第8話 ネット婚活サイト


 独身者における婚活サービスの利用状況を見ていくと2022年の調査では、恋愛もしくは結婚の意向があり、恋人がいない独身者のうち、約4人に1人(25.3%)が、婚活サービスを利用したことがわかった。


 その中でも「ネット系婚活サービス」の利用率が著しく高い。この事から独身者のあいだでも、ネット系婚活サービスが主流であることがうかがえる。


 昔は「既存コミュニティ内「同じ会社や職場」「合コン以外の友人の紹介」「同じ学校やクラス」「サークルや趣味・習い事の活動を通じて」「家族や親戚の紹介」「幼なじみ・近所」での出会いが多かったが、現在はダウントレンドとなっている。


  その理由として挙げらるのが、周りとの調和を大切にしている若者が多いので、コミュニティ内での恋愛に躊躇する人は「交際や破局によって、平穏な人間関係が乱れるのではないか」と危惧し、既存コミュニティ内での恋愛に少し後ずさりしてしまう傾向にある。

 このような現状から「コミュニティ外で出会いの機会をつくる」ことが重要になって来る。


 その結果、「婚活サービス(結婚相談所、ネット系婚活サービス、婚活パーティ・イベント)」に注目が集まり。「婚活サービス」が婚活の手段として台頭 しており右肩上がりで増加している。


 その中でも若者を中心に、合理的な志向が広がり、タイム・パフォーマンス(時間対効果、時間短縮)を意識する人も多くなってきた結果、ネット系婚活サービスは、効率的に結婚相手を探す事ができたり、自身の条件を整理しながらマッチングができたり、非常に合理的で、お断りをすることにも煩わしさが少ないこともあり、若者の価値観にマッチして急上昇している。



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 隼人はネット系婚活サ―ビスを利用して、多くの女性と知り合っていた。


 実はネット系婚活では学歴や経歴を偽る人も、少なからずいるのが現状。隼人は、学歴、職業を偽り、多くの女性と知り合い出会いのチャンスに恵まれていた。

 

 長瀬勇樹は、東京都内にある私立の雄偏差値最高峰Y大学卒業のエリ―トでIT企業社長と称して、待ち合わせ場所に現れた。実はこの人物は、偽物隼人だった。

 

 相手の女性は岐阜県出身の苺農園を営む両親の元に、スクスク育った純真無垢な娘さんで、苺農園の手伝いの傍らファミレス店で働く25歳の女性。


 ネット婚活で知り合った二人は早速会う約束をした。


 女性が岐阜県土岐市出身だったので、岐阜県恵那市岩村町駅前で待ち合わせをした。勇樹が「歴史の残る古い町並みが好きだ」と電話で話していたので、待ち合わせ場所として岩村が決定したのだった。

 

 勇樹は田代隼人から車を借りていた。それでも、余り目立ち過ぎるのも困るのでクラウンで出掛けた。


 こうして岩村の古い町並みにやって来た二人は駐車場に車を止めて、岩村の町並みを歩き出した。


  現在でも歴史的・文化的なたたずまい・町並みが残る美しい町並み。


 敵対する勢力によって、簡単に突き崩されないように周囲を石垣で囲んだ枡形や、町の中を流れる疎水など、他では見られない城下町の町並みを二人は、今までの会えなかった思いの丈をぶつけるように、色んな事を話し合い、穏やかに時間は流れて行く。

 

 全長約1.3kmの古い町並み周辺には当時の面影を残す商家や旧家、なまこ壁などが今も当時の面影を残している。


 この岩村は、岐阜県では高山市三町・白川村荻町に続いて3番目に「重要伝統的建造物群保存地区」として選定されていた。


 NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の舞台地にもなった場所だ。


 名物のカステラや五平餅、かんから餅のお店や地酒の蔵元などが点在しているので、食べ歩きにも最適。デ―トだというのに早速二人は五平餅を食べながら町並みを歩き出した。


「まだ顔を見た事がなかったから…何か…新鮮な感じがして…想像してた雰囲気と違ったよ。名前は、真奈美ちゃんだったね。」


「雰囲気が違うってどういう意味ですか?フフフ良い意味?」


「そっそうに決まっているさ!ネットの文章からもっと力強いイメージを想像していたけど…対照的に女性らしさが滲みで出た、優しい第一印象だった。君は僕の事どう思っている?」


「最初見た時はびっくりして、余りにもハンサムで驚いたわ」


「じゃあ僕たち…また会えるね」


「私こそ、こんな私とIT企業の若き経営者でハンサム過ぎる人と、とてもじゃないが釣り合わないですが、大丈夫ですか?ファミレスの店員の私なんかで…本当に?」


「僕は、職業は一切気にしないから…何事にも頑張っている、君みたいな女の子が好きさ」


「わぁ嬉しい嬉しい😃✨夢見ているみたい」

 

 だが長瀬勇樹と偽ったこの男は、真奈美と別れた後、早速誰かに電話をしている。


 冷たい氷の表情を浮かべ「『一人確保』フフフ…ウッフッフッフ」


 まるで獲物にありつけた獣のような目をした、この男は何者なのか?


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 偽物隼人は何人もの女たちを自由自在に操り、今日は社交ダンスの先生木村と名乗り、ネットで知り合った、タレントのたまご亜子とのデートにのぞんでいる。


「君タレントのたまごなんだって?君可愛いし絶対有名になれるさ!」


「先生嬉しい😃✨それより…私万が一にもタレントになれなかった時の保証として婚活やっているの。先生だったらバッチリOK!先生は私じゃ不満?」


「イヤイヤ若いし可愛いしバッチリ!」


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 何人もの女と同時に交際して、付き合う女たちに別々の名前や経歴を偽り近づくこの男狙いは何なのか?


 卑劣な男、偽物隼人は、ある時は青年実業家を名乗り、またある時は田代隼人を名乗り、またある時は芸術家を気取り、類い稀なルックスを武器に女たちを狂わせ地獄に突き落とす、この男の本当の狙いとは一体何?



 だが、何度目かのデートの後、真奈美は忽然と姿を消した。


 一体どこに消えたのか?




 


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