人嫌い（コミュ症？）が異世界に行ったら…

第40話

「良かった、治せた」

「凄い…綺麗に治ってる」

『愛し子よ、治してくれたこと、礼を言う』

「愛し子？ …あ、あたしか！いいえ！治って良かった！」

「キリア…、愛し子のことは忘れちゃダメだろ…」

「え？そうなの？別に言いふらす事でもないし…」

『謙虚なのだな…』

「あー、ただ忘れてるだけだし。使命とか無いからね」

『そうなのか…珍しいな』

「珍しいのかは良く分からないけど…。それで何で瀕死になってたの？」

『うっ…』

　あら、なんで目を逸らすのかな？…ヴァイスと同じ匂いがする。

「食べ物に夢中になってる所を不意打ちかなんかで、やられたってとこかな？」

『…』

「ランドさん、この子、ヴァイスと同じ匂いがする」

「俺もそう、思うよ…」

　ランドさん、呆れてんじゃん。伝説って付く、神獣だのなんだのって、マヌケが多いのかな…

「ま、治ったし、何処でも行けるよね？じゃぁ元気でね！」

『まっ、待て待て！私も連れてってくれ』

「うわ、出た。初対面で連れてけ発言」

　ヴァイスもそうだった。こっちの都合は関係ないよねー？

「ヴァイスもそうだったの？」

「うん。ヴァイスは屋台の串肉に釣られてだけど」

「…そう、なんだ」

『キリアと言ったか？私と従魔契約してくれ』

「えー…」

『！？ちゃんと狩りもするぞ！自分の食べる分くらいは確保出来るはず！』

　…どうしようかなぁ。今はヴァイスも居ないんだけど…、勝手に従魔増やしたら怒るかな？

「ヴァイスなら大丈夫じゃない？」

「そうかな…」

『その、ヴァイスとやらは誰だ？』

「キリアの従魔、フェンリルね」

『⁉︎既に従魔が居たのか！しかもフェンリルとは…』

「喧嘩しないなら、いいかな…？」

『…善処しよう』

　え、即答じゃないし、善処なの？…どうしよう。ヴァイス、彼女連れてくるって言ってたしな…。

「キリアの言う事、ちゃんと聞くなら良いんじゃない？」

「え、そういう問題？」

「ヴァイスなら神獣だし、創造神から頼まれてるし？問題ないと思うよ？」

　あーそうだった。忘れてた…。

「ヴァイス、可哀想…」

「だって…」

「まぁ、分かるけどね？分かるけど、覚えててあげないと、拗ねるよ？」

　ですよねー…。

「じゃぁ、自分の食べる物とか、食料調達とかちゃんと手伝ってくれて、ヴァイスと喧嘩しないなら…、一緒にきてもいいかな」

『っ！そうか！キリアとランドの言う事を聞くようにする！喧嘩は、会ってみないと分からないが…。極力しないように努力する』

　まぁ、ヴァイスと会っても無いのに、喧嘩しない！っては言えないか…。

「分かった、よろしくね」

『あぁ！それじゃ名前をくれ！』

「おぉぅ…名前…、ちょっと待って…」

　ネーミングセンスが無いんだけど…、ケット・シーをみると綺麗な藍色の毛並みでグリーンの目をしてる…。

「ウィリデ…」

『ウィリデ…！その名でいいぞ！』

　名前が決まった。ヴァイスのときみたいに、カチリと嵌る感じがした。

「ねぇ、今更だけど、男の子？」