第21話 事件の真相

 

「あああ…アアア…血が騒ぐ。人を殺したい。殺害される現場を目に焼き付けたい。アアア…あああアアア……イヤ…この手で殺したい。あああアアアそそられる」


 こんなきちがいに変貌したのは、一体誰なのか?


 そう言えばヤン一家には不幸の連鎖が延々と続いていた。


 🔷🔶🔷


 ヤンの祖母リンランは姉と一緒に有名建築家工藤建築事務所で働き出したが、工藤社長と秘密裏に交際していた姉メイリ―と赤ちゃんは残酷にも誰かの手によって殺害されてしまった。


 姉メイリ―が殺害されショック冷めやらぬ中リンランには、またしても不幸の連鎖がリンランを襲った。あの時代は誰にでも起こりうる悲劇だったのだが、折角工藤建築事務所で働き出したのに、時代は戦争末期で非日本人は有無も言わせぬ形で強引に警察に召集され、若い非日本人女性は誰かれなしに慰安婦にさせられる事が多かった。


 あの時代日本軍や警察に逆らうことは、生きる道を絶たれたも同然だった。

 

 そして…類い稀な美貌を誇るリンランは加藤中佐と中野大佐の目にとまり、強引極まりない形で婚約した加藤中佐との婚約だったが、加藤中佐は戦争戦犯で命を落としてしまった。


 その悲しみが癒える間もなく、元中野大佐からのプロポーズにいつの間にか、気持ちは傾いて行った。だが、リンランには、違う意図があった。


 何故、あんなに家族思いの優しいリンランが、このような人を陥れるような卑劣な真似をする女になってしまったのか?



 そして…加藤の手によって里子に出されたヤンの父ヂ―ミンは、仮初めにも台湾人の中では至って恵まれた家に里子に出されて、幸せな幼少期を過ごしていたが、時代の変革の波に飲まれ愛する義父母を目の前で殺害されるという悲しい出来事に直面する事になってしまった。


 それは、ある日突如として起こった。軍の部隊がツカツカと台湾人裁判官の旦那様の家に押し入り、旦那様は後ろ手に縛られ強制的に有無も言わせぬ形で捕らえられ連行されて行った。


「お止め下さい。ご主人様にどんな罪があるというのですか?お止め下さい!」


「うるさい!邪魔だ。どけ!」

 

「い~え通しません!」


「邪魔だ!撃て!」


 バ――ン バ――ン


 必死に旦那様を守ろうとした祖父ジンフ―であったが、その時部隊の1人が余りにもしつこく食い下がるジンフ―にピストルを発射した。その時銃弾が眼球を貫通して片目を失ってしまった。


 こうして部隊に目をつけられた義理祖父母はこのままでは、いつ命を落とすかも知れない。それでも子供だけはどんな事をしても守ろうと、こっそり日本に渡航したのだった。


 時代はニニ八事件真っ只中、恐ろしい暴動があちこちで起こっていた。その時に、義祖母ビンユーは逃げ惑う中、火炎瓶の爆撃に遭い、顔の右半分が焼けただれてしまった。まだ幼児だったヂ―ミンは相次いで起こった両親の現場を見てしまった。


 こんな現状化、両親は自分たちはどうなってもヂ―ミンだけは助けようとして、実母リンランに渡すことを決意した。そして…ヂ―ミンに里子である事実を伝え日本に渡り、実母の婚約者宅に救いを求めた。酷い話だが、終戦の混乱期で連絡も取れず突如現れた親子を番頭頭が不審者と間違え撃ち殺してしまった。


 愛する義父母がピストルで撃ち殺された時には、台湾での旦那様の理不尽極まりない逮捕に、子供ながらに大人を信じることが出来なかったヂ―ミンだったが、またしても大人の余りにも酷い酷過ぎる態度に、何もかも信じられなくなったヂ―ミンは何か得体の知れない何かが、自分の中で崩れるのを感じ取った。


 その頃から子供らしくない、陰に隠る不気味な子供に成長して行った。


 それでは、加藤は何故愛するリンランとの間に誕生したヂ―ミンを里子に出してしまったのか?当然誰の子供か分かったものではないというのもあるが、それでもまだ慰安所に来て浅いので、加藤の子供だとは思うのだが?


 多分慰安婦としてやって来てほんの僅かな期間に妊娠が分かったので、中野大佐の子供か、加藤中佐の子供だとは思うが、そこには加藤のとんでもない思惑があった。




 🔶🔷🔶

「あああ…アアア…血が騒ぐ。人が殺害される現場を目に焼き付けたい。アアア…あああアアア……イヤ…この手で殺したい。あああアアアそそられる」


 こんなきちがいに変貌したのは、一体誰なのか?


 ヤンの祖母リンランにも、父

ヂンミ―にも、ヤンにも世を恨み狂うだけの悲劇は十分起こっていたが?

 

 そう言えば祖母リンランは、姉メイリ―とメイリ―の赤ちゃんが殺害された一部始終を目撃してしまった。そこで助けようと現場に駆けつけたが、時既に遅し。一瞬で殺害されてしまった。殺害されたそのショックは計り知れないものがある。


 更に追い討ちを掛けて恐ろしい事件が相次いだ。ある日強引に連れ出され売春目的の慰安婦にさせられてしまった。


 不幸続きの中やっと暗闇から脱出出来る。それは赤ちゃんの誕生。リンランは赤ちゃんを授かりこっそり慰安所で慰安婦たちに助けられ育てていたが、加藤中佐にバレてしまい「子供は絶対離したくない」そう強く懇願していた。それなのにある日忽然と赤ちゃんは消えた。


 あんなに懇願していたにも拘わらず、何らかの理由で赤ちゃんを里子に出してしまった。


 そんな理由から、何らかの方法で加藤が無理矢理赤ちゃんを里子に出した事がリンランにバレてしまい。加藤を恨み中野大佐に頼み込み、加藤を戦犯に掛けさせた一因になっているのは確かだ。


 それでは最後にヤンだが、ヤンには何かしら、怪しい言動の数々が目撃されている。


 天才的知能と類い稀なルックスを兼ね備えたヤンは、何故悪に手を染めるのか?


 結婚詐欺師まがいなこの言動は一体何の真似なのか?やはりヤンが次々に失踪する女性の事件に一役買っているのだろうか?


 🔷🔶🔷

 その頃女性たちは悲惨な状況に置かれていた。実はこの事件には、多額の負債を抱えたある人物が、大きく関わっている。そして…この事件の首謀者が、頭を抱え考え込んでいる。


「アアアあああ…アアアあああ…どうしたらこの危機を乗り越えれるだろうか?困った!困った!金、金、金、そうだ。良い案が思い付いた!」


 一体金を生み出すどんな案が見つかったのか?やはりヤンか?ヤンの親戚の仕業なのか?それとも…全く関係ない第三者に操られているのか?






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