氷の愛

tamaちゃん

第1話 幸せな家族?

(パパとママは成績が落ちると一気に機嫌が悪くなる。だけど…頑張っても出来ないものは出来ない。嗚呼アアああ……どうすればいいんだ?)


 隼人は優秀な弟淳との比較にうんざりしている。


「こんな成績では到底医者にはなれない。弟を見ろ!あんなに優秀なのに…本当にお前はグズな出来損ないだ!」


「隼人あなた本当にやる気あるの?しっかり頑張らないと!全く困った子ね?」

 

 実は隼人は、福岡県福岡市にある田代総合病院の長男として生まれ、行く行くはこの病院を引き継ぐ長男だ。

 


 🔶🔷🔶

 隼人は元々勉強が余り得意ではない。その為二浪を余儀無くされていた。


 だが、全く厄介な事に……。

 その隙に弟の淳は、無事国立大学医学部に合格してしまった。


 またしても両親からの容赦ない小言の数々。


「全く隼人は、脳ミソ腐ってるんじゃないか😤」


「あなた…そうなのよ。この子ね、寝てばかりいるのよ。強く言って下さい!」


「このバカが!!!」


 益々居場所の無くなった隼人は、とうとう消しゴムを模写した、液晶画面に答えが表示される「高技術のカンニングペーパ―」を知り合いから調達する事に成功した。


 こんな代物中々おいそれとは出回ってはいなかったが、そこは人間のやること金の為なら例え火の中水の中「蛇の道はヘビ」とはよく言ったものだ。 

 

 このカンニングが功を奏したのか、見事医学部に合格した隼人。それも私立の雄K大学医学部に見事合格出来た。


 これで今まで散々比較され、ダメ兄の烙印を押されていた隼人だったが、生意気な弟淳も配下に置く事に成功した。こうしてやっと隼人は、順風満帆な大学生活を送り出す事になった。


 だが、そんな小手先の技が通用するほど大学は甘い世界ではない。ある日、教授にバレてしまい呼び出された。


「君は秀才だと思っていたが、勘違いだったようだね?今度両親を交え話し合いたい」


 こうして、数日後両親を交え話し合いが持たれる事となった。


 隼人は日にちが刻一刻と迫る中、またしても悪い連れで中国人のヤンに相談した。中国の受験はまさに戦争そのもの、だからハイテクなカンニングが繰り広げられているのだった。


 

 🔶🔷🔶

 ある夏の日隼人一家は、軽井沢別荘に出掛けた。


「隼人がこんなに優秀だったとは、パパも見る目がなかった。ワッハッハッハッそれに引き換え…淳の成績は頂けない。まぁそれでも…国立医学部に入れただけでも良しとしなきゃなワッハッハッハッ」


「パパ何だよ?それ嫌み?ハッハッハッ」


 淳が嫌みたっぷりでパパに言い返している。

 

 一方の隼人は、刻一刻と迫る話し合いの日にちが気掛かりで、折角の家族の休日にも拘わらす浮かぬ顔。


(ああ…全てバレてしまう)


 この休日は隼人が提案したものだった。


 別荘に到着した一家は楽しい一日を過ごし眠りに着いた。だが、真夜中にその軽井沢の別荘に火の手が上がり、あっという間に燃え尽きた。


 そして…なんと焼け跡から、この家の両親と弟淳が焼死体で見付かった。


 だが、幸い隼人は、生々しい火傷の跡はあったが一命は取りとめていた。


「タバコの不始末が原因では?」との見解だが……?






 

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