第30話

 親父さんとの会話を切り上げる。親父さんは巻き込まれて、ここに居ただけだろうし。


 受け付けに行きベルを鳴らす。


 ドタドタ……ガシャン!


 あぁ、そう言えば言ってましたね。


「お、お待たせしました!ご用件をお伺いします」

「先日、Cランクのキリアが来たと思いますが」

「あぁ!はい。依頼、受けてくれるんでしょうか?」

「受けさせませんよ?」

「え?…え?だって冒険者ですよね?依頼をやるのが当たり前じゃないですか!」


 随分と感情的になるんですね。


「依頼の途中だと言われませんでしたか?」

「言われましたけど!それでも冒険者なんだからやるのが当たり前です!」

「じゃぁ貴方が、やれば良いんじゃないんですか?貴方も冒険者、辞めてないですよね」


 人に押し付けて自分は依頼料をくすねて楽してるなんてねぇ…。


「そ、それは!」

「もう結構です。ギルマス不在も公表しない、不正だらけのギルドなど、信用に値しないので。これで失礼」


 後ろでギャーギャー騒いでいるが、無視だ。あんな奴の為に依頼なんて受けられない。

 …キリアは起きたかな…?何か買って行こう…。


『ランド』「あぁ、ヴァイス、昨日は気を遣ってくれてありがとう」

『あ、あぁ…』

「? どうかした?」

『い、いや、エロっぽい顔?し、至福な顔か!』

「なんです?キリアと仲を進められたので、嬉しいだけですけど?」

『あー。ヨカッタナ』

「なんか失礼ですね。所で、今日の夕方、出ます」

『急だな?』


 分かってる癖に聞いてくるなんて…


『貴様も漏れるのな。浮かれているのか?』

「おっと、これは失礼。それは勿論」

『そ、そうか。キリアは動けるのか?』

「動けなくても問題はないよ?」

『あー分かった、分かった。動けないなら俺が乗せる。お前に抱っこされて町を歩かれたら泣くぞ?』


 …それは困りましたね。ヴァイスの言う通りにしましょう。


「なら買い物していきましょうか」

『それは良いだろ。キリアがダンジョンシティで、山ほど買ってたぞ』

「…なら早く帰りましょうか」



『ただいまー』

「キリア…?」

「すー…すー…」

『寝てるな?』

「寝てますね…」

『お前…』


 そんな目で見られても…、タガが外れたんですよ。仕方ないよね?あ、一回は起きたのか。ご飯食べてる。


「起こさないと夜、寝れなくなりますかね?」

『どうだろうな。お前なら寝かせられるだろ』

「ヴァイス…今日、見張り…」

『キリアに聞け!』


 しょんぼりしながらキリアを起こす。キリアが起きていたら、「イケメンがしょんぼりしてもイケメンだっ!」とか言ってただろう…。


「んぁ?あと5分…」

「そう、起きないなら3回程…」

「っ!起きます!」

「残念…」

「んっ!ふっ…!」

「はぁ…今は我慢する」

『おい。俺のこと忘れてないか?』


 はっ!ヴァイスがいる!え!?今の見られたの!?や、やだぁ〜!

 ボフッとベッドに潜る…。


「キリア、そのままでもいいけど、今日の夕方には町、出るよ」

「え!?夕方に?」

『そうだ。それで、キリアは立てるのか?』

「おっふ…」


 ベッドから出てみた。…けどペタンと座り込んでしまった…。


「立てない…みたい?」

 苦笑いしながら言う…。恥ずかしい…。


『ランド… 立てないなら、俺が乗せていくからな』

「あ、分かった」

「…残念。もう少ししたら出るから身支度する?」

「あ、お風呂入りたいです」

「立てないのに?あ、一緒に入ろうか。そうだね、そうしよう」

「あ、あれ?」

『キリア、ランドは嬉しいらしい。しばらく、世話、してもらえ』

「え?…世話?昨日からしてもらってるけど…?」

『今日、明日は無理だぞ?』

「ふーん…」


 なんでなんだろ?夕方、町出るのに…。


「キリア、準備出来たからお風呂、行くよ?」

「ア、ハイ…」

「ヴァイス、寝てても良いですよ?」

『あ、あぁそうする。キリア、頑張れ?』

「え?え、何で?」

「何でも無いよ?じゃ行くよ?」


 お風呂に連こ…コホン、抱っこで連れてってもらって、頭だの、か、身体だの洗ってもらったんだけど…立てないのに、更に立てなくされちゃって…

 あたしの身体、改造されたのかってくらい、イキやすくって困る…。


 お風呂から出た所で意識を失った…


『ランド…』


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