第41話 田代院長の善意?




 ヂ―ミンは母リンランが中野と結婚したことによって日本国籍を取得していた。(本名:中野実)は現在78歳で妻美智子は68歳福岡市内の豪邸に息子ヤン(本名:中野昴)とそれはそれは幸せに暮らしていたが、金田組に裏帳簿の件がバレてしま再三金の要求をされていた。


 だが、実夫婦の仕出かした衝突事故で生き残りの昴は、反対に被害者から賠償請求される羽目になった。


 こんな事もあり、中野一家から金田組は完全に手を引いた。


 その理由は、ジア姐さんを捨てて出て行った2人を恨み続けたジア姐さんだったが、元夫ヂ―ミンの死で、今までの恨み辛みから目が覚め、事の重大さに我に帰り、逃げ回るヂ―ミンを付け回し過ぎた結果事故に繋がり、今尚ヂ―ミンの死を受け入れられずにいるジア姐さんだった。


 そして…葬儀の後ジア姐さんと栄治は事故の一部始終を話し合っていた。


「あの事故は、中野さんの仕業ではないのです。俺は、その証拠写真を携帯に収めてあります。もうあの中野家から十分過ぎるくらい絞り取ったではありませんか?もう中野家に近付かない約束をしてくれたら、証拠の写真をお見せしましょう」


「まぁ、両親も亡くなって昴君も医師になったばかりで、更に被害者に賠償請求され大変らしいわね……分かったわ。もう昴君には近付かないわ。約束しましょう。私もヂ―ミンが亡くなって……もうどうして良いか…分からない…ゥゥ。゚(゚´Д`゚)゚。シクシク」


 今尚ヂ―ミンの死を受け入れられず、悲しみにうちひしがれ立ち直る事が出来ないジア姐さん。

 


 🔶🔷🔶

 それでは田代病院は何故「殺人病棟」と呼ばれるようになったのか?


 そこには、創業者田代院長の「人を助けたい」と思う強い信念が有った。太平洋戦争末期の1945年6月19日アメリカ軍の空襲によって、福岡市街地には1000人以上の人々が、行方不明や死亡となった。


 そこで元々正義感の強かった田代院長は一人でも多く助けたくて、助からないと分かりながらも、病院に搬送して治療に当たっていた。


 臓器移植がアメリカで行われた1963年の20年近く前の事になるが、院長は助けたい一心でもう助からない脳死患者から臓器を取り出し、臓器を損傷したが、一命はとりとめた患者に、恐る恐る臓器移植を馴れない手つきで、まだ未知の世界に足を踏み入れてしまった。


 こうして、人助けをしたいばかりの卓院長は何人もの移植手術に成功した。勿論爆撃を受けているので皆が皆助かった訳ではない。自ずと失敗例もあまた有った。


 だが、爆撃に遭い刑務所から脱出した大殺人鬼も中には当然いた。まだ、この時代臓器移植に関する、詳しい情報は皆無だった。当然何も分からない院長だったが、人助けの気持ちだけは誰にも負けない。


 そんな中恐ろしい事件が起こる。凶悪殺人鬼の臓器を助かりそうな人に移植した。移植された臓器はドナ―に酷似して行くらしい。



 🔷🔶🔷

 戦後間もなくの事だ。この田代病院内で恐ろしい事件が起こった。


「ウッフッフッ ワッハッハ 嗚呼…我慢出来ない。嗚呼…抑え切れない。ウウあああ…血が騒ぐ!あああ嗚呼アア!!!」


 入院患者の一人が真夜中に他の病棟に忍び込み、女の患者を次から次へ強姦して首の動脈を切り殺害して、男の患者は次から次へ滅多刺しにされ殺害され、翌朝見つかった。


「キャ――――――――――ッ!」

 


 










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