第10話「辛いだけじゃなかった学園生活」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 学園の裏手に移動し、僕はベンチで休む。


 ユンが「お口に合うかどうか分かりませんが」とジュースを買ってきてくれた。

 

 ジュースを口の中に流し込む。


 頭の中はあの女――オリヴィア・ウィリアムズの事で一杯だった。


 僕が死んで精々したあの態度を見て正直どうにかなりそうだった。


 正直潜入作戦を今更ながら後悔している。


「……愛坂 ヒデトさんとは仲が良かったのですか?」


「どうしてそう思う?」


「愛坂さんの事を聞いているディノ様は辛そうですから」


「……想像に任せるよ」


「――やはり、大切な人だったのですね」


 正直誤解を訂正する気力もなかった。

 たぶんユンの頭の中では皇子と親密なエージェントみたいな感じに想像していると思うがもうそれでいいかな? 


「申し訳ございません。私は――愛坂さんを助ける事が出来ませんでした」

  

「気にしなくてもいい」


「でも――」


「君は悪くない。あの味方が少ない学園の中で君は数少ない味方だった――そう聞いてるよ」


「それを聞いて私は正直嬉しい気持ちよりも安堵の気持ちの方が強いです――」


「それが普通だよ」


「殿下、私を殺してください。私は――」


「そんな事しないよ。もしも、許せないと言うのなら僕に一生仕えてくれ」


「え、それって」


「ユンもそうだけど、愛坂君には、この学園には大切な友人や愛する人は少なからずいたんだ。ユン、君もその一人だよ」


「そうだったのですか……」


 ユンは何故だか顔を真っ赤にしていた。

 

「どうしたの?」


「いえ、その――すみません。殿下に告白されたみたいでちょっと……」


 僕もキョトンとなった。

 そして理解したあと、笑った。


「ならいっそ付き合おうか? どうしても側室扱いになるかもだけど」

 

「で、殿下――御冗談を――」


「そ、そう。僕もどうかしてたよ。ありがとうユン」


「ッ!? 身に余る光栄です!!」


「ちょっと、声が大きい――」


 なんだこのラブコメ展開は。

 ジーナがいたらどう言うんだろ?

 側室確定ルート?


「ああ、そうだ。会って置きたい人がいるんだけど」


「会っておきたい人ですか?」


「うん。女性の前で他の女性の話をするのもアレだけどね」


「その人も愛坂様の大切な人だったんですね……」


「う、うん」(愛坂様?)


 なんか様付けになってる。


「保健の先生なんだけど」


「雪音教諭ですね――まさかその人も側室に?」


「誰彼かまわずしないよ!! 兄さんじゃないんだから!?」


 兄さんのハーレム今何人だっけ?

 それを認める親も親だけど。

 

「す、すみません。確か胸の大きい人ですよね。ジーナさんも胸大きいですし――婚約者のシェフィール様に嫉妬されますよ?」


「ははは――」


 確かにシェフィール(婚約者)はその辺気にしてたな。

 懐かしいな、スパ〇ボのゲ〇ト軍再現して、自分もライ〇ゲイオスの再現機体(ウィン〇ー時代仕様)で無双してシェフィールの星救ったの。


 あの頃はナイ〇マの〇ル君みたいなことしてたけど、久しぶりにやってみようかな。


 まあ今はそれよりも雪音先生だ。

 

 正直期待半分、困惑半分だけど。


 言ってみようか。

 

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