第11話 アヤの交友関係
博多署で、らつ腕を振るうベテラン刑事田中と、もう一人新人三田刑事のコンビが、この不可解な女性失踪事件に取り組む事になった。
中洲一の人気を誇る評判の美人で、クラブ蘭に勤務していた森山亜夜子というホステスが忽然と姿を消した。それにしてもアヤは一体どこに消えたのか?
早速田中と三田は、アヤのマンションに直行した。
福岡の中心部である天神の、高級タワーマンションの最上階一室に侵入した二人は、何か物的証拠はないか、血眼になりながら捜索し出した。
「オイ三田、何か出て来たか?」
「どうも男がいるようですね?それも大谷大臣とは違う誰か?」
「何故分かったんだ?」
「それが…ガウンが見付かったのだが、サイズの全く違うガウンが見付かったのです。かなり奥の方に入っていました。パトロン大谷大臣にバレたら困るので、奥の方に隠したのでしょうね?どうも…他に男が居そうですね?」
「ヨシ!受け付けで、アヤと一緒にマンションに入った男見なかったか、聞いて見よう」
二人は、エントランスにある受け付けに向かった。
「警察の者だ。あの~?森山亜夜子さんの事で聞きたいのだが、男の出入りはどうでしたでしょうね?」
「嗚呼…ちょっと…口止めされているので…」
「森山亜夜子さんが、もうかれこれ一週間行方不明で、捜索願いも出されているので捜索に協力して下さい。」
「…あの~大谷大臣は、よくお見掛けしました。他には女性は何人も見ています。ホステス仲間だと聞いています。それと…一度だけ高身長の男性を見掛けた事が…それはマンションの駐車場から出て行くアヤさんと二人の姿です。でも?他にも車で出掛けた男性はいましたから…只その高身長の男性はテレビで見たような…?あまりにもハンサムだったので…」
「あっ有り難うね!また何かあったら教えて」
「全く…困った事に、迎えに来た男だが、エントランスに入らず車で待機していたので、受け付けに名前が載っていない。その男は誰なのか?防犯カメラで早速チェックしよう」
🔷🔶🔷
数日後にベテラン刑事田中と新米刑事三田の姿が、田代総合病院にある。
それは車のナンバーから特定出来たのだったが、どうも田代隼人の車だという事が判明した。
早速、車の所有者田代隼人に聞いてみた。
「田代さん、森山亜夜子という女性はご存じありませんか?」
「全く知りません」
それでも車が特定出来たので、暫く田代隼人を張り込む事にした。
「中々シッポを出さないな~?」
「それでも…辛抱強く田代隼人を見張って見よう!」
「それにしても、アヤさんを誘拐する目的は何?それこそ…既に殺害されているって事も十分考えられる。本当に困った」
「それから先輩?あのガウンのDNA鑑定の結果が出れば…一歩前進ですね」
「そうだ。DNA鑑定の結果を待とう!」
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数週間後ガウンのDNA鑑定結果が出た。だが、DNA鑑定結果で驚いた事に、そのシミはヤンがクラブ蘭によく一緒にやって来ていた男で、悪友今野という男のものだった。
エエエエ――――――ッ!アヤはヤンと付き合いながら、今野とも深い関係にあったのだろうか?益々分からなくなって来た。
早速、今野という男の住むアパートに向かった田中刑事と三田刑事。
だが、既に今野という男はそのアパートを出払った後だった。アヤと今野の関係とはどのようなものだったのか?
今野は一体どこに消えたのか?
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ヤンと華子の結婚は、決して明るい船出には見えなかったが、それでも…かなりの歳の差婚であるにも拘らず、歳の差などみじんも感じさせない、仲睦まじい夫婦生活が続いている。
だが、腑に落ちない点も見えて来た。どういう事かというと、夫婦だというのに、結婚して半年も経つというのに、未だ別居婚の形を取っている事だ。華子が、九州に引っ越すとヤンに話しているのだが、なんだかんだと屁理屈をこねて実現出来ていない。
その代わりと言ってはなんだが、ヤンのマンションでヤンが唯一腹を割って話せる、神宮ホ―ルディングスのお嬢様絵梨花の姿が時々目撃されている。
全く酷い話だ。女として一番美しい盛りの二十五歳絵梨花をいつも自分の側に置き、四十五歳の熟女華子は、容姿も身体の線も崩れているので抱きたくないが、華子には、生活能力があるのでお金の無心が出来る。要は良いとこ取りと言う事になる。それを狙っての行為なのかもしれない。
若い美しい絵梨花を側に置き愛し合い、妻華子は一週間に一度か一月一度くらい会う程度。
ヤンは、華子に押しきられた形で、仕方なく結婚に踏み切ったが、今となっては、この結婚が正解だったとつくづく思うのだった。
いくら両親の死亡保険がおりたと言えども、二人も引き殺したともなれば、遺族に対する保証は法外な金額。華子はヤンがお金を使う事に何の文句も言わない。年上という負い目から、何をしても文句の一つも出ない。
華子は本当に物分かりの良い妻で安心した。
だが、相変わらず女を誘い出す事は続いている。それは色んな女を取っ替え引っ替えしたいからではない。想像も付かない真実が隠されている。
それでも…益々腑に落ちないのが、絵梨花の事は、特別な存在だった筈なのに、幾ら華子に押し切られたと言えども、年増の女と結婚するとは、金に目がくらんでしまったとしか言いようがない。
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