第7話「戦後処理・その後の綺羅 ユキナ」

 Side 綺羅 ユキナ


「さて、どうしたものやら……」


 夜になり、私は学園長室に呼び出された。

 セフィアは地球全体のお偉いさんの対処で大忙しであると思っていた。


「あまり時間はとれないから――少し相談したいことがあるの」


「私の弟のことか」


「それはまた後日」


「なに?」


 てっきり弟のセイジのことかと思ったが違うらしい。

 と言うことは――


「ゼラヴィア帝国のことか」


「正解よユキナ。正確にはディノ皇子のことだけど」


「どう言うことだ?」


「突然色々ありすぎて衝撃的すぎて考えるのが後回しになってたけど、彼は私たちの学園の内部事情に詳しすぎない?」


 その点を突かれてハッとなる。


「だが彼達の見た目は地球人のそれに近い。地球人ですと言ってこの学園に潜入されでもしたら見分けがつかんぞ」


「ええ、私もその線を考えてるわ――」


「だからと言ってどうする? 下手に探りを入れれば――」


「そうなのよね。どう思われるか――無謀に等しいわ」


 彼自身が言っていたではないか。

 我々はまだ出会ってそんなに時間が経過してないと。

 

 今はまだ互いの距離感を図りかねている。


 なにがダメでなにが正しいのか。

 それがわからない。


 もっと分かり易く言えばスパイ探ししようとすれば相手に不快感を与えてしまうことになる。


 これがとてもまずい。


「今は相手に不快感を与えてしまえば相手方が納得しても、地球側の国々に――」


「そうね。それも問題よ……ハァ」


 溜息をつくセフィア。

 

 今この学園は地球の全世界とゼラヴィア帝国とで板挟みになっている状態だ。

 ゼラヴィア帝国だけでなく、地球側の機嫌もとらねばならない。

 でなければ命の保証がない。


 その点で言えば弟のセイジがやらかした事は幸先が悪すぎる。


 もっと言えばこの学園のイメージも悪くもたれている。


 表面上では今のところ友好的に接しているがどう考えている分からない。


 なにせ宇宙人だ。


 実は思考は読めますなどと言う、俗に言うエスパーがいても信じてしまいそうだ。


「色々と考えるべき事はあるけど、まずはこの学園のイメージを――とくにゼラヴィア帝国側の印象を回復させたいの」


「イメージをですか?」


「思いつく限りなんでもよ。やりすぎるぐらいで丁度いいわ。何なら罰則受けてる子達を自由にこき使ってもいいから」


「成程、その手があるな」


 罰則にもなって地球とゼラヴィア、両サイドへの機嫌取りになって一石二鳥と言う事か。

 なんだかんだでタフな学園長だ。


「貴方にも率先して動いてもらいますよ。一年A組の更生プログラムとでも言えば納得してもらえるでしょう」 


「正直、あざとい気もするが……そうも言ってられんか」


「頼むわよ? あなた達に人類の命運が掛かっているんだから」


「ああ――」


 どうやら眠れぬ夜が続きそうだ。

 

 ことがことだ。ヤケ酒するワケにもいかん。


 早速部屋に戻って考えられそうな事をリストアップするか。

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