消えた場所には消した者がいる
石ころが転がるばかりで、細い木が一本だけたってる。賑やかな街からは大分外れている。寂しい場所。
「ここが……私やヴァンがいた施設の跡地なの!?何もないなんて……」
ヴァンの記憶を戻すヒントはないかと来てみたけれど……。
「なんで来たかったんだ?こんなとこ良い思い出なんて1つもないじゃないか」
顔をしかめているヴァン。
「確かにこれじゃー、なーんにもないからどうしようもないよねー」
ロキが軽い口調で言う。
ヴァンの記憶とロキの調査で場所を突き止めたのに……これである。私は無駄足だったわーとガックリする。
「先に言えよな。オレはここに何もないことを知っていたぞ」
「えっ?なんで?」
「なんでって、オレがここを襲撃して更地にしといたからだけど?」
『はあ!?』
私と使い魔ロキの声がハモる。どういうこと!?ヴァンは特になんでもないという風に淡々と説明をしだした。
「オレの二番目の主人となったやつが、
「え!?いや……そんな軽いものじゃなかったでしょ!?いったい何人の
「まあ、多少オレもダメージはあったけど、壊滅させることができた」
ヴァンは言葉だけで語っているから簡単そうにいうけれど、それは壮絶なものだっただろう。炎の中に立っている漆黒のヴァンを想像する。
「アリシア、そんな深く考えるなよ。オレはここをいずれ破壊したかった。不幸な子供を増やすばかりの施設を残したくはなかった。嫌ではない任務だった」
「そっか……」
私は石ころを蹴った。コロコロ転がる石を見て思う。もうやめておこうかな。こうして、過去を探れば、必ずヴァンの過去に触れることになる。良い思い出ばかりではない彼の過去をわざわざ思い出させてなにになるだろう?傷つけるだけになるんじゃないの?
それに私を思い出しても思い出さなくても、今のヴァンも私は……と、チラッと顔を見た。ん?と首を傾げるヴァン。
「よし!いきましょう。お腹減っちゃったし、何か街で食べましょう」
私はクルッと街の方を向く。断ち切るように私は元気よく歩き出す。
「そうしようぜー……ロキ、なにしてんだ?ボーッとして?」
「えっ?いや……すごいなぁと思って……ヴァンの力ってどのくらいなんだよーっ!?」
さあ?とヴァンは肩をすくめて笑った。
「だけど、オレより力のあるやつはいると思うぞ。一度小さい頃に聞いたことがあるんだ」
「ヴァンより強い人!?そんなのいるわけないでしょ!?」
「だよなぁ?オレも今となっては、それはうろ覚えでさ……研究員達が噂話のように言っていたのが……うーん、見たことねーし、夢か?」
ロキがゾッとするよ!と叫ぶ。
「ヴァンだけでもすごいのに、そんなやつが存在するなんて、一対一で戦ったら国が壊滅しちゃうよ!そんなのって……」
『化け物』だよな?そうヴァンは自嘲気味に言ってから、ほら、さっさと行こうぜと言う。
「私はヴァンのこと化け物なんて、思わないわよ。ちゃんと力の制御をしてるし、人の感情を持ってるって知ってるもの」
ヴァンは私の言葉に、少しだけ上を向いて、何か考える仕草をし、それから私の隣を無言で歩く。その足取りは軽かった。
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