『戦闘魔道士』は作られる
幼い子達が、常に戦闘し続けて、倒れ動かなくなれば棄てられる。
「こいつも使い物にならんな」
ドサッと一人の子どもが投げられる。戦闘でボロボロになった子どもがまた一人。キャア!と悲鳴をあげた私は大人に睨みつけられた。
「アリシア!こっちへ!」
察してすぐにヴァレリウスが私を庇うように手を繋いで、部屋の隅へ引っ張っていく。それが面白くなかったのか、ヴァレリウス!と名前を呼ばれた。黒髪の小柄な少年はキッと相手を睨みつけた。
「次の訓練はおまえだ!」
「ヴァンお兄ちゃん!」
心配で私は名を呼び、ギュッとヴァンお兄ちゃんの服の裾を掴んだ。フッと優しい笑みを浮かべ、私に小さく大丈夫だよと囁くような声で言った。
「早く来い!」
ヴァンお兄ちゃんは連れられて行ってしまう。残された私は震えながら部屋の片隅で他の子どもたちとじっとしているしかなかった。
時々、私も訓練に参加したが、そんな時は必ずヴァンお兄ちゃんが居てくれて、守るように庇ってくれた。
「なんで、私のことを守ってくれるの?」
お兄ちゃんと呼んでいるけれど、血は繋がっていない。そう尋ねると、彼の黒い目にキラリとした光が帯びた。
「僕のことをアリシアが助けてくれたから……」
「えっ?なんにもしてないわ」
「覚えていないなら、それで良いんだ」
そう言って、私の頭を慈しむように撫でた。
彼が庇ってくれたが、それでも訓練は厳しく、痛みを伴うものだった。
「商品にならない
焼け付くような腕の痛みに堪えながら私は立ち上がる。折れているかもしれない。治癒の魔法を施しながら走る。訓練の相手の大人は容赦が無い。背中から掴まれる気配を感じて、私は思わず魔法を放つ!詠唱無しで行うことは命を削るほどの魔力を使うとわかっていながらもしなければ死ぬ。
大人が倒れた。その体は燃えているが、すぐに自分で消している。まあまあの反応だなと冷静に言われた。……助かった。しかし酷使した体は動かない。
また部屋に戻される。回復すればまた始まる訓練。
「アリシア、大丈夫かい?」
冷たい小さな濡れた布を額に当てられる。ヴァンお兄ちゃんが心配そうに覗き込んでいた。力を無理矢理使って寝込んだ私を介抱してくれていたようだ。
ヴァンお兄ちゃんだけはみんなとは違った。彼は強く、時々多少怪我はしていたが、私達のように瀕死になる姿は見たことがなかった。
そのうち、大人達はヴァレリウスは『最高傑作』と言い出した。
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