第9話「翌日」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 副官のジーナからスケジュールの確認をとりながら朝の支度をする。


 ある程度自由気ままに振舞っているが、皇太子なのでちゃんとしないところはちゃんとしないと、ジーナがうるさいのだ。 


(いちおう地球には調査の目的で来てるんだよな……)


 頃合い見てアロンズダイトで世界一周旅行でもしようかなとか思ったりもしたが、何処に行っても似たり寄ったりの歓待を受けるだけだろう。

 正直そんなの自分の身が持たない。


 ウチの帝国は帝国を名乗る割には何というかこう、世界観が緩いところがあるが、やる時はキチンとやるからな。


 でなければ無印時代のスパ〇ボのオリジナル敵勢力みたいな凶悪なマシンを開発したりしない。


 今この艦の戦力でも対抗するにはゲッ〇ーとかマジン〇ーとかコンバト〇ー、ダンクー〇クラスの特機が複数必要になってくる。 


 自分の専用機なんか下手なスパ〇ボ作品ならラスボ〇張れる程度の戦闘力はある。

 流石にZシリーズとかでは無理だけど。

 ありゃ魔境だ。


 話が逸れた。


 旗艦アロンズダイトに横付けしている学園にして母校、アークを大使館にしているのでここを通して地球と外交するつもりだ。


 前に語った通り、学園に横付けしたのは前世の復讐もあるのだが同時に学園を守りたいと言う気持ちもある。


 矛盾しているとも思う。


 それに自分が死んだ後の学園がどうなったかこの目で直接見てみたいと言う気持ちもあった。


 だからある事を考えた。



 黒髪に黄色めの肌の日本人系の人間に変装して学園に潜入する。

 いちおうは見学者と言う形をとっている。

 

 傍には工作員の子がいてドキドキしていた。

 黒髪のボブカットで眼鏡を掛けたアジア系のキリっとした人間だ。

 学生と言うよりオフィスレディと言った印象を持つ。


 名前はユン・シェンハ。(もちろん偽名)

 複雑な経歴で偽装して足が付かないようにしているそうだ。

 

 目には見えないが周囲にはステルスモードの護衛が何人も待機している。


 この潜入の事を知っているのは学園の中でも学園長か、綺羅 ユキナ先生ぐらいだけだ。


 今は工作員ユンと一緒に一年A組の罰則を眺めていた。

 基本的な校内の草むしりとかの環境美化活動である。

 もちろん生身でだ。


「綺羅 ユキナ教諭のクラス、一年A組は早速朝から校内美化活動を行っているようです。理由は昨日の綺羅 セイジの行動の連帯責任だとか」


「あざといけど、必死にアピールしないと本当に殺されかねないからね」


「巻き込まれた子達も大変ですね」


(正直一年A組の殆どは綺羅 セイジとユキナの信者の集まりだからな……)


 同じクラスだったから分かる。

 他のクラスにも一定数いた。

 そして僕を通してアプローチを掛けて失敗したら失敗したらで文句を言われた。


「全く、この私がどうしてこんな事をしないといけませんの」


 ふとそんな事を愚痴る女子がいた。

 長い金髪の女子。

 整った顔立ちでダメな方に気品溢れる女の子だ。


「……オリヴィア・ウィリアムズ」


「え? 知ってるんですか?」


 彼女の名前を知っている事にユンが驚く。


「まあね」


 オリヴィア・ウィリアムズ。


 エクスアーマーの専用機を持つ女の子たちはみな癖が強い性格をしているが彼女はその代表例だ。

 

 一時期流行ったラノベの第一巻の決闘イベントその物を行い、しかも自分にまで因縁をつけてきた。


 と言うのも彼女、女尊男卑主義者的なところがあり、また綺羅 セイジが綺羅 ユキナの弟である事も災いしての決闘イベントだった。

 

 決闘イベント後は丸くなったが、俺の扱いも多少は良くなったが綺羅 セイジの周りにどんどん女の子が増えて行くに連れて扱いが元に戻っていった。


「あら、新入生? 私に何か用かしら?」


「あの――」


 何故か向こうの方から寄ってきた。


「見た目平凡そうでダメそうな顔立ちの殿方ですのね。まるで死んだ愛坂さんを思い出しますわ」


 こいつ俺の気持ちを知らずに平然と地雷をぶち抜きやがった。


「あの……幾ら何でも初対面の人間に対する態度では――それに愛坂君は――」


 と、ユンが言うが――


「この罰則も何割かはあの死んだ凡人のせいだと聞いてますわ」


(変わってねえ……こいつ何にも変わってねえ)


 殴りたい衝動よりも悲しみが勝った。


「でも学園のために戦った人を馬鹿にするような真似はどうかと? 貴方の愛する綺羅 セイジが知ればどう思うでしょうね?」


 ここでユンは怒り気味にそう言う。

 さしものオリヴィア「それは――」とハッとなったようだ。


「それとも貴方の愛する綺羅 セイジはそんな最低な人間が好みなんですか?」


「貴方、私を侮辱しますの?」


「お得意の決闘でもしますか? 強ければ正しい、弱ければ間違ってるなど、そんな精神性でよく専用機を任されましたね」


 と、ユンがオリヴィアをそう評するが、決闘で勝とうが負けようがオリヴィアが気に入らなければ認めない、厄介な我儘お嬢様なのだ、オリヴィアと言う女性は。


 どうしてコイツ綺羅 セイジを気に入ったんだ?

 アレか? 顔面偏差値と身分偏差値か?


 俺はオリヴィアに決闘でボコボコにされた嫌な過去を思い出して「もういいよユンさん」と止める。


「ですが――」


「行こう?」


「あら? 尻尾を巻いて逃げるのですね。情けない殿方ですわ。そんな事ではあの凡人と同じように戦死してしまいますわよ」


 などと言っていたが僕は無視した。

 逃げるようにして立ち去った。

 

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