第33話 臓器移植手術
田代院長とリンランの出会いはリンランが31歳の頃だったが、若くてピチピチと言う年齢でもない。それはそうだろ。田代院長はおん年55歳で、若い娘には当然目がいかない。自分の娘程の年齢の娘と恋愛は出来ないだろう。
だから、この田代院長、若い娘にはとんと興味を示さないらしい。どちらかかというと、艶っぽい30過ぎの女性に興味を示していた。
だから、既婚者か、男性経験のある艶ぽい女性を知らぬ間に選別していた。
最初リンランを見た時は、夢にまで見た理想の女性と巡り合えた喜びで、胸が踊り、この胸のときめきを押さえる事が出来なかった。
そして…あの旅館での出会いから、家族も交えての交際に発展して行った。リンランも当然田代をすっかり信頼しきっていた。
ある日の事だ。たまたま鉄鋼メ―カ―勤務の中野が海外に赴任中だった事もあり、気心の知れた田代に声を掛けられ意気揚々と出掛けて行った。
それでも九州と東京では離れ過ぎていると思うのだが?
実は中野の母の実家が九州熊本に有り、母の兄は戦死していたので、母が実家を譲り受けていた。その為中野の母の実家に夫婦揃ってよく帰っていたのだった。だから、中野が海外赴任の際には熊本に帰っていたリンランだった。
こうしてあの日旅館で親しくなって以来、九州にやって来た時は夫婦共々田代夫婦と親しく付き合いが続いていた。
そしてあの日田代からの電話で出掛けて行った。
「かに料理が食べれる美味しい店が有るから行かない?」と誘われ車で出掛けた。
だが、その後大変な事態に発展してしまった。とんでもない事に、かにを食べた後、その足で病院に誘い込み強引に関係を迫った田代。
「リンラン前から君が好きだった。良いだろう?」そう言ったが先か、一気にリンランに飛び付き、リンランは身動きが取れなくなってしまった。
こうして無理矢理関係を持たされたリンランは、田代に対して強い憎しみと不信感で一杯になり逃げるように家に帰って行った。
リンランにすれば青天の霹靂、運が悪いことに妊娠してしまった。それでも田代の子供と限った訳ではない。中野の子供と言うことも十分考えられるが?
イヤイヤ中野は海外に赴任中で、半年程家を留守にしていたので、絶対田代の子供である事は間違いない。
またそれもバカな事に、まさか妊娠したとは気付かず、5カ月が経過してしまった。
(何かしらお腹が膨れて来た様子?)そこで病院で見て貰った。すると妊娠5カ月と診断された。
(もう中絶も出来ない。でも子供が誕生してしまったら、中野に全てバレてしまう。どうしたらいいだろうか?)
こうして考えあぐねた結果致し方なく、死ぬ程イヤな憎い男ではあったが、背に腹は代えられず田代に相談した。
🔷🔶🔷
半年近く経過した、田代病院分院の特別室にリンランの姿がある。
リンランは夫中野と5カ月間音信不通で、こっそりこの田代精神病院分院で、男の赤ちゃんを出産していた。それと言うのも、中野はあの時代は高度成長期で出張が非常に多く、殆ど家にいなかった。だから…こんな軽率な事が出来た。
夫中野に他人の赤ちゃんを妊娠したことを知られたく無くて、半年近く田代に家を借りてもらい生活の一切を見て貰い、出産にこぎつけていた。
だが、その生まれた子供には障害が有った。臓器に異常が見付かった。
そこで最近にわかに注目を浴びている最先端の臓器移植に、着手したのだった。
1960年代中盤世界的に見ても臓器移植手術の症例は数少なく、ましてやあの当時は、まだ日本でも、臓器移植手術を行った人は僅か数人しかいなかった時代。
だが、田代は、可愛い我が子を、この手でどんな事をしても助けようとやっきになっていた。
可愛い我が子を治す為だったら、例え火の中水の中。ましてや命に変えても守りたい愛するリンランの子供だ。
臓器を手に入れる為に患者の臓器に手を出すようになって行った?。
🔷🔶🔷
田代院長はどのような幼少期を送ったのだろうか?
元々貧村の農家の三男坊だった田代は、勉強だけはよく出来る子供だったので、親も安心仕切って多少の変化にも気付かなかった。
成績の良かった田代は、家が貧乏だったので、金持ちの家の子供に勉強を教えて、お小遣い稼ぎをしていた。
金持ちと言えば、今も昔もお医者様。運良く村に一軒ある診療所の息子と同級生で、その息子にも時々解らない所を教えていた事から、お医者様一家から重宝がられ豪勢な料理でもてなして貰っていた。
それは、息子の成績が日増しに伸びて行ったからである。いずれは息子も医者にと考えている両親にとって田代は、家族の救世主。歓迎されすっかり診療所にお邪魔する事が増えた田代だったが、今度はその家の弟妹にも勉強を教えて欲しいと言う話になり、今で言う家庭教師的な存在になった田代は、その家に入り浸り状態。
こうして村に一軒の診療所での外科手術も自ずと見る羽目になった田代は、いつの頃からか、人の内蔵に興奮を感じずにはいられなくなった。
(ああ…アア…嗚呼…あの不気味な臓器を触ってみたい)
それでは、何故そんな特異体質になったかというと、父親が母に凄い暴力を奮っていたのもあるが、その矛先はやて、子供達にも向けられて行った。
その恐怖とストレスから動物を虐待する事で紛らわし、更には、診療所の外科手術で興奮を覚え、友達の妹弟に勉強を教える傍ら、こっそり手術を覗き見するようになっていた。
「嗚呼 ああ アア 切り裂いた体の中が…バクバク動いている。また臓器も気持ち悪い色をしている。嗚呼…触って見たい!嗚呼切ってみたい」
そんな理由から田代は医師になることを夢見る。それは外科手術が出来るからである。
🔶🔷🔶
そんな時に、愛するリンランとの間に出来た可愛い息子の心臓に欠陥が見つかり、臓器移植に一層着手して行った。
そして…過去の異常犯罪者H.H.ホ―ムズを参考にしたいと考えている?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます