第13話

 ギルマスが呟いてることなんて、知らずに解体場にきた。


「こんにちはー…」

 自分から声掛けるなんて、お腹が痛くなりそうな程、嫌だわ…


「はーい。キリアちゃんじゃない。何か持ってきてくれたのかしら?」

「あ、はい。森へ行ったのでボアを。あとはこの間のウルフですかね」


 話しながらドサドサと出して行く。


「今回も綺麗に仕留められてるわねぇ。じゃあこの木札持って待っててね」

「はーい」


 お腹空いたから酒場兼、食堂でご飯食べようかな…?あ、その前にヴァイスに従魔の印が欲しいかも。アリアさんに聞いてみよ!


「アリアさん、従魔の印ってギルドにあります?」

「あるわよ。どのタイプがいいかしら?」


 首輪タイプ、リボンタイプ、腕輪タイプが出てきた。

「うーん…どれがいいかなぁ」

『俺はコレが良いな』


 と、ヴァイスが指したのは腕につけるタイプだった。確かに首だと苦しそうだしねぇ。


「ヴァイスが良いならそれで!」

「はい、分かりました。カード、預かってたので、お返ししますね。マーシーさんから、ボアのお肉はどうするかってきてるけど?」

「あ、ボアのお肉、半分欲しいです」

「分かりました。今日の報酬は現金にしますか?」

「カードにお願いします」

「かしこまりした。では、またお願いします」

 

 ギルドを出て、熊の妖精にきた。従魔が泊まれるか聞かないとね! で、泊まれるんだけど、追加で銀貨6枚。必要経費だよねー。

 宿で夜ご飯を食べて、体を綺麗にしてベッドに入るとあっという間に眠りについた。



〜〜〜〜〜〜

ヴァイス視点


 もう何百年と退屈している。何か変化が欲しい。そう思い、今日も今日とて森をうろつく。今日は泉の辺りに行ってみるか…


 泉に近づくと、人が居た。 何か食っている…俺も欲しい。

 食い物に釣られ寄っていくが… 声が聞こえていないのか、振り向いたものの反応はない。頭をつついてみた。

 こけそうになりながらも、体勢を整えてこちらを見上げた。…何故、そんなにキラッキラな目で見てるんだ? 嫌な予感がして毛が逆立ってきた…


 こやつ… 創造神の加護をもってるな。 付いていくと言えば図々しいと言われる… ついて行きたいのに…。

 小さくなれと言われ、その通りにしたら抱きつかれ…

 モフモフ癒し要員とはなんだ?一緒に居れば分かるか。


 俺の退屈な日は今日で終わりだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜


ん〜良く寝た!今日の予定はどうしようかなぁと考えながら身支度を済ます。 あ、ブラシ買いに行かなきゃ!


「おはようございます」

「おはよう。ご飯持ってくるわね」

「ありがとうございます」


『今日は何するんだ?』

「今日は、ヴァイスのブラシ買いに行って、ダンジョンに行ってみたいかなぁ」

『ダンジョンは面白いのか?』

「面白い、面白くないで言えば面白くないと思うけど…」

『なんだ、つまらん』


 ヴァイス、可愛いと思ったらたまに偉そうに喋る。それが面白い。


「まぁまぁ、行ってみようよ。あたしも行ったことないし」

『初めてか!』

「まずはブラシ買ってから、ギルドねー」

『分かったぞ!』


 ブンブン尻尾を振って…可愛い…


「お待たせ」

「ありがとうございます。あの、従魔用の、ブラシって何処で売ってますか?」

「ブラシならランドさんのお店にあるわよ?」

「そ、そうなんですね。後で行ってみます」


 1人と1匹で、ランドさんの商会へ向かう。ちょっと迷った…


「いらっしゃいませ。今日はどのような物をお探しですか?」

「あ…従魔用のブラシが欲しくて」

「それでしたらこちらに」


 連れて行かれたところは、本当にブラシだけの所だった。沢山のブラシが並んでいた。どれがいいか持ってみて、ちょっと大きめのブラシにした。これならきっとヴァイスも気にいると思う…はずだ。


「ありがとうございました」


 お店の人に見送られ、今度はギルドへ。 入ると相変わらず視線がうるさい。何で見られてんのかな。イライラするけど、アリアさんと話すまで我慢だ! ちっ


「キリアちゃん、おはよう」

「おはようございます。今日はダンジョンに入れるのか聞きに来ましたー」  

「そうね、入れるわよ?ただし10階層までね」

「そうなんですね。じゃあ今日はダンジョン行ってきます」

「分かりました。カードを下さい。…お返しします。ダンジョンから出たらギルドに来てくださいね」

「はい。じゃ、行ってきまーす」

「お気を付けて」


 キリアたちがギルドを出ると、コソコソと話す者がいる。

「ダンジョンだとよ。接触してみるか?」

「いや、俺は遠慮しとくわ。ランドが気にかけてんだろ?死にたくないし」


 なんとも物騒な話だ。

「最近は一緒に居ないから大丈夫じゃないか?」

「行くなら1人で行けよ」


「接触してどうするんです?」


 急に周りが寒くなる。声がした方を見ると、ランドが居た。


「ひっ…な、なんでもねぇよ!」

「そうですか…」


 ランドに話しかけられた冒険者は、そそくさとギルドを出て行った。

 

 今日も冒険者ギルドは平和…である。

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