第32話 母リンランとの巡り合い
ヤンは台湾の血を引く父ヂ―ミンと日本人との間に出来た子供なのだが、ヂ―ミンは金田組長ドユンの娘ジアと結婚した筈では?
色々あって、確かにヂ―ミンは言われなき差別に苦しんでいたが、それはいっときの事。それより問題だったのは、ジアと真知子の争いだった。
「私知っているのよ、ヂ―ミンが真知子とか言う女子と付き合っている事、私もう我慢出来ない。別れないのだったら、折角国立大に通っているのに、通えなくしてやる。だってそうでしょう?ヂ―ミンが大学に通えているのだって、私が父に頼み込んだお陰だって事知っているでしょう?あの女真知子と絶対別れて!」
「…只の友達さ、それより…どうしてそんな事分かったんだ?」
「当たり前よ。私の友達が噂の真知子さんと同じD女子高に通っていたのよ。ましてや真知子さんは目立っていたから、そして…相手が学園のスターヂ―ミンだったので、直ぐ評判になったのよ。お願い別れて!」
ヂ―ミンは、真知子とは絶対に別れたくなかった。障害が有れば有る程燃え上がるのが恋と言うもの。引き離されれば引き離される程燃え上がるのが恋と言うもの。
一方の真知子ちゃんは、どう思っていたのか?ヂ―ミンと真知子は同い年
だったので同じ年にヂ―ミンは国立大の建設科に進んだが、真知子は短大に進んだ。
一時は健介が図書館で差別発言をして、これ以上ヂ―ミンにダメ―ジを与えては気の毒と思い距離を置いていたが、別れた訳ではなかった。
真知子ちゃんは男子生徒の憧れの的、それをヂ―ミン1人が独占してはもっとヂ―ミンに風当たりが強くなり、大変な事になると思っての事だった。
だが、密かに2人の間は強固な絆で結ばれていた。それでは、そんな強固な絆で結ばれた2人が何故別れてしまったのか?
それは、ジアが父に頼み込んだのもあるが、組長ドユン自らも折角可愛い娘に頼み込まれ仕方なく大学にまで通わせてやっているというのに、他に女が出来たなんて話しにならない。
(行く行くはこの金田組を継いで貰いたくて、行かせたくもない大学に娘に頼み込まれ仕方なく通わせてやっているのに恩を仇で返すとは許せない!)
こうして、真知子を脅したのだった。
「お嬢ちゃん、あんた実とか言う男と付き合っているらしいが、あの子は私の息子同然の子だ。別れないと痛い目に合わせやる。親兄弟がどうなっても良いのかい?」
「ぶしつけな話しですね!そんな脅しになんて乗りませんから」
「ウッフッフッフッお嬢ちゃん今に見ていろ、後で泣いても知らないからな。ハッハッハ~!」
そんな事が有って暫く経ったある日、真知子の大切な母が交通事故に遭い足を強打されて全治2カ月の大怪我を負った。
こうして真知子は、これは只事ではない。そして…改めて、父に話して実(ヂ―ミン)の身辺調査をして貰った。
すると…脅していたのは、日本最大規模の指定暴力団金田組の金田組長だった事が分かり、実はやはり健介が図書館で言っていた通り、日本最大規模の指定暴力団金田組の一員である事が分かった。
こうして、泣く泣く真知子は実から手を引いた。だが、運命の巡り合わせとは不思議なもので、思いも寄らない運命に翻弄される事となる。
🔷🔶🔷
それでは、ヂ―ミンと母リンランは巡り合う事が出来たのか?
実は、母リンランは、32歳でめでたく中野元大佐の妻となっていた。それでも慰安婦と結婚なんか出来るものなのだろうか?
それは明治政府の偉人達の中にも、美人な芸子を妻にしている者は、結構多かったようだ。
恋に垣根はない。好きになれば誰がなんと言おうと関係ない。
権力者だった2人中野大佐と加藤中佐は、日本軍の幹部に便宜を図ってもらい、慰安所から連れ出して囲っていた。戦争末期日本軍は金欠に陥っていた。そこで、相当額のお金を積んだことは、間違いない。
それでも加藤中佐の事をリンランは何故恨み戦争戦犯に掛けるように仕向けたのか?確かに、台湾から遥々日本に逃れて来たヂ―ミンの育ての両親を殺害させたが、それは加藤中佐が指図した訳ではない。
実は、それは加藤中佐がヂ―ミンを勝手に里親に出した事と、中野大佐に言われた言葉に喜びと共に強く共感出来たからだった。
「私は子供の居場所を知っている。ヂ―ミンは私とリンランで育てる事を約束しよう」
だからヂ―ミンは中野大佐の子供だった。
こうして、勝手に里子に出して可愛い我が子を突き放し、拒絶する加藤中佐。そればかりか、台湾から命辛々逃げて助けを求めた里親を殺害したのもネックになり、加藤中佐の事が益々イヤになった。
一方の中野大佐はヂ―ミンを一緒に育てたいと言ってくれた。だから、比較して当然中野大佐を選んだのだった。
そして…加藤中佐は戦犯に掛けられて命を落とした。自分の子供でもない。ヂ―ミンをわずらわしく思ったのだが、中野大佐とリンランに結果的に恨まれてしまった。
🔶🔷🔶
中野大佐と協力して必死でヂ―ミンの居場所を探していたリンラン。
そして…やっと居場所を見つけたが、ヂ―ミンを連れ戻す事も出来ず、時だけが過ぎていった。結局ドユン一家の妨害に遭い一緒に生活する事も叶わず仕舞い。
それでも、いつの頃からか、母リンランとヂ―ミンは密かに会っていた。母リンランは、会えば色んな悩み事を聞いてくれる唯一腹を割って話せる大切な母だった。
そんな母が行方不明になった事件は、ヂ―ミンにとっては想像を絶するものだったに違いない。
母リンランは、ヂ―ミンの居場所を中野大佐から聞いて調べたが、既にそこにはいなかった。だから、興信所を使って必死に調べた。
大学生になったヂ―ミンを見た時には、溢れ出る涙を拭う事も忘れて、2人は延々抱き合って泣き続けた。それは、ヂ―ミンとて同じ事。運命に翻弄され差別に苦しみ、やっと愛する母に会えた矢先に愛する母が行方不明になった。
こうして恐ろしい悲劇の連鎖が巻き起こる。
※何故慰安婦が必要だったのか?
第一の理由は、日本兵が性病に感染して兵力が低下するのを防ぐことだった。人間の「三大欲求」食欲、睡眠欲、性欲を満たす事が人間が生きていくうえで重要だ。兵士たちは食事と睡眠は満たす事は出来ても性欲は満たす事が出来ず、手当たり次第に欲望を満たそうとした。これに頭を抱え軍医や憲兵が介入して性病検診を徹底するようになった。こうして慰安所が作られた。慰安所では軍医による「慰安婦」の性病検診を定期的に行い、コンドームや性病感染防止のぬり薬などの使用を徹底した。
第二の理由は、占領地での日本兵による強かん事件への対策だった。
第三の理由は、日本兵の戦意を高めるため。休暇制度もなく長期間、戦地に釘付けにされた日本兵たちの精神は、次第にすさんでいき「どうせ死ぬんだ」という自暴自棄の思いを少しでも和らげる為。
第四の理由は、軍の機密を守るため。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます