世界商工会

 キノコをスーパーマーケットに卸したり在庫を見たりする仕事をこなしてから、目指したのはもちろん、ヴァンのいる国だった。


 ヴァンのいるラジャスター王国の王都は人の出入りが多い。ただ王都にいても、会う確率は少ない。ならば、こちらから会いに行くまで!騎士団と行動を共にしていたから、王宮にいるはずだ。


 私は世界商工会に属している。その支部へと出向く。S級バイヤーの証である金の腕輪を見せる。そして王宮への出入りを許可して貰うための申請を出す。


「こんなに若いお嬢さんがS級バイヤー!?いや……でも聞いたことがあるぞ!」


 商人たちの集う商工会がざわつく。


「アリシア=ルイスといえば、あの希少な幻の塩や黄金バター、竜王の肉と言われる海老などを市場に出回らせた!?」


「食材だけでなく、今やご婦人方で使ってない者はいないという滑らかな布地や冬でも暖かい鳥の羽の布団に料理人に絶大な信頼を置かれている包丁!」


 そう!この賛辞を聞きたかったのよ!私はアリシア=ルイス!!最強天才バイヤー!!


 ………なんて、調子にのってる場合ではない。スッと我に返る。


「この国の王様にお目通りは敵わないかしら?ラジャスター王国はわりと気楽に商人が出入りできるって聞いているんだけど?」


 そうだなぁと商工会のラジャスター王国の支部長は髭を撫でつける。


「おまえさんほどのバイヤーなら、王宮に出入りを許されるだろう。新しい物好きや珍しい物好きな王族が多いからな!」

 

 申請を出しておくと言ってくれる。世界商工会に所属していると、色々優遇してくれるが、そのかわり、商工会からの依頼も受けなければならないのがルールだ。たまに私も依頼を受ける。


「しばらく、この国に留まるのかい?」


「わからないわ。すべて時とお金と物の流れ次第よ」


 私の答えにアッハッハ!と笑い、確かに!と商人達は言った。

 

 一箇所にとどまらず、新しい物や噂の物を求めて旅を続ける。それがバイヤー。私にはスーパーマーケット『ダイキチ』のためと、もう一つの大切な目的があった。


 離れ離れになってしまったヴァレリウスを探していた。ずっと……あの日から。

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