第18話 リンランの姉


 


 敗戦で日本人が引き上げた後にやってきた中国人政府が酷い腐敗政権だった。


 日本支配の名残を消そうと学者・教育者・知識人などを集め、新たな時代の幕が切って落とされたのだったが、暴動を引き起こして4万人もの犠牲者が出たと言われている。


 日本人は、元来繊細で几帳面。日本統治化時代には大掛かりなインフラ整備が行われていた。


 確かに自由を束縛した番犬が日本人だったが、食べて寝るだけの豚が次の支配者としてやってきた時には手に負えない状態に置かれてしまった。これは中華民国政府を指す言葉だ。


 およそ100年前の日本統治時代、台湾では各方面でインフラ整備に力がそそがれた。近代的な建造物や鉄道、水道、電気などのインフラ整備を行った。


 また、台湾南部に烏山頭ダムを建設し“嘉南大圳”という大規模な灌漑設備を整備した八田與一・技師が有名だ。


 だが、日本人が去った後にやっと自由を手に入れたと思った台湾国民だったが、次の支配者は食って寝るだけの只の豚だった。台湾では「犬去りて豚来たりぬ」は台湾人の戦後の考え。自由を束縛された番犬が日本人だったが、食べて寝るだけの豚が次の支配者としてやってきた中華民国政府を言う言葉だった。


 🔶🔷🔶

 1895から日本統治の始まりとなった台湾。

 発展途上にあった台湾のインフラ整備の為に、日本から幾多の第一人者がやって来た。


 この工藤邸の旦那様は、有名な建築家。


 実は…リンランには兄がいるのだが、実は兄には双子の姉がいたのだった。


 姉はあの時代で旧制高等学校を卒業した優等生だった。


 あの時代台湾人は牛の世話をして、焚き火に使う木の枝を拾い、お茶の葉を採るなど、他に炭鉱や低賃金の工場で働き、夜も手作業に負われる毎日を送っていたが、なんと姉は、日本の有名建築家の事務員として採用された選りすぐりの存在。


 希望に胸を膨らませ、邸宅の隣に建つ事務所で働き出したメイリ―。


 元々オランダの血が混じっている姉メイリ―は、妹リンランに負けず劣らずの器量良し。


 ある日建設中のビルの視察で工藤社長が出掛ける事になったのだが、その助手としてメイリ―を連れて行く事になり、メイリ―は喜び勇んで着いて行った。


 本来なら建築士の資格者が助手として派遣させられるのに、なんと幸運な事。だが、社長と従って車でついて行くと、なんとそこは高級中華料理店だった。


「メイリ―君入りたまえ」


 それでも…既に11時を過ぎていたので社長が、次から次へ高級中華を注文してくれた。


(まさか助手で来たのに、こんな高級中華を食べるなんて考えられない?)

そう思っていると社長がメイリ―に言った。


「何を遠慮しているんだい?しっかり食べなさい」


「ありがとうございます。でも…仕事中ですから」


「何を言っているんだ。良い仕事をするには、第一に腹ごしらえが肝心だ。遠慮せずに食べたまえ」


 メイリ―は、いつもとっても怖い社長が、こんなに優しいとは思わなかったが、案外優しいと思い肩の荷が下りる思いがした。そして一気に食欲が沸いて来た。


 それからも、幾度となく社長のお供をする身となったメイリ―だったが、ある日遠くの主張が入った。


 まさか、自分を指定されるなんて思っても見なかったが、社長に進められ同行した。


 そして…その夜当然部屋は別々だったが、メイリ―が眠りについた矢先に、荒い息づかいが微かに聞こえて来た。


 なんと社長がメイリ―のベッドに潜り込み、暗闇でも分かるギラギラした眼差しでメイリ―に口付け💋をしてきた。


「あっあヤッ止めて下さい。どうしたんですか?」


「メイリ―君、俺はメイリ―君を一目見た時から、君といつか…こうなりたい。そう思っていた。悪いようにはしない。妻とは冷めきっている。今はメイリ―君の事だけだ」


 そうは言われても、30歳以上年の離れたおじさんを、男性の対象には思えないメイリ―。


 そうこうしている間に、唇は奪われ下着も剥ぎ取られ無下にも出来ず、関係を持ってしまった2人。


 メイリ―も最初の内は、嫌で嫌で仕方なかったのだが、知性的で紳士的で才能溢れる社長に、男というより優しい父親のような…こんな人が旦那さんだったら良いのに?とまで思うようになって来ている。



 そんな時に、2年遅れで妹リンランも同じ建設事務所で働き出した。


 あの時代台湾人が仕事に就く場合は、3Kが当たり前の時代だった。(汚い、きつい、危険)

 そこで母から頼まれていた。


「メイリ―あなた、社長秘書でしょう?社長に口添えして貰えないかい」


 こうして妹リンランも同じ事務所で働き出した。


 🔶🔷🔶

「メイリ―2人で住む家も買ったから」


「だって両親が心配するから、2人で住む事は出来ません」


「君にプレゼントしたいだけだよ」


「本当に……わぁ嬉しい🌸💕」


 相変わらず工藤社長との関係が続き、姉メイリ―はとうとう子供を身籠ってしまった。


「社長赤ちゃんが出来たのですが?」


「メイリ―赤ちゃんを産んでくれ!俺はメイリ―を愛している。妻とは別れようと思っている」


「本当に…本当に…私で良いのですか?」


「メイリ―だけだよ💖」



 🔷🔶🔷

「木村、工藤が最近変なのよ?調べてくれない?」


「はい奥様、早速調べます」

 木村とは家に使える爺やである。数日後結果が出た。


「奥様、社長には愛人がおります。更には子供まで設けております。そして…なんと社長は別宅を購入して…そこで度々目撃されております。それも愛人は台湾人です」


 だが、幸せを掴み掛けたメイリ―と赤ちゃんは殺害されてしまった。


 いよいよ恐ろしい事件の幕開けが……?









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