現地調達のバジリスク!
バジリスクという魔物がどこに生息するのか?まずそこから始まるくらいの物を王子は持って来いと言う。石の流通を把握はしてるものの、バジリスクの目が手に入れられることはまずない。
「現地で調達か……一番めんどくさいパターンを頼まれちゃったわー」
船に乗り、うーむと考える。天気が良いので、デッキで過ごしていた。潮風が心地良い。青の海にキラキラと光が反射している。
商工会のツテで商船に乗せてもらい、移動している。大きな切り立つ岩場の山が見えてきた。バジリスクが数多く居るという山。
山に入る前にバジリスクの猟師を雇おうと村へ寄る。流石に、私も突撃するほどヤンチャじゃない。
「バジリスクか……そりゃ、大物狙いでいくもんだね。命が惜しくないのかい?まぁ、ホントにとれりゃ、一攫千金だけどよー」
現地の猟師すら躊躇う。しかしこの人達は現地のプロなのだ!私よりバジリスクのことを知り尽くしている。
「命が惜しいから、腕の良い猟師さんを探しているのよ」
「うーむ……罠を仕掛けるまでは手伝える。だが、仕留めるのは無理だ」
よっぽど金に困ってるときじゃなければしたくないというのが、猟師達の話だった。
「いいわ。じゃあ、罠を張ってくれる?そこまでの報酬は払うわ。その先は私の仕事ということで……」
「え!?お嬢さんがやるのかい!?」
「猛毒のバジリスクだぞ!?」
「なんかお金に困ってるのかい!?」
口々に猟師達が言うが、S級バイヤーの証を見せて、ニッコリと安心させる営業スマイル攻撃をした。
「大丈夫です!S級バイヤーアリシア=ルイス、手に入れられないものはありません!」
アリシア……なんかその名前聞いたことあるぞとざわつきだす。知名度がそこそこあるおかげで、信頼してもらえることもある。……しかしなんか聞いたことある程度の知名度らしいけど。
猟師さん達は岩山に罠を仕掛けてくれた。私は日に三度、その罠を見廻る。その三日後だった。
「いた!」
罠にかかって、暴れているバジリスクがいた。さすが地元の猟師さん!完璧な罠!しかし本当の問題はここからだ。尻尾は蛇、頭はニワトリのようで口から出す息は猛毒。チャキッと私は帯剣していた細剣を抜いた
ただの剣と思うなかれ……魔法剣で力を倍増させてくれる。剣を目の前にかざし、術を紡ぐ。
ゴオッとバジリスクが燃えだす。業火に焼き尽くされていく。口から吐き出される猛毒が怖いから、近寄らなければ良いだけ。後は燃え尽きるまで待てば良いだけ。
どのくらいかかるかしら?私は剣をおさめて、時間を待つ。
……そう油断していた。バジリスクが一体しかいないなんてことはなかった。ここはバジリスクの巣だったのに。
ギャオ!という声に気づいた時には遅かった。私の背後に狙いを定めて爪を振り上げるバジリスク。
しまった!と思ったが、体のほうが素早く反応する。細剣が瞬時に抜かれて爪を受け止める。キンッという音と共にバジリスクを弾く。また飛びかかってきた。私は身をよじって避け、首の所へ細剣を突き刺した。青い血が流れ、暴れるバジリスク。
驚いたものの、戦闘訓練を受けてきた私は頭より体が動く。術を素早く紡ぐ。もう一体燃やす!ゴオッと炎に包まれると同時にバジリスクが口を開いた。マズイ!詠唱中で私は動けなかった。
緑色の霧雨のような息がかかった。息を止め、バッと間合いを素早くとったが……少し吸い込んだか?
二体のバジリスクが燃える。が、私もその場に膝をついてしまう。毒を少し吸い込んだようだ。肺が焼けるように熱い。
ハアハアと息があがる。解毒の術をかけようとするが、苦しくて、うまく集中できない。汗が出てくる。痛みだした胸を抑える。
「全然ダメだな。なにやってんだよ」
そう言葉がふってきた。同時に解毒の術が施されていく。ハッとして私は顔を上げた。痛みが薄れていく。
「ヴァン………なぜここに?」
黒服、黒髪の青年が立ち、私を見下ろしていた。ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、表情は心配そうな色がかすかに滲んでいた。その顔を見ると昔のヴァンの面影を思いだしてしまうから、そんな顔をしないでほしいと思わず目をそらしてしまったのだった。
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