6年ぶりの再会
今回の旅もなかなか良い掘り出し物があったわーとホクホクしながら、旅路を急ぐ。今日は天候も良いし、歩いて移動している。
でも確か、この辺にサラマンダーが出るとか言われたけど?運が良いのかしら?
「運も味方するなんて、やっぱり私は最強で天才バイヤーね!フフフ」
……などど、調子にのると、たいていフラグは立つ。木々が多く、見通しの悪い道に来た。激しい人の声が聞こえる。馬の蹄の音。
メキメキメキと木々がなぎ倒されて、道になだれ込むように、炎を身に纏った、巨大な赤いトカゲが現れた。草木が燃えて、焦げる匂い。
「サラ………」
サラマンダー!と叫ぼうとした瞬間、黒色の影のような馬を操った男と、栗毛の馬に乗った騎士たちが現れた。
あっという間にサラマンダーを囲う。
「なんでこんなところに女がいるんた!?」
「危ないぞ!」
騎士団らしく、青いマントと紋章入りの鎧をつけている。
「お前らも邪魔だ。さがってろ」
そう冷たく黒馬に乗った男に言い放たれて、文句を言いたそうな騎士団だったが、やめておけ!
「そこの女も………」
黒髪、黒目の青年は私を見て、言葉を止めた。私も目を合わせ、顔をみた。まるで時間が止まったような瞬間。
思わず私は名を呼んだ。
「ヴァンお兄ちゃん!?」
『ヴァンお兄ちゃんーーーー!?』
叫ぶ騎士団の人達。な、なんだ!?兄と妹なのか!?と浮足立つ。名を呼ばれた黒髪の青年はチッと舌打ちする。
「それどころじゃねーな。さっさと片付けるか」
サラマンダーが熱い炎を吐き出しかける。口の奥に火の玉が見えた!ざわりと青年の周囲の空気が変わる。膨大な魔力が集まっている。
来る!
バリバリバリという音と共に冷気があたりを包み込む。炎を吐き出しかけた姿のまま、目の前のサラマンダーは凍りついた。ついでに…周囲の木々も凍った。
さすがだ。たった一撃の魔法攻撃で終わった。
………ん?終わった?
「ああああ!!ヴァンお兄ちゃん!なんてことすんのよおおおおお!キノコ!キノコどーしてくれるのよ!冷凍キノコになるーーっ!森を破壊しないでええええ!」
「そのヴァンお兄ちゃんっていうのはやめろ!おまえの兄じゃない!っていうか、キノコってなんだよ!?この状況で、キノコの話のほうが大事なことなのか!?」
「これから売り出そうとしてるキノコなのよ!
「はあ!?クソ生意気な女だな!助けてくれてありがとうだろ!?礼を言えっ!しかも
わかるわよっ!私は右腕をめくって見せる。そこには
息を呑むヴァレリウス……のような気がしたけど、私の知ってる優しいヴァンお兄ちゃんはこんな性格じゃなかったわ。めちゃくちゃ性格悪そうな人じゃない!?別人かしら?容貌は似てるんだけどなぁ。
彼は動揺しているのか、言葉に詰まっている。
ヴァレリウスなら、私のことを覚えているだろうし、やっぱり別人?と思ったとき、騎士団の一人が言った。
「ヴァレリウス隊長、どうされますか?」
えええええ!?
私は再会を喜ぶべきなのか、彼の変貌ぶりを嘆くべきなのか……悩んだ。
思い浮かべていた、お兄ちゃーん!と駆け寄って抱き合う感動の美しい涙の再会シーンはどうやら妄想の一つとして、今、この瞬間消えた。
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