天才戦闘魔道士の力
褐色の肌でエメラルドのような瞳を持つ男、短髪の赤毛男、もう一人は小柄な女性だった。無表情でこちらを見ている。
「何者だ?サンドワームを倒せる一般人などいない」
「やはりヴァレリウスと共にいた女は侮れない」
「これではおびき寄せられない」
私をここに連れてきたのは
私は身を翻して逃げようとした。一人の
「逃げられると思うのか?」
ビュンと音がして、黒い鞭のようなものが足首に絡みつき、私は転ぶ。新しいショーに観客が沸き立つ。
「少しくらい抵抗しないと面白くないわね。ヴァレリウスは来ないの?」
「見捨てられたか?」
所詮、その程度の仲だったってこと?と、ク女性の
「
私がそう叫ぶが、、サソリの
剣を一人が振り上げた。
私はニヤリと笑った。
「油断しすぎね」
その声と同時に手を前に出し、同時に力ある言葉を発動させた。
「なんだと!?逃げながら術を作っていたのか!?」
油断していた
「この女!よくも!」
油断してた三人だったが、さすが本物の戦闘魔道士は違った。私の術を手の一振りで払うと炎は霧散した。まるで小さい子供が作った魔法だと言わんばかりに……。
時間稼ぎにまったくならなかった!
怒った赤毛の男に手を伸ばされて、グッと首を掴まれる。ゲホッと私は息ができなくなる。
終わってしまう!?ここで!?ヴァンの未来も変えてないのに?
バキッと私を掴んでいた
「おいおい……
バサリと一羽のカラスのように漆黒の男が私の横に舞い降りた。
『ヴァレリウス!!』
3人の
「奴隷商に
「し、失礼ねっ!!」
マヌケとか思われていたらしい。さっき細剣を投げてくれたのはやっぱりヴァンだったのね……助けに来るの、遅くない?観客になっていたわけ!?なんでもっと早く来ないのよ!?とか色々言いたかったが、ゲホッと咳が出て、うまく話せなかったので、後から絶対に問い詰めようと思った。
「ヴァレリウス、我らが主は、おまえが以前我が国でしたことは許すと言っている」
「その代わり、仕えよ……と」
「断れば、今から総攻撃をおまえとそこの娘にかける」
ハハッとヴァンはあちらの要望を鼻で笑い飛ばす。そして絶対零度の冷たい目をした。じっとしていても、汗をかくほど暑いはずなのに気温がグッと下がった気がした。
「オレを脅してるつもりか?囚えたいなら、もっといい策を考えろよとおまえらの主に言え!アリシア!こっちへこい!」
ヴァレリウス!と相手が叫ぶように名前を言った瞬間、ヴァンは私を掴み、ひき寄せて、右手を地面についた。ドンッという破壊音と共に地面が割れる。その隙間から黒い煙が出てきた。足元が揺れて、相手は体勢を崩す。
「誰と戦うつもりなのか教えやるよ!」
そう言ったヴァンは私の体をギュッと抱き寄せて、力を入れた。これは……幼い頃と似ていた。こうやって、よく庇ってくれていた。
「以前も……こんなことあったような?」
ヴァンがふとそんな言葉を口にする。私はハッとして顔を見ると、視線がぶつかる。もしかして思い出したの?
「ヴァン、ここは逃げましょう」
え?と不満げなヴァン。私は逃げるわよともう一度言う。仕方ないなと肩をすくめるヴァン。
サソリの
パチンッとヴァンは術の詠唱するなく、指を鳴らした。ゴゴゴと地響き。
『えっ!?』
その場にいた全員が間の抜けた声をあげた。ヴァンは楽しげにアハハハッと笑う。
砂のゴーレム!?人型に変化していく。巨大なゴーレムができあがる。ゴーレムは壁を殴る。コロシアムの一角がガラガラと崩れた。
他の奴隷たちにヴァンが、逃げるなら今だぞと声をかける。
砂のゴーレムはブンッと腕を回すとコロシアムの観客席に向かって拳を振り下ろした。御簾の中にいた偉そうな人の席が破壊される!と思ったが、
……が、まるでゴムのように弾かれている。ゴーレムは明らかに先程のサンドワームよりも強い……ヴァンの笑いながら、たいしたことなさげに生み出した物は強い力を持っていた。
これが天才
「面白いから見物していたいけど、アリシア、逃げるんだろ?行くぞ!」
私とヴァンはゴーレムが開けた穴から逃げ出した。ゴーレムは楽しそうなヴァンに呼応するように、まだイキイキと暴れている。
逃げろ!と他の観客たちも我先に逃げ出し、場は混乱していた。その人々に紛れて逃げる。私の手をひいて逃げるヴァンは昔の彼を思い出させる。
もしかして思い出した?やっぱり覚えてる?私は逃げながらもヴァンから目が離せなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます