スーパーマーケット『ダイキチ』
「いつもニコニコ〜♪みんなの街に美味しいものを届けますぅ〜♪今日のご飯はダイキチで買おう!ニコニコスーパーマーケット!ダ・イ・キ・チ〜♪」
馴染みのある歌が流れている店内。帰ってきた。エステラ王国の王都が本店のスーパーマーケット『ダイキチ』が私の家だ。
「アリシア!おかえり!」
明るく声を掛けてくれるのは優しそうなふくよかな女性だった。
「おう!無事だったか!?」
品物を並べながら、ガタイの良い、茶色い目をした人の良さそうな男性。
この二人が私を拾ってくれた。かけがえのない恩人である。
「ただいま!今回も美味しいものを手に入れたわ。これで、さらにスーパーマーケット『ダイキチ』の名を広められるわ」
「やれやれ……この娘は……もうそんなことよりゆっくりと一緒に商売してくれてればいいんだよ」
「もう十分すぎるくらいだぞ!家にいたらどうだ?」
ルイス夫妻はそう優しく心配そうにそう言ってくれる。スーパーマーケットに卸すために世界各地の珍しく新しい物を探す旅はいつしか、私を最強バイヤーにしていた。
スーパーマーケット『ダイキチ』。支店も増えてきたし、国内で知らない人はいない、ちょっとした有名なお店になっている。
私を普通の娘のように育ててくれた二人には本当に感謝しかない。普通の家庭とは、どんなものなのか教えてくれた。
「やあ!アリシア!待っていたよ。危ないことしなかっただろうね?」
ニッコリと笑って、スーパーの奥から商品の箱を抱えて出てきたのはカイルお兄ちゃんだった。もちろん実の兄ではないけど、ルイス夫妻に拾われた私が家に来たときから、妹として優しく接してくれてる。メガネをかけ、茶褐色の髪をした青年で、人当たりも良くて、買い物に来るおばちゃんたちからの人気者だ。
「いつも通りよ!かすり傷一つすらないわ」
「良かったよ。今夜は母さんがアリシアの好物を作ってくれるって言ってたよ」
「ほんと!?嬉しい!」
私の嬉しい顔を見て、カイルお兄ちゃんは困ったように笑う。
「ずっといればいいのに……また行っちゃうんだろ?」
「物が私を呼んでいるんだもの。でもちゃんと帰る場所があるから旅に出れるのよ。私は幸せよ」
「毎回、そう言うけど、待ってる方も心配なんだよ」
エヘヘへと私は笑ってごまかす。でも幸せなのは本当なの。優しい家族がいて、故郷があることの幸せ……。
でも私は幸せを感じるたびにヴァレリウスを思い出すのだ。自分を犠牲にして私を普通の世界へと解き放ち、自由にしてくれた彼を。
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