第12話「手助けと暗雲」
Side ディノ・ゼラヴィア
ユンを通じてオリヴィアの件は一先ず様子見だ。
これで変われなければもう救いようがないだろう。
それよりも今は敵襲だ。
今回の敵は艦船サイズの長距離砲撃型。
周囲に迎撃網が形成されていて世界各国のエクスアーマー部隊が必死に応戦するが近寄れないらしい。
自分達に応援?
政治的なあれこれがあって手出し無用との事だ。
今後の地球のパワーバランス的なアレコレとか自分達帝国との駆け引きとか色々と考えた末の手出し無用なのだろう。
エクスアーマーの装着者の養成学園である「アーク」にも戦力はあるが自分達に万が一の事があった場合のための保険として教員を中心に部隊配置されてある。
生徒たちは出動禁止だ。
万が一流れ弾で帝国の船とかに当たったら地球存亡の危機だもんな。
「どうします? このままでは地球の軍隊は全滅です。援軍を出しますか?」
副官のジーナが訪ねてくる。
「最悪此方の権力で黙らせる。ステルス機を出せ」
いや~権力と武力って使う側になると楽しいね。
こう言うパワープレイが出来るんだから。
「ステルス機ですか?」
「ああ、バレないように援護してやるんだ。どの道このままだとこの船に直接攻撃が来るのは時間の問題だ。あまり地球側に失点続きさせてあげるのも問題だしね」
「だからステルス機でバレないように援護するのですね」
「バレてもシラを切れば問題ない」
「皇子の政治意識と戦略、戦術眼に感服致しました。スグに手配を」
ジーナの言葉に「そんな大袈裟な――」と僕は苦笑する。
☆
Side 特殊任務部隊 隊長
ステルス機で地球人にばれないように支援しろと言う不可思議な任務を与えられた。
まあ与えられた指令はこなすがな。
キャリバーのステルス仕様で出撃する。
☆
Side エクスアーマー攻撃隊 隊長
真っ暗闇の海上を敵の弾幕が明るく照らす。
エクスアーマーを中心とした世界連合国部隊(仮称)はディセントの防衛網を突破して遠距離攻撃型。
巨大な砲台のような敵の破壊を試みるが敵の防衛網が強固で迂闊に近寄れない。
あの宇宙人達に頼ればスグにでも突破できそうなもんだが上は前回の失点やら政治的駆け引きやらで頼まないらしい。
そのせいでどれだけの人間が死んだことか。
『隊長!! 敵の防衛網が!! 何者かに破壊されています!!』
『なんだと!?』
エクスアーマーや味方の艦船、軍用飛行機のレーダーにも反応はない。
にも拘わらず敵の防衛網が破壊されていく。
『空いた敵の防衛網から突入して遠距離型を破壊するぞ!!』
『で、ですが!!』
『ですがも何もない! この好機を逃すな!!』
私達は空いた防空網から特攻まがいに巨大な遠距離型のディセントに肉薄しようとする。
『これで終わりだ!!』
どうやら懐に入られたら脆いらしく、呆気なく戦いは終了した。
逆に言えばだからこその厳重な防空網だったのだろう。
☆
Side ディノ・ゼラヴィア
「なんとか任務が達成できてなにより。綺羅 セイジ君達も流石に今回は大人しかったか」
「地球軍の総司令官からメッセージが来てますが?」
ホッと一息ついたところでジーナがそう言ってくる。
「総司令官? ああ、確かタカ派連中の親玉みたいな奴だっけ?」
より具体的に言えば闘将ダ●モスの三● 防人長官みたいな奴――かな?
正直あのレベルだとは思いたくないけど。
「文句を言ってきてますが――」
「文句?」
「何でもディセントは我々の侵略兵器であり、今回の戦いも自作自演だとか――他にも色々と言ってきてますね」
前言撤回。
三● 防人と五十歩百歩だわ。
そんな回りくどい真似をするなら正攻法で制圧してるよ。
もしかしてディセントは先遣隊で自分達が本隊か何かと勘違いしているのかな?
なまじディセントと対抗できているせいでそんな考えしているの?
昭和のロボットアニメの敵侵略者じゃないんだから……頭が痛くなってきた。
「ここまで分かり易い宣戦布告は初めてだよ」
「どうします? 受けて立ちますか?」
あ、ジーナさんやる気だ。
ブリッジの雰囲気も臨戦態勢である。
まあ無理もない。
せっかく穏便に地球側の都合考慮して終わらせようとしたらこれだもんな。
「我々の目的は地球の調査だ。国連事務総長や世界各国の政治家達にメッセージを――ああ、国連事務総長はダメだ。アイツも総司令官とは違うタイプのダメな奴だ。日本もダメだな――」
「地球の事情に随分詳しいのですね」
と、ジーナに尊敬の眼差しで見られる。
僕は照れ隠しに「まあ色々と調べたからね」と返しておいた。
「まあ最悪関りを断てば良いぐらいに考えておこう――このままだと何か地球と全面戦争になる気がするよ」
そう暗澹たる気持ちになった。
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