第22話 別荘の火事の犯人?

 


 それでは、隼人の両親と弟淳が亡くなったのだが、あれは只のタバコの不始末が原因で起こった火事だったのか?


 それが実は、この火事には兄隼人が絡んでいる。それでは、どうしてこのような事故?事件?が、起こってしまったのか、経緯を追って見ようではないか。


 優秀な2歳年下の弟淳は、さっさと医大に合格していた。既に2狼を余儀なくされていた隼人は、両親から口うるさく罵られ焦っているが、どれだけ頑張っても出来ないものは出来ない。


 焦った隼人は塾で親しかった、ヤンに困った事があると相談していた。だが、最近はもっぱら携帯だけのやり取りになっていた。


 それは優秀なヤンはとっくに医大生になっていたので、接点が無くなっていたからだ。


 そんな2人が何故連絡を取り合う仲なのかというと、隼人はヤンにとっては、金づる。それだけ隼人は気前が良くヤンにとっては金づるとしてなくてはならない存在なのだ。


 だから持ちつ持たれつの間柄なのだ。そんな時に隼人に真剣に頼み込まれた。


「医大に合格出来るだけの能力は俺には無い。だが、開業医の息子なのでどんな事をしても合格しなくてはならない。合格出来る方法を教えてくれ!お金はいくらでも出す」


 そこで台湾の血を引くクォーターのヤンは、台湾から中国に就職したり、嫁入りした親戚も多いので度々中国に帰る事があるので、中国の親戚に消しゴムを模写した液晶画面に、答えが表示される「高技術のカンニングペーパー」を親戚に用意してもらった。


 隼人はヤンのお陰で念願の医学部に見事合格する事が出来たのだったが、世の中そんなに甘くない。


 出来の悪い隼人の化けの皮は直ぐに剥がれてしまい。教授と両親を交えての話し合いが目前に迫っていた。


 そこでまたしてもヤンに相談した。


「ヤン、俺の化けの皮が剥がれてしまった。どうしたらいい?」


「もう…幾らお金をもらっても今度は、もう面倒見切れない」


 困った隼人は、こんな出来の悪い隼人にどういう訳か優しい父の妹菜々枝おばさんに相談した。だが、おっとりした菜々枝おばさんでは、全く話し相手にならない。


 そんな時に、2人の話を小耳に挟んだ長谷川は、そこに割って入って来て、元々義兄の事を煙たく思っていた長谷川は、余程義兄が気に食わないらしく、この時とばかりに長谷川は、到底冗談とも取れない恐ろしい事を口走った。


「ハッハッハッ!いっそのこと家族に消えて貰うってのはどうだい?ハッハッハ」


 隼人はピンと来た。


(俺は両親の事どう思っている?いつも小言ばかりの両親なんか…本当は今まではくすぶっていたが、親に会うと甘えたいとか、愛されたいとか、そんな思いはとっくの昔に無くなっている。また怒られる。小言を言われる。イヤだなぁ、いっそのこと居なくなってくれたら…そんな思いが俺の心の中の8割以上を支配していることに、やっと気付いた。教授からの話しで退学の話が出たら両親は怒り狂うに決まっている。そんな事になったら俺の居場所は完全に無くなってしまう。ああ…やはり消えて貰うしかない)


 こうして両親が眠りに付いたのを見計らって、タバコの吸い殻に火を付けた。そして…ティッシュでつまんで床に落とした。


 隼人は、まさか本当にこんな大火事になるとは、思っても見なかった。


 日頃からのストレスに加え、教授との話し合いの日にちも迫っていた事から、こんなに追い詰めた両親に対する復讐心と教授との話し合いが迫る中、(死んでくれたら)という思いもあり、まさか大事になるとは思わず、放って置いた。


 ちょっとした復讐心で家族全員が焼け死ぬなど、想像もしなかった事。

 


 🔶🔷🔶

 一方のベテラン刑事田中と新人刑事三田のコンビは、アヤが行方不明になった為、家宅捜索を行った。そして…今野という男が定期的にアヤのマンションに訪れていた事実を知った。


 アヤは、大物政治家のパトロン大谷にはヤンの事は一切話していない。だが、運か悪い事に大谷は一度だけヤンとアヤのマンションで会っていた。


 その時は余りのイケメンぶりに、男として嫉妬を覚えた。幾ら水商売のホステスだからといっても、惚れてしまえばそんな事は関係ない。嫉妬の炎が燃え上がったが、アヤがヤンの事をヘア―メイクさんだと言ったので、安心した。


 アヤにすれば、お金を使ってくれるパトロンを失いたくないので、咄嗟にヤンの事をクラブ蘭の専属のヘア―メイクさんだと嘘をついたのだった。

 

 毎回ヘア―を担当して貰う仲なのでクラブですっかり仲良くなり、ホステスさんたちと遊びに行く予定だったのだというので、パトロン大谷は、それ以上は問い詰めようとはしなかった。


 そして…その事実を、刑事に話していた。


「サラサラヘア―のイケメンヘア―メイクさんとアヤのマンションで一度だけパッタリ会ったことはあります。じゃあその男が今野という男ですかね?」


「イヤ?今野という男は、田代総合病院の病院長の息子です」


「じゃ~?オヤジさんアヤがマンションの駐車場から車で消えた男は、いとこの今野だったのですね?だって…いとこだったら、車借りれるから」


「イヤ…コンシェルジュの話では凄いイケメンだったらしいから…別人だと思うが?それでも…ちゃんと調べて見ないと…』


 🔷🔶🔷

 ベテラン刑事田中と新人刑事三田は、新たな情報を入手していた。


「ガウンの男は今野という田代総合病院の病院長の息子だという事が、分かりました」


「嗚呼そうだったのか?田代総合病院の理事長田代隼人の、いとこという事になるな?」


「やはり田代総合病院に、何か秘密が隠されているに違い無いと思います」


 








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