第6話「戦後処理・その後の綺羅 セイジ」

 Side 綺羅 セイジ


 格納庫で僕に待っていたのは姉さんからの平手打ちと厳しい𠮟責だった。


「よくも、よくもとんでもない事をしてくれたな!!」


「だけど先生――」


 と、周りの仲間が庇ってくれるが――


「弁護の余地は許さん!! 連帯責任として全員に罰則を受けてもらうからな」


 そしてその傍には帝国の皇太子、ディノ・ゼラヴィアがいた。

 とても若い。

 僕達とそんなに変わらない歳だ。


 周りには兵士や副官らしき美女までいる。


「まあまあ、先生もその辺で」と皇太子が姉さんを止めてこう続けた。


「確かに政治、外交的にタイミングが悪くて、さらに罰則を破ってしまったのは事実です。それに言っちゃ悪いですが我々は地球の調査目的できました――まあ先に釘を刺しておきますが侵略の下調べ目的と言われても否定は出来ないのも事実ですが――」


 と前置きし、


「地球は地球人の手で守る。その志その物は否定したくはありませんね」


「で、ですが――」


 姉さんは何か言いたそうな顔をしている。


「まだ我々は接触して時間が少ない。これから時間を掛けてゆっくりお互いを理解していきましょう」


 と言っておく。

 まあ何か裏があるんじゃないかと勘繰られてしまうんだろうな。



 Side 綺羅 セイジ


 結局僕は皇太子に助け船を出される形で罰則を軽減された。


 自室で反省文。


 それと部屋から外出禁止だ。


 だがそれは苦痛ではなく、感じるのはどうしようもない敗北感、無力感だ。


 それを紛らわす意味で罰則はありがたかった。


 皆も受け入れてくれた。


 ふと、何故だか愛坂 ヒデトを思い出す。


 同じ時期に入学し、エクスアーマーも同じ適正値だったにも関わらず自分とは何もかもが違った。


 何時か言われたことがある。


 人生勝ち組の君には僕の気持ちなんて分からない。


 皆はこう言う。


 愛坂君は努力が足りない。

 

 綺羅君をもっと見習って欲しい。


 酷い時には学園の恥扱いされた。


 今にして思えばなんと残酷な言葉なんだろうか。


 彼が死んだあと、イジメを受けていたのが分かった。


 そしてそのイジメには僕や周りの女子達も関わっていたとされる。


 僕には非が無い。ただ無自覚に傷つけていただけ。


 だが周りの女の子たちは僕にアプローチを掛けるためにヒデトを利用していた。

 時には暴言や暴力的な行為にも及んでいたらしい。

 

 酷い時には失敗の尻拭いをさせられていたようだ。


 誰かが言っていた。


 自殺以外の死因で死んでよかった。


 名誉の戦死でよかったと。


 流石の僕もふざけるなと思ったがあの日記を読んだ後だと表立って非難できなかった。


 そうして厳しい罰則を突き付けられ、周りの子達は不平不満を言いながら渋々受け入れたが……


(なんだ。最低じゃないか……)


 そう思うに至り、


(ヒデトは――どんな気持ちだったんだろうか――)


 今は亡き、愛坂 ヒデト。

 こうして彼の深い部分の事を考えるのはもしかして初めてかもしれない。

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