たぶん本物?本物だよね?
私はバイヤーとしての目利きは優れている……と、思う。
商品の良し悪し、本物と偽物を見分ける力がある!人とのコミニュケーション能力もさほど悪くはないと思うのよね。
「あのー……ほんとにヴァンお兄ちゃんなの?」
「勝手に兄と呼ぶな!オレはおまえを知らない!」
「アリシアって名前を覚えてない?」
「まったく覚えてない!誰だよ!?」
知らない……か。ヴァンお兄ちゃんなら、きっと私のことはわかるわよね。
「でも似てるのよね。名前も力もその黒髪黒目の魔道士……でもちょっと目つきも言葉遣いも悪くなって悪人的な感じが、違うわね。ヴァンお兄ちゃんは天使のようだったし……むしろ正反対だわ」
私の目利きで見抜けない物は無い!と言いたいところだったが、やや自信を失くす。
「ちょっと待てよ!?助けたのに、印象が悪すぎだろう!?………はぁ……ったく………腹減った……」
勢いよく言った彼だったが、いきなりクタッと座り込む。
「あ!そうだわ。魔力を使ったものね。お礼をかねて、私が美味しい物を作ってあげるわ!」
「えっ……いや、急ぐし……」
「すぐできるわ!」
私はテキパキと野営用のキッチン作りをする。石を集めて適当な枝を用意する。その上に網を置いた。
遠巻きに私とヴァンお兄ちゃんのやりとりを見守っていた騎士団の人達が見物しに、恐る恐る近寄ってきた。
スッスッとベーコンの塊にナイフを入れる。さっき採ってきたばかりのとれたてキノコも網にのせて焼いていく。ベーコンのジュージューと焼ける音と香ばしい香りときのこの良い香りと混ざり合い、美味しい匂いが周囲に煙とともにフワフワ漂う。カバンからパンを出して切り込みをスッと縦にいれて、ベーコンときのこを挟む。完成!即席サンドイッチ!
「急いだから、大したものできなかったけど、どうぞ」
ヴァンお兄ちゃんは一口食べてみて、キラリと目を輝かせる。目つきが悪かった目が見開かれる。
「う、うまい!なんだ!?このキノコの香り!そしてベーコンの脂との相性は完璧だ」
「そうでしょう!?そのベーコンも私のお気に入りなのよ!」
あっという間に食べてしまった。最後にキノコの残りでコンソメスープを作ると満足そうに飲んでいる……騎士団の人達の分も作ったのに、一人で食べちゃった。私のリュックの中身の備蓄も底をついた。どんだけ食べるのよ……。
「隊長〜。ひどいです」
「めちゃくちゃ良い匂いだった……食べたかった」
悲しそうに言う騎士達にヴァンお兄ちゃんは仕方ねーだろ!魔法は腹が減る!と言うと、動きも軽やかになり、さっと馬に乗る。
「ヴァンお兄ちゃん、行っちゃうの?」
「……だから、そのお兄ちゃんはやめろ!ヴァンで良いから!せめてヴァンにしてくれ!」
食べ物で懐柔されたのか、ちょっと最初より態度が和らいでる気がした。………気がするだけかも。
「今、どこにいるの?」
「この国の騎士団に飼われてる」
飼われてるか……その表現、
「もう会うことはないだろ。じゃあな!」
身を翻して、騎士たちと共に去っていった。この国の騎士団に入ってるのね。なるほど。騎士団なら、この国の王都に住んでいるってことね。私はパサッと地図を広げて、彼がいる場所を確認したのだった。
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