絶対に通りすがりの者です
「バカか!?バカなのか!?第一王子は性格が悪いんだ!おまえに手に入れられない物を言っていたんだぞ!気づかなかったのかよ!?」
心配そうだったヴァンは一瞬だった。すぐにバカ呼ばわりされてなじられている私である。
「ま、まぁ……なんとか、手に入れられたわよ」
燃え尽くしたバジリスクの残骸から目を取り出す。なんと思いがけず4個も!4個か……とニンマリした。
「フフフ。これ残り2個はどこに流通させようかしら〜。王子には2個しかいらないわよねぇ〜」
「待て待て?さっき死にかけていたやつとは思えないセリフだな!?」
「このくらいの危険はつきものよ」
「……なんでそんなに必至に商売してんだよ」
ヴァンがそう尋ねるが、私はフッと笑って答えずにおいた。今のヴァンにはまだ言えない。だって言っても信用してもらえないもの。
「とりあえず……助けてくれてありがとう。でもなぜいたの?通りすがりの者ですってレベルじゃないわよね?」
「通りすがりの者だっ!偶然だ!」
え!?あ、そう……そうきたかー。
「ここで?こんな田舎のなかなか人が通らないバジリスクの巣の岩山で?」
「絶対に通りすがりなんだっ!」
開き直った者勝ちらしい。ヴァンは認めない強気の姿勢を見せる。
「おまえ、
いや、ヴァンや他の
私が一緒に施設に居たことを覚えてないみたいね……私はやはりヴァンが忘れてしまっていることを確信して、悲しくなり目を伏せる。
「腕の焼印を押される痛みに耐えてまで、偽装するわけないでしょう」
一瞬静かになる。ヴァンがそうだなと自分の腕を無意識に服の上から触れている。子どもの頃に訓練施設に入るときにつけられた跡は生涯残り続ける。まるで呪いのように。
「どこにも属さない
「心配してくれてるの?」
冷たさがあると思っていたのに、こっそり様子を見に来てくれてるし、心配してくれている。なぜ?と疑問を口にだそうとすると、先にヴァンが言う。
「心配なんてしてない!あの王子に気をつけろよな。ひと癖もふた癖もあるやつだ。今回はたまたま仕事のついでに通りかかっただけだからな!」
まだ通りすがりの者だと装うヴァン……。
「どこに行くの?」
「言えるわけねーだろ!?
「私も一緒に……」
「くんな!……ったく……バジリスクの目を手に入れたからって、調子にのるなよ!おまえくらいの腕前の
ギロッと黒い目が絶対零度の冷たさを放ち、突き放された。私にさっさと帰れ!と言って去っていく。
冷たく言う割に、様子を見に来ていたり、助けてくれたりヴァンはよくわからない。まだ心の距離はあるけど、ほんの少しだけ、近づいたような……近づいてきてくれたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます