第5話「ゼラヴィア帝国の力」

 Side  綺羅 ユキナ


「まさか、帝国が出るのか!?」


 私は驚く。

 正直救援はありがたいが、政治的、外交的にどう転がるか分からないからまずい。


「まあこうなってしまえば運命共同体のようなものですよ」


「で、ですが――」


「ご安心を。地球人の人達の奮戦は見させてもらいました。今度は此方の番ですよ」


 ディノ皇太子にそう言われるが何か裏があるのではと私は勘ぐってしまう。

 だが現状どうにもならない。

 今は彼に頼るしか――


「司令、大変です!! 綺羅 セイジ君が――」


「なんだと!?」


 最悪なタイミングで弟がやらかしてしまった。

 ディノ皇太子は何が面白いのか笑っていた。



 Side ディノ・ゼラヴィア


 やりやがったあのラノベ主人公!!


 また主人公気取って、姉の権力とかこれまでの功績とかで有耶無耶にするつもりだったんだろうけど、今回はタイミングが悪い。


 自分でもどう転がるか本当に想像はつかない。


 まあ多少の助け船ぐらいは出してやるが重たい罰則は間逃れないだろうね。



 Side 綺羅 セイジ


 僕は専用機「アークセイバー」を身に纏って出撃した。


 宇宙人だか何だか知らないけどこの学園と、この世界は僕が守ってみせる。


(こうして見ると本当に大きいな)


 遠方にはゼラヴィア帝国の1km越えの巨大旗艦「アロンズダイト」。


 そしてロボットアニメに出てきそうな悪の侵略者が使うような20mぐらいの人型機動兵器がいた。


(速い!! あのサイズでエクスアーマー以上の速度が出せるのか!?)


 エクスアーマーも世に出た時はSF兵器だのなんだの言われていたけど、帝国の兵器は違う。


(それよりも今はディセントを――)


 と思った瞬間。

 ゼラヴィア帝国の戦艦から砲火がはじまった。

 巡洋艦サイズの敵が一撃で吹き飛んでいく。

 

 あの人型機動兵器も負けてはいない。

 20m級の巨体で敵の弾幕を潜り抜けて敵の迎撃機や巡洋艦を次々と一撃で破壊していく。


 時代遅れと言われた戦闘機と呼ばれる兵器も負けてはいない。

 なにせ異星人の戦闘機だ。

 地球の戦闘機とは火力も機動力も比べ物にならない。


 圧倒的な戦い。


 蹂躙と呼ぶに相応しい。


 この光景に僕は驚きよりも無力さが沸き立つ。


「セイジ!! 何勝手に抜け出してるのよ!?」


「大丈夫セイジ!!」


 仲間達が駆けつけてくるが返事することが出来なかった。


「僕は――無力だ――」


「せ、セイジ?」


「どうしたのセイジ?」


☆ 

  

 Side ディノ・ゼラヴィア


 いや~終わった終わった。


 自分らの言う戦いってのは超大作SF映画とか星間戦争とかの規模だからね。


 言っちゃ悪いが地域国家の集まりである日本の、辺境惑星の地球の戦いなんてのは宇宙帝国からすれば小競り合い規模の戦いなのである。


 あの主人公、結局罰則破って出撃しただけだったね。

 

 どうせ主人公的思考回路で「自分達の星は自分で守ってみせる」とか思ったんだろう。


 まあそれ事態は間違いじゃないんだけど、もっとこう、頭を使って欲しいなと思ってしまう。


 とりあえずお姉さんには「いやー大切な弟さんにケガがなくて良かったですな」と労いの言葉でもかけておいた。


 前世の恨みを少し込めた皮肉でもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る