第12話 ヤンの正体
ベテラン刑事田中と新米刑事三田のコンビは、重要な証言を聞き出す事に成功していた。
田代総合病院の田代理事長を張り込み出して、新たな事実が判明した。それはアヤのマンションのコンシェルジュが話してくれた高身長のイケメンの話だ。
「一度だけ高身長の男性を見掛けた事が…それはマンションの駐車場から出て行くアヤさんと二人の姿です。でも?他にも車で出掛けた男性はいましたから…只その高身長の男性はテレビで見た気がしたので…?でも?有名俳優Xに似ていたからだと気付きました。」
防犯カメラから割り出された、その車に乗っていた男の車は、なんと車のナンバーから特定出来たのだったが、田代隼人の車だという事が判明した。
そこで田中と三田は、早速この高身長イケメンの身元割り出しに走った。
だが、今現在は結婚して妻の会社の副社長に収まっており、全くアヤとの関わりは見えて来なかった。
防犯カメラから分かった事だが、一度アヤと車で走り去っただけでは話にならない。アヤは他の男性たちとも仕事柄多くの交友関係が目撃されているので、問題視されなかった。
だが、田中と三田はとんでもない話を入手していた。それは田代総合病院の顧問弁護士から、聞き出した情報だった。
その情報とは一体どのような者だったのか?
実は現院長長谷川夫婦には、子供が授からなかった。その時に隼人の友達ヤンはよく田代総合病院の隣に隣接された亡くなった兄夫婦の豪邸に頻繁に遊びにやって来ていた。
子供が授からなかった長谷川夫婦は、いつの頃からか、おぼろにではあるが「あんなに可愛い賢い子供が、自分たちの子供だったらどんなに幸せか」そう思うようになっていた。
「だが、ヤンが高校生の頃両親はまだ生きていただろう?ヤンが医師として働き出してから、ヤンの両親は、交通事故に遭い亡くなったのだから」
「それでも弁護士にまで話が進んでいたという事は、長谷川夫婦は相当真剣に養子縁組みの話を考えていた事になる」
「バカな事を!両親がいながら養子に出す筈がないだろう?」
「それが…ヤンの両親には、以前から胡散臭い噂が後を絶たなかったらしいのです。まだはっきりした事は分からないですが?」
「だから、ヤンの祖父母はその養子縁組みの話に乗り気だった。あんな息子夫婦の側に置くよりちゃんとした、それもお医者様夫婦に貰われて行けば、未来は明るい」
「そんな事もあり、隼人とヤンは益々仲良くなって行ったのかも知れませんね?」
「でも未だ養子縁組みされていない?」
「それはそうだろう。交通事故の原因をハッキリ解明しないと。犯罪者の息子を養子縁組みしないだろう」
「あれ?あの交通事故の犯人は別にいるって事ですか?」
「今捜査中だよ」
🔶🔷🔶
ヤンは、相変わらずめぼしい女を誘惑する事は続いている。それは色んな女を夢中にさせて結婚を餌に誘き寄せて、己の欲望の為に取っ替え引っ替えして只々弄ぶ為に、このような事をしている訳ではない。ヤンのように医師にしてこのルックスだったら、こんな厄介な事をしなくても放って置いても女は寄って来る。
ヤンは、隼人の叔父夫婦現院長長谷川家の養子になる話が浮上していた。子供を授からなかった長谷川家の養子になれば、行く行くは院長の座も見えてくる。下手すれば、医師免許のない隼人に代わって自分がこの病院の実権を握る事だって出来る。
だから…あえてバカになり回りに急かされ、利用されているふりをしているのかも知れない。
そして…仕方なくこのような女性を手玉に取り、結婚を餌に誘き寄せ夢中にさせて、いいなりにさせているだけなのかも知れない。
それも急かされ必死に、こなしていると言った方が正解だろうか?
それでも女性たちを使って何をしようと考えているのか?それも性急に何をしようと考えているのか?
見えて来ない真実。急を要するとはどういう意味なのか、それこそ…ヤンの魅力に吸い寄せられた女性たちを集めて、出会い系サイトのサクラ要員にでもするつもりなのか?それともホテルに出向くコ―ルガ―ルにさせて金儲けの道具にでもするつもりなのか?
イヤイヤ医者がそんな畑違いの仕事に手を出す訳がない。
消えた女性たちには、悲惨な末路が……?
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