第20話

「キリア、後で話しがあるんだけど」


 そう切り出され、ドキドキする。


「あ、はい。片付けするので、ちょっと待って下さい」

「急がなくていいよ」


 ランドさんが食後のお茶を入れてくれた。


「美味しい…」

「そ?良かった。それで話し、してもいい?」

「あ、はい」


 緊張する。何の話しなんだろ…


「僕、キリアと一緒に冒険者やりたいって話ししたよね?」

 話しの腰を折らないように、頷く。

「元々冒険者やってたんだ。ランクはB。剥奪はされてないから、今も現役なんだよね」


 ほぇ〜… 成人したてなのにBランクって、将来、有望なんじゃない? ギルドにも女性にも。え…そんな人があたしのこと、す、好きって…?


「それでね?僕、竜人と人のハーフなんだ。竜人って唯一、番が現れると甘い香りがするらしいんだよね、キリアと初めて会った時その香りがした」

「えっと…それは確信してるんですか?」

「もちろん。仕事で女性と会う時があっても、そんな香りはしなかった。僕、ハーフだから番なんてって思ってたんだけど、キリアと出会ってそんな考えなくなったんだ」


 それは…なんて答えていいか分からない。あたしには番って良く分からないし…


「番だから、じゃなくて1人の人として。僕は番だから、キリアと一緒に居たいんじゃない。キリアの挙動不審なとこも、危なっかしい所も全部含めて好きなんだ。今すぐに返事が欲しい訳じゃないから。キリアが成人するまで待ってる。それまでに僕を好きになってくれると、嬉しいかな」


 そう話してくれた。 


「あたしには番って言われても、ピンと来ないんです。好きって言われて嬉しくないわけないし… ただ、怖いんですよね。あとで、あれは冗談だったから本気にされると…とか」

「それは絶対ないよ。これだけは言わせて?僕、本気でキリアと恋人になりたい。そして家族に」

「はい…」

「ありがとう。初日からこんな話し、困ると思ったんだけど、キリアがどこか行ってしまいそうで… 今日はゆっくり休んで、おやすみ」

「おやすみなさい…」


 絶対寝れないじゃん。ヴァイスに聞いてもらおう…

「ヴァイス…」

『どうした?あいつか?』

「そうなんだけど…、本気なんだって」

『そうだろうな』

「何か知ってるの?」

『キリアが森に入った時に話した。唯一だと。だから俺はキリアを泣かせたら許さないと言ったやった』

「ヴァイス…、ありがとう。成人まで待ってくれるって言ってたけど…でもまだこっちに来たばっかりだし、自分の好きなように生きてもいいんだもんね…」

『そうだな。キリアらしく生きれば良い。今日はもう寝ろ』

「ありがとう。おやすみ…」


 あたしの危なっかしい所も含めて全部…か。そう、言ってくれるのは嬉しい…かな。



〜〜〜〜〜〜〜


キリアが寝た後


 ヴァイスはのそのそとキリアのテントを出る。

『初日から詰めすぎじゃないのか?』

「ヴァイス…君には分からないよ」

『フンッ、そんなもの分かりたくもないわ。キリアが居なくなったら狂うのか?』

「それは分からないよ…、僕はハーフだからね。でも、キリアにはゆっくりでいい、僕のこと意識してくれれば」

『そうか、キリアの反応を見れば分かってるとは思うが…。もう貴様も寝ろ。俺が起きてる』

「ふふっ。ありがとう、おやすみ」


『…人とは面倒な生き物だ』



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