第29話 嫉妬
在日朝鮮人は、1945年の解放後、日本に留まり定住することになったが、極限状況だった戦後空間で、はたしてどのように生存できたのだろうか、そこには『在日朝鮮人と闇市』は切っても切れない重要な関係があった。
「闇市は解放後に形成された在日朝鮮人経済史の出発点といっても過言ではない」焼肉とパチンコは、在日朝鮮人の産業を代表する二大業種だが、これも戦後形成された闇市での在日朝鮮人の活動と密接な関連がある。敗戦後の日本には公権力が無力になった状況に乗じ、全国的に闇市が生産と消費、流通を支える公然の場所になった。
だが、闇市は5年ほどしか存在しなかった。
1945年頃、東京渋谷に形成された闇市だったが、翌年の1946年にここで暴力団が抗争を起こすなど、闇市の主導権をめぐる対立も頻繁にあった
日本人が形成した闇市に生計の手段を求めざるを得なかった朝鮮人は、闇市でホルモン焼きや密造酒を売った彼らが、焼肉専門店を開業したり、資本を集めパチンコ店に進出する場合もあった。
東京の上野、大阪の梅田と鶴橋、神戸の三宮などでは、在日朝鮮人が闇市に独自の商圏を形成したりした。
ただし、その過程では日本の闇市の組織と官僚組織との困難な闘争や交渉が繰り広げられていた。
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女子高の周りに男子高が幾つかあって、たくさんの男の子が 体育祭に来ていたので、 体育祭の時にフォークダンスというとオクラホマ・ミクサー、マイムマイム、 ジェンカみんなあふれんばかりの笑顔で踊っていた。
しかし、女子生徒1000人に対し、男の子は5割も入らないので 当然ながら、男の子役の女の子がたくさんいた。 その男役は大体3年生がするので、最初は2年生とフォークダンスを踊っているが、2年生にも男子とのフォークダンスの番が回って来るが、次にやっと男子とフォークダンスを踊れると期待していると、そこで終了ということも度々起こっていた。
青春とは、そんなほろ苦い思い出が往々にして起こっていた。年に1回しかない体育祭なのに貧乏クジを引かされた女子達は、がっかりどころか憤りを隠せない。
「折角1年に1度の体育祭なのに…」
それでも女子高の生徒達は、滅多と男子校生との触れ合いなど無いので、この時とばかりに浮き足立って束の間の夢のような時間を楽しんでいた。
※通名(つうめい、とおりな)とは、本名でないもの。 通り名、通称、通称名ともいう。 「通名」は、婚姻等により姓を変更した者が旧姓を使用する場合や、外国籍者が居住国内で使用する場合、トランスジェンダーの人達が使用。
その中に(通名・実)ヂ―ミンと真知子の姿が有った。
日本は例え敗戦国日本で有ろうと、日清日露戦争に勝利して自分達はアジアの頂点に君臨する民族と、有頂天になっていた時代だ。
今の時代では考えられないことだが、あの時代第三国人(中国人、朝鮮人、台湾人)は日本人にとっては差別の対象になっていたので、中国、朝鮮、台湾民族は日本では、通名を使っていた。
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あの体育祭以来4人はすっかり仲良くなっていた。実(ヂ―ミン)と健介と真知子と秀子は今まさに、青春真っ只中にいる。
あの体育祭の日から全てが始まった。あの日早々にフォークダンスの輪から離れたカップル、それが実と真知子カップルだった。
真知子はこの界隈では評判のイケメン実の事は、とうの昔に風の噂で知っていた。
台湾の血を引く実(ヂ―ミン)はオランダ植民地時代の流れから多種民族の血が混ざり合って、華やかな容姿に加え高身長のハッと目を引くイケメンだ。
何故、実達と女子2人組が度々顔を合わせいたかというと、真知子と秀子はわざと実見たさに、あの土手を遠回りして帰っていたのだ。
だから、あの日いつもだったら野郎5~6人で帰っていたのに、どういう訳か、あの日は実1人だけだったので勇気を出してUタ―ンして声を掛けることが出来た真知子だった。
だが、実に恋をしていたのは真知子だけではなかった。秀子も以前から実に憧れていたのだが、改めて実を目の前にして余りのイケメンぶりに益々恋の炎が燃え上がった。
だから、この4人組には、こんな現象が起きている。真知子を実と健介が好きになってしまった。実を真知子と秀子が好きなってしまった。
こんな歪な恋が、思わぬ形になって4人に覆い被さる事となる。
「オイオイ俺が真知子ちゃんと踊りたいのに、何だよ!2人仲良過ぎだろう?怪しいな~?」
「本当よ。真知子あなただけが、実さんを独り占めするなんて許せない!」
「今日は体育祭の日だ。健介と秀子ちゃんもフォークダンスを踊ってくれば良いじゃないか」
「そうよ。私達4人は仲の良い友達じゃないの?何をバカな事言っているの」
4人は思い思いの感情を胸に仲の良いグループ交際を続けていたが、お互いの感情に抜き差しならない感情が沸き起こる。
(俺が「手紙を渡してくれ」と、頼んだのに真知子ちゃんは俺の手紙を呼んでくれたのだろうか?あんな実なんかに頼まなければよかった。俺の気持ちは伝わっていない。気持ちは完全に実に傾いている。どうして?ひょっとして2人は付き合っている?そんなバカな~?俺が真知子ちゃんの事、好きだという事は知っていながら、付き合い出したって事?許せない!)
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今日は4人で期末試験の勉強中。
4人は早速図書館に出掛けて図書室で勉強を始めた。実は…実と真知子はこっそり付き合い出していた。
「ねぇ?実この数式の解き方教えて?」
「あぁ良いよ。どれどれ……あぁこれはねぇペラペラ……ペラペラ……ペラペラ」
その時健介は、今までの溜まりに溜まったストレスが、爆発してとんでもない事を口走った。
(何だよ~。益々仲良くなっているじゃないか、俺の付け入る隙が完全に無くなっている。俺が最初に手紙を渡して欲しいと頼んだのに、真知子は全く俺に無関心。って事は抜け駆けされたって事?親友だと思っていたのに裏切りやがって!)
「オイ!そっちのイケメンさんよ。自分だけ良い思いしちゃって…チッ何だよ?ヤクザのクセして…第三国人さんよ!」
図書館は公共の場だ。そんな場所であの時代は、酷い差別が横行していたにも拘らず、このような暴言を吐くとは信じられない。
この界隈きってのスター実は地に落ちた。そして…真知子と実は呆気なく別れてしまった。それは一方的に真知子主導で有無も言わせぬ形で別れてしまった。
「ヤクザ…ゴメンだわ。それから…私日本人としか付き合いたくないの。そんな事を隠していたなんて信じられない。さようなら」
呆気ない幕切れだった。
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