第14話 ヤンの両親の交通事故の犯人

 あの交通事故の真夜中、桜吹雪舞う熊本城下を一台のバイクが、それもかなり大きい高級バイクの代名詞ハ―レ―を、乗り回すカップルの姿が有った。


  実は、バイクで死亡になるようなケースはひくというよりも、スピードが出ていた状態で衝突し、跳ね飛ばされた相手が転倒でコンクリート壁や電柱に頭部をぶつけたりした場合がほとんどだ。または腹部~胸部に強い圧迫を受け、内臓破裂などをおこした場合、またはその両方が起きた事で大惨事を招く事がある。


 あの真夜中、スピードが出ていた状態で衝突した為、跳ね飛ばされた相手が転倒でコンクリート壁に頭部をぶつけたので、腹部~胸部に強い圧迫を受け、内臓破裂などをおこしたと考えられる。

 

 🔷🔶🔷

 実は亮の父親は九州に拠点を構える野球球団の誰もが知る有名監督だった。


 プロ野球12球団のうち、福岡ヤマトホークスは最南端に位置する九州唯一の球団である。福岡県に本拠地を構える福岡ヤマトホークスは九州地方の人々から絶大な人気を誇っている。


 真夜中に息子山田亮が帰宅したのだが、二人もひき殺してしまった事を両親に打ち明けようか、どうしようか考えあぐねている。


 だが、バイクは大破してバレるのは時間の問題。そこで怖くなった亮は真夜中と分かりながら居ても立っても居られず両親の寝室に向かった。


 

トントン


 すると母が寝室から出て来た。


「どうしたの?こんな夜中に?」


「ママ…ゥゥゥ。゚(゚´Д`゚)゚。ウワ~~~ン😭ゥゥゥウワ~~~ン😭実は…実は…ウワ~~~ン😭ゥゥゥウワ~~~ン😭実は…実は…人を…ゥゥゥウワ😭人を…ひき殺してしまったウワ~~~ン😭ゥゥゥウワ~~~ン😭」


「エエエエ―――ッ!そっそそれは…それは大変な事!ちょちょっと待ちなさい!パパを呼んで来るから…」


「パパ大変、大変なのよ。早く早く来て!」


「どうしたんだ!言って見ろ!」


「それが…バイクで人を跳ねたらしいのよ」


「それは大変だ。事故を起こした場所に行こう!急いで」


 こうして三人は事件現場近くにやって来た。するとそこは既に警察車両や、野次馬でごった返していた。そう言えば時間は既に明け方で、辺りはすっかり明るくなっていた。


 「これは思った以上に大事になっている。こんな場所にいたら怪しまれる。さっさと帰ろう」

 三人はその場を離れ帰路に着いた。


 🔶🔷🔶

 

 警察が犯人の車やバイクの塗装とか車体の跡から証拠がないか調べている状態で、更に警察は防犯カメラの解析など動いているようだが、 ナンバーさえ特定できれば相手は捕まる可能性は高い。だが、時間は真夜中で人通りもほとんどなかったので難航している。


 その頃、山田家では証拠隠滅の為に必死に家族で相談していた。


「バイクのナンバーが特定されれば、私の監督生命は終わりだ。全くバカな事をしてくれたものだ。このバカが!」


「本当に困った子ネ!どうするのこんな事が表沙汰になったら、我が家はおしまい。嗚呼どうしたら良いの?ともかく衝撃で傷付いたバイクを隠さなくては?」


「そうだ!大きいバンに乗せて別荘の地下室に隠そう」

 こうして証拠の品を別荘の地下室に隠した。


 🔷🔶🔷


 そして高齢の夫婦の死はニュースで大々的に放送された。


 だが、意外な事に犯人は亮がひき逃げを起こし、逃げた後からやって来た中年夫婦の車がひき逃げ犯人と断定され、ガ―ドレ―ルに衝突して、被疑者死亡をもって解決されてしまった。


 こうして山田家には、また以前の静寂が戻りつつあった。運良く少し町外れに差し掛かっていた為、防犯カメラに映っていなかったのが功を奏した。


 だが、喜んでいたのも束の間、静寂を取り戻しつつあった山田家に、ある日思いも寄らない電話が入った。


「うふふ うふ うふふ 奥さん息子さんの事件上手く行きましたね。うふふでも…うふふ…あの真夜中…実は目撃したのですよ。逃げれると思ったら大間違い。うふふ…奥さんこの件をバラされたくなかったら、僕の指定した口座にお金を振り込んで下さい。取り敢えず百万円。分かりましたか?」


「いい加減な事言わないで下さい。口先ではなんとでも言えます。証拠…証拠を見せて下さい」


「うふふ…じゃあ奥さん今度、近所の喫茶店ロマンスで待ち合わせして証拠をお見せします。来れますか?」


「仕方ありません。三日後の午後三時に喫茶店に行きます」


 🔶🔷🔶

 山田監督の妻で亮の母は近所の喫茶店ロマンスに指定した時間にやって来た。


 すると、目付きの鋭い何か威圧感のある三十代の男が、胸のポケットに赤いハンカチを入れ待っていた。


 あの時目印に、赤いハンカチを胸のポケットに入れて来る約束を取り付けていた。


 実はこの男、ヤンと一緒にクラブ蘭に姿を出していたヤンの悪友だった。


 携帯に収めた証拠のナンバープレ―トを見せられた亮の母は、その場に座っている事もままならない状態に追いやられ、心臓の鼓動が波打ち話すこともままならない状態に陥ってしまった。


「アッあの~この話はまた後日にお願いします。私少し体調が思わしく御座いません。失礼します」


 亮の母玲子は、その言葉を発することで精一杯だった。


 これは一体どういう事なのか?

 犯人が分かっていながらヤンは、遺族に賠償金を支払っていたのか?


 そんなバカな話はない。全て分かっていた今野の狙いは何なのか?


 益々謎多き迷路に迷い混んでしまったこの難事件?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る