第8話「戦後処理・その後のディノ・ゼラヴィア」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 学園側から綺羅セイジの事に関して謝罪された。


 それはともかく世界中から重要人物からコンタクトの嵐らしい。

 この問題どうにかせにゃ、ならんなと思いつつ、自分の私室で学園にいたらしい工作員へコンタクトをとる。


 うちの帝国、どうやら前もって学院に潜入させていたようだ。


 まさか前世の知り合いだとは思いもしなかったが。


 それはそうと学園内での自分の印象。


 世界での印象はさておき学園の方では悪印象を持たれてるようだ。


 綺羅セイジや綺羅ユキナの派閥の信者が大勢いる学園だからな。


 さらに愛坂 ヒデト――死んでまで学園に迷惑かけるなんて最低だねとか言う生徒も少なからずいるらしい。


 これには流石の僕もショックを受けた。


 同時に「まあこんなもんだよな」と、無理してこの現実を受け入れる事にした。


 工作員に『知り合いなのですか?』と言われたが「いや、酷い話だと思ってね」と返しておいた。


 前世の僕は――何のために頑張ってきたんだろうな。


 ただこんな自分でも地球を守って役に立てるならとかは考えてなかった筈だ。


 戸惑いながらも、もしかして自分もヒーローになれるかも程度だった。


 だが何時しか綺羅セイジと比較されるようになって。


 綺羅セイジには敵わなくて、ただ必死に平穏を望むようにして生きて。


 それから、らしくない事をして戦死してしまった。


 それが自分と言う物を見失った自分の末路だった。


 過去は過去。

 今は今と割り切れない。


 そこまで皇子の肩書がなければ、自分はただの凡人である。

 

 精神が達観していると言うのなら、そもそもこの全長1km越えの旗艦を悪戯ごころで学園に横付けなどしていない。


(あれ――涙が……)


 自然と涙が零れ落ちる。

  

 自分はずっとディノ・ゼラヴィアだった。


 だが同時に愛坂 ヒデトでもあるのだ。


 かと言って復讐する度胸もないし、半ば達成されている。


 それでも、どうして悲しみが込み上げてくる。


『泣かれてるいるのですか?』


「あっ」


 そう言えば通信付けっぱなしだった。

 

「こ、これはその――なんでもない。できれば秘密にしてもらえると助かるんだけど――」


『わ、わかりました――』


 工作員の子も驚いた様子を見せた。

 悲しさから一転、慌てて恥ずかしくなる。

 

 慌てて「それじゃ通信切るね」と言って終わらせる。


 本当に疲れてるんだな自分。

 こんな初歩的なポカをやらかすなんて。


(もう寝よう)


 明日からの事を色々と考えなきゃだけど頭がうまく回らない。

 副官のジーナと一緒に相談しよう。

 

(セイジのやつ、今頃何しているかな……)


 などと考えもしたが――


(やめだやめ。今日はもうゆっくり休もう)


 そう心に決めて休むことにした。

 自分の目的は地球の調査が任務だ。

 

 侵略だの植民地化だの傀儡化だの考えちゃいない。


 上手く心を切り替えよう。


 うん、そうしよう。

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