこに着目した警察上層部は、地元ヤクザに三国人鎮圧を託した。警察当局からヤクザに三国人に対する暴力のお墨付きを与えた。


 混乱期、警察当局はこうしてヤクザを利用して治安を維持した。ここに見られるように日本政治におけるヤクザは単純に悪と割り切れない難しさがある。なにはともあれこの一連の事件は、政治家に武装組織としてのヤクザの有用性に着目させる事となった。


 ヂ―ミンはこの朝鮮部落でジアという女の子在日2世と知り合いやがて恋に落ち結婚する。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る