第28話「大規模侵攻のその後」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 大規模侵攻は人類側の大勝利で幕を閉じた。


 同時にSNSはとあるロボットアニメの主題歌で盛り上がっているが一体誰のせいなんだろうね。


 ともかくやる事はある。

 昭和のスーパーロボットアニメから抜け出して来たかのようなこの少年、大文寺 リョウマの処遇についてだ。


 現在は旗艦であるアロンズダイトの格納庫に赤いスーパーロボット、グランディスを誘導している。


 そして話を聞いたら頭の痛い内容である。


 曰くロボットに意思があって、地球の危機を感じ取ってこの星にやって来たとかどうとからしい。


 で、大文寺 リョウマはそのロボットに選ばれて場の流れで戦って今に到ると。


 まんま古き良きスーパーロボット物の導入部だ。


 分かりやすい上に大文寺 リョウマは嘘をついている様子はない。


 親族にも確認を取ったが何処も不審な点は見当たらない。


 とりあえず少しばかりの間、グランディスとリョウマをアロンズダイトで預かることになった。


 リョウマ本人は宇宙人の船である程度待遇がいいのかはしゃいでいる様子だった。

 この子は大物なのかもしれない。


 地球側からグランディスの引き渡しは来なかった。


 全面戦争の危機が回避されたばかりで、また自ら火種を作りにいくような真似はしたくないのだろう――と思いたい。


 逆に捕らえた自称テロリスト連中は全員学園側に引き渡した。


 学園長のセフィアさんにはこれでどうにか外交的に渡り合って欲しいものだ。



 そして肝心の地球側は――より正確には世界各国の首脳陣はもう大混乱に陥っていている様子だ。



 まるでも何も世界存亡の危機が二連発で起きてしまったのである。

 態度もチグハグだ。

 一体全体どれだけの人間の人生が狂ったか。

 かわいそうとは思うが、あの地球側の司令官をどうにかしなった責任もあるので特に何もしなかった。

 


 


 Side 綺羅 ユキナ



 どうにか二つの危機は去った。


 地球の存亡は回避できたのか?


 未だに実感が湧かない。


 学校全体で祝勝会ムードでお祝い代わりにあの歌を歌っている。


 しばらくはこの歌と付き合う事になりそうだ。


 正直私はと言うと身も心もヘトヘトだ。


 今ぐらいは何もかも忘れて休ませて欲しい。



 Side 綺羅 セイジ


 姉さんはとても疲れているようだ。

 

 今はそっとしておこう。


 オリヴィアやインリンを始めとした女の子達は何だか悩んでいるようだ。


 大規模侵攻前に僕がキツく言ったせいかも知れない。


 そうだとしたらよっぽどタフな子達だ。


 僕は――彼女達に対してどう思っているのか分からなくなってきていた。


 ふと自分も彼女たちの事を考えていて存外タフだなと思ってしまう。  


 だからと言って心のつっかえが取れたワケではないが――



 Side クリス・ヴァレンタイン


 お墓参りに来ていた。


 二度目のヒデトとの再会を心の何処かで祈ってたが――


(まあ、会えんわな)


 と、期待していた自分が馬鹿らしく思えた。


(この学園も捨てたもんじゃねーかもしんねーな)


 などと思ったりしていた。

 あの宇宙からの来訪者が来てからよくも悪くも地球全体が騒がしい。


 学校もそうだ。


 その点ではあの皇子様には感謝している。   


 不謹慎かも知れないがあのアニソン熱唱には爆笑して、そして心が熱くなった。


 お堅いイメージがあったがあの皇子様はとんでもないコメディアンかも知れない。


 もしかすると案外気が合うかもな――などと考えていた。


「雪音先生も墓参りですか?」


「ええ――また会えそうな気がして」


 雪音 ミオ先生も墓参りに来ていた。

 目的は自分と同じらしい。


「でも、本当はあってはならない事なのよね」


 と、決意を固めるように先生は言った。


「ええ――」


 そうだ。

 

 愛坂 ヒデトはもういない。


 愛坂 ヒデトはもう死んだのだ。


 死んだ人間が幽霊となって現れるなんて事が二度も三度もないだろう。


 あの幽霊騒動は言ってみれば奇跡のような一時だ。


 だが出来ればもう一度とも思ってしまう。 


「さて、行きましょうか」


 そう言って雪音先生は立ち去った。

 

「俺も行くか」


 それに続くように俺も立ち去った。

 

 俺達はまだ生きているのだ。


 過去には戻れないが今ぐらいはちょっぴり変えられるかもしれない。


 そう思ってあの部屋に戻る。

  

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