第7話 隼人の正体
あの夜アヤを連れ出した犯人は、オ―トロック式の部屋に容易く侵入できたという事は、アヤと親しい関係の人物だと言える。
やはり隼人の仕業だったのだろうか?イヤ隼人はあの夜飛行機の最終便で東京に向かっていた。華子の電話交戦に、慌てて東京にある華子邸に向かっていた。だが、その後知人から電話連絡を受けた隼人は知人に会っている。
見えて来ない事件の真相。一体真実はどこに隠されているのか?益々混迷の一途を辿る事となる。
🔶🔷🔶
あのアヤが謎の人物二名に目隠しをされ誘拐された事件の数時間前、アヤはとうとう我慢が出来ずに酷い暴言の数々を、隼人に浴びせかけていた。
「どうして帰るの~?折角久しぶりに会ったというのに…お願い行かないで!お願いよ~ねぇ」
「だけどね…仕事があるから…仕方ないさ。俺だって本当はアヤと一緒にいたい。だけど…ゴメン帰るわ」
カ―――ッとなったアヤは頭に来て、全てをぶちまけた。
「あなたが、事務所だったはずのところも本当はレンタル事務所で、広告代理店で社長をしているという言葉も、真っ赤なウソでしょう?私が何も知らないと思っているの?それから…あなたに女の影がある事ぐらい…前から分かっていたわ。あの女社長華子…それに神宮ホ―ルディングスの絵梨花お嬢様に全てぶちまけてやるから!あなたがどんなに女たらしかって事。隼人は一体何者なのよ?こんな酷い…ゥゥウウ。゚(゚´Д`゚)゚。シクシクウワァ~~ン😭ウワァ~~ン😭それから…あなた…会社経営とか言っているけど……私見たのよ」
「何を見たんだ?」
「書類をね?まだ…はっきり調べてないけど…」
「俺は何もやましい事はしていないさ。それから…華子とか?絵梨香?とかいう女性の事は俺が経営しているネイルサロンの共同経営者とお客様ってだけ。勝手に考え過ぎだって…」
「またそんな、でたらめ通用しないから。それから男女の関係だって事は、はっきりしているわ。もう我慢出来ない!散々貢がせあっちこっちに女がいたなんて許せない!ぶちまけてやる!」
だが、その数時間後、アヤが疲れきって眠りに就いていると、二人の怪しい人物に無理矢理目隠しされ、一路車で見知らぬ場所に到着して、薄暗い部屋に閉じ込められてしまった。
🔷🔶🔷
一方の隼人と結婚した華子は、仕事の腕はピカ一の仕事人間だが、こと男の事にはうぶな、免疫がない少女にも足らない、純粋無垢な女だった。
だから、どう見ても変でしょう?と思う事でも、こと男の事だけは、盲目で完全に何も見えない状態になっている華子。
本来ならば、これだけの二人だったら盛大な結婚式が執り行われるのが筋だが、隼人に押しきられ簡素なものになった。というより結婚式は挙げていない。
なんとそれは簡素という以前に、只籍を入れただけのものだった。
本当は盛大な結婚式を夢見ていた華子だったのだが、隼人に強引に押しきられる形で入籍だけした。
華子にすれば下手に逆らい、結婚が中止になる事だけは避けたかった。
「二人共仕事に追われる身、愛があれば形にこだわらなくてもいいんじゃない?」
「そっそうね?」
更には、生命保険も何だかんだと複数の保険に加入させられた華子。その死亡保険受け取り総額は数億にも及ぶ。
🔶🔷🔶
この隼人を名乗る女を上手い話で次から次へ不幸に陥れる、この隼人を名乗る男は何者なのか?
そして、神宮ホールディングスのお嬢様絵梨花との交際は、どのような状態になっているのか?嘘で塗り固められた隼人ではあるが、絵梨花にも嘘をついていたのだろうか?
それがどういう訳か、絵梨花にだけは真実を話していた。と言っても田代隼人の経歴を使って絵梨花に近づいただけなのだが……。
だから絵梨花にだけは、真実の田代隼人を伝えていた。実は隼人は湯布院の温泉旅館で絵梨花と知り合ったのだが、あの時は夏休み期間中でまだ医学生だった。
この後の夏休み期間中に余りの学力不足に加えカンニングがバレて、両親を交えて教授との話し合いが持たれる事になっていた。
そして教授との話し合いを待たずして、軽井沢の別荘で家族が火事に見舞われ亡くなっていた。
それでは、この男隼人はどのようにして、田代隼人を名乗る事が出来たのか?
実はこの二人、偽物の隼人と田代隼人は大きな問題を抱えていた。だから偽物の隼人が問題の解決の為に、田代隼人に成り済ますしかなかった。
こうして田代隼人の身分証明書を借りてアルバイトにのぞんでいた。要するに隼人を名乗るこの男は、真っ当な素性ではない。だから、素性のしっかりした隼人に成り済ましてアルバイトを初めた。その代わりに問題解決の協力をしてやる約束を交わしていた。
田代隼人に成り済ました偽物の隼人は、アルバイト先の温泉旅館で、偶然にも絵梨花と知り合った。
🔷🔶🔷
それでも隼人は何故?交際する女たちを夢中にさせて女の心を弄ぶ、そんな卑劣な真似をしなければいけないのか?
何人もの女と同時に交際して、付き合う女たちに別々の名前や経歴を偽り近づき、巧みに結婚を餌に騙して金を絞り尽くし、恐ろしい闇に突き落とす理由は何なのか?
卑劣な男、偽物隼人は、ある時は青年実業家を名乗り、またある時は田代隼人を名乗り、またある時は芸術家を気取り、類い稀なルックスを武器に女たちを狂わせ地獄に突き落とす、この男の本当の狙いとは一体何?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます