落ちこぼれ魔道士バイヤーは最強魔道士の破滅の運命を救いたい!

カエデネコ

未来を垣間見る

 人々が群がる。時々、誰かが石を投げる。黒髪の青年は意識が薄っすらとあるだけなのか、抵抗一つしない。


「このひとでなし!」


「よくも家の息子を殺したな!」


「心の無い戦闘魔道士バトルメイジめが!」


 広場の真ん中に縛られて、禁術の札を山のように貼られて魔力を封じられた血みどろの彼は……私がよく知っている人だった。


「ヴァレリウス……っ!!みんなやめて!彼は悪い人じゃないのよ!」


 群衆をかき分けて行こうとするが、厚い壁に阻まれているようで、近寄れない。私の声も伸ばした手も届かない。


 そのうち、処刑のギロチンが運ばれてきた。


 ……そんな!やめて!ヴァレリウス逃げて!あなたの力なら、逃げれるでしょう!?なぜ逃げないの!?


 彼の首に鋭利な刃が降ろされる前に、一瞬だけ彼の黒い目と目があった。私は息が止まった。


「…………っ!!」


 ガバッと起き上がる。ハァハァと心臓が鷲掴みされたように痛くて、抑える。冷や汗が止まらない。


 ここは……現在。未来をまた視てしまったのだ。彼の未来は破滅。最高傑作の戦闘魔道士バトルメイジと謳われている彼はそのうち死ぬ。


 助けに行かなきゃ。今、ヴァレリウスはどこにいるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る