第3話 社交ダンスパ―ティ―





 六月某日ワ―ルドレインボーホテルに隼人の姿がある。誰でも参加可能となっているが、しっかり身分証明書が必要なVIPだけが参加出来る、社交ダンスパーティ―が華やかに開催されている。


 社交ダンスをやる人にはお金持ちが多いと聞く。勿論全ての人がお金持ちということではないが、他の趣味に比べ圧倒的にお金持ちが多い。


 ピンキリだが、プロの先生の教室に通うには、レッスン代が1回30分あたり、3000円から6000円。高い先生だと7000円。ただ、週1回30分と言うのは割と少ない。1回あたりを1時間にしたり、週2回通ったりとする方が一般的で週1回でも12,000円から28,000円。


 更にパーティー代がある。ホテルなどであれば、ディナー付き1席20,000円から 40,000円。地域によっても異なるが、これを年に1回から2回。


 パーティーといえば、デモンストレーション(発表会)。レッスンを定期的に受けて、デモストレーション(発表会)に出演されている方は、お金に余裕がある人じゃないと厳しいのではないだろうか。


 1曲先生と踊るわけだが、先生に対するお相手料がかかる。1曲当たり40,000円から500,000円まで。中には1曲50万の先生もいる。さらに、場所代 30,000円から100,000円。


 デモンストレーションを行う場合は、自分だけ参加するというわけにはいかないのがこの世界。最低5枚チケットを購入するのが一般的。30,000円のチケット5枚で15万。結構な負担になる。


 また、ドレス代が必要なので購入すると30万超えることも。ざっと計算すると1回のデモンストレーション発表会に参加する費用は370,000円。

 この他に、普段のレッスン代もかかり高額になる。年に2回出るだけで、100万円近くかかる。だから社交ダンスはお金持ちのイメージが強い。



 🔷🔶🔷

 隼人は子供の頃社交ダンスを習っていた。そして…隼人は社交ダンスパーティ―で会社経営の華子と出会っていた。


 華子はネイルサロンを経営する社長だ。最初はスモールビジネスから無理せずスタートしたのだが、今現在は日本各地のショッピングモ―ルにお店を展開している。


 今日も華子と、このセレブ社交ダンスパ―ティ―にやって来た隼人だが、華子とはもう…かれこれ4年の付き合い。


 華子は現在44歳で隼人30歳なのだが、2人は既に婚約している。只多忙な為同棲はしていない。


 隼人は田代総合病院の理事長で多忙を極めている。一方の華子は店の運営の為日本各地を飛び回っている身、当分別居状態が続きそうだ。


 華子は、ネイルサロン経営の仕事人間で、40歳になるまで恋愛らしい恋愛をして来なかった生粋の仕事人間で、寝ても覚めても仕事しか頭になかった。


 だが、唯一の趣味社交ダンスで知り合った隼人を最初に見た時は、身体中雷⚡に打たれたような激しい衝撃が走り、夢にうなされるほどの激しい恋に落ちてしまった。


 今まで恋をおざなりにしていた付けが回ってしまったのか、それはそれは激しい恋に落ちてしまい、誰か隼人に女の影が見え隠れすると、その嫉妬たるや尋常じゃない。


 それはそうだろう?15近く年上のこんなおばさん、いつ若い女に走るか分からない。




 🔷🔶🔷

 ある日の事だ。熊本に大きなショッピングモ―ルがオープンしたので、急遽華子は出店した新店舗の視察に出掛けた。

 仕事の都合で隼人と会うのは月末と決めてあったが、思いの外仕事が進み、こんな同じ九州にいるのに…折角だから隼人に会おうと隼人のマンションに向かった。


 だが、隼人が教えてくれた住所にはマンションなど、存在していなかった。

「おかしいわね?私道間違えたのかしら?」

 

 焦った華子は、携帯に電話して見た。だが、あいにく仕事中だったのか繋がらなかった。それでも、折角九州まで来たので、どうしても隼人に会いたくなった。そして…田代総合病院に向かった。


 噂に聞いていた通り田代総合病院は、かなりの規模の総合病院だった。早速華子は受け付けに向かった。


「あの~田代理事長に会いたいのですが?」

 

「理事長とどのような要件で?何か…紹介状のようなものは?面識の無い第三者とのコンタクトは、取る事が出来ません」


「私は婚約者です」


「少しお待ち下さい」


「田代理事長は、現在日本にはおりません」


「いつから海外に出掛けたのかしら?どちらにお出掛けですか?」


「嗚呼もう半年くらい…?ちょっと…詳しい事は?」


「どうもすみません。失礼します」


(半年って?私は先月隼人と会っているけど……それから…あの病院……何か?人を寄せ付けないような……閑散としているような…でも…ちょうど週の真ん中で…患者が落ち着いているのかも…)


 やはり隼人は医師資格が無いので、只のお飾り理事長に過ぎないのだろうか?イヤイヤ重要な仕事で留守にしているのか?


 それとも華子が「先月会っている」と言っているのであれば、婚約した隼人は全くの別人なのか?

 

 🔶🔷🔶

 隼人は華子と街を歩いていても、レストランに入っても華子の嫉妬深さに悩まされていた。


 これだけクールで魅力的なイケメン隼人だから自ずと目立つので、皆見ないで置こうと思っても見入ってしまう。


「隼人あなたを私だけの者にするには、どうしたらいい?こんな重い女うんざり?…だけど、どうにもならない。どうにも出来ない。こんなおばさんの私が、あなたを惹きつけて置くには、私はどうすれば?どうすればいい?苦しいの。私あなたの言う事なんでもするわ。あなたが、こんな年増の私に飽きて離れてしまうと思うと…だから…だから…結婚しましょう」


「何を言っているんだよ?華子を愛しているに決まっているじゃないか?結婚したいよ俺だって…だけど…華子にもしもの事が有ったらどんな事をしても助けたい。その為には延命治療の出来る先進医療特約に入って欲しい。そうすれば昏睡状態になっても一縷の望みに賭ける事が出来るし助けられる。それからお店も、もし、華子が万が一の時にも、死亡保険金額が高くないとお店存続も危うくなるから…」


 こうして先進医療特約がついた、死亡保険金額の破格に高い生命保険に加入した華子。


 2人は晴れて結婚した。

 だが……。

























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