第19話「僕が生きた場所」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 広い学園内の溜まり場と呼ばれる場所。


 そこそこ広く、そこには娯楽用のゲーム機やら漫画やらラノベやらPC、プラモデルも置いてあった。


 今は暇なので全員集合している感がある。


「学園にこんな場所が――」


「ちなみに学園長からも許可は得ているぞ――」


 驚くユンにクリスがその事を教える。


「学園長も?」


「あの人もあの人なりにこの学園の事を考えていたらしい。特にカリキュラムについていけない生徒たちの心のセーフティーネットとか何とかでな。まあ学園長が暇つぶしにやってくる娯楽室とかも兼ねてるんだよここ」


 とクリスは語る。


「てことはここって」


「まあ生徒と先生達の憩いの場でもあるな」


「憩いの場――」


(相変わらずだなここは)


 などと思った。


「こう言う場所はてっきり王城あたりが来ると思うんだけど」


 ユンが当然の指摘をするが――


「ああ、来た来た。迷惑だったんで色々と手段使って返り討ちにした。ボイスレコーダーとか監視カメラとか仕込んだりしてな」


 クリスが暴露する。

 そんな事もあったな。


「ああ成程――だけどここはエクスアーマーの養成機関であって、こう言う場所があって大丈夫なんでしょうか?」


「まあ、学園長から許可を取ってるとはいえ良い顔をしないわな――だけど基本暇なんだよ」


「暇?」


「アンタらエリート連中には分からないかも知れないけど、この学園の設備の使用は授業以外だと専用機持ちが優先されるんだ」


「確かにそうですが……」


「その次は成績優秀者、その次は上級生、その更に次ぐらいに陽キャグループが優先されるようになってるからな。まあ整備科の方は知らないが基本そんな感じだ」


「よ、陽キャグループ……」


「この学園に来なけりゃ良かったって今更ながら思う時があるぜ。だからエクスアーマーの実習の時はボロクソな扱いになるんだよ」


「この学園はエクスアーマーの実力が全てだから?」


「ああそうだ」


 クリスが言うようにこの学園はエクスアーマーの実力が全てだ。

 そして綺羅 セイジは専用機を持ち、才能にも運にも、そして容姿にも産まれも育ちも恵まれ、自覚があるのかないのか一大派閥を作るに至った。


「まあエクスアーマーの実力が全てだと言う風潮その物はいい。だが何事にも限度って奴がある。特に専用機持ち連中は所属国家から派遣されたエリートだがなんだかしんねえが性格に難がある奴ばっかだ」


「それは――」


「オリヴィアやチャンとか、一年A組の専用機持ち連中なんかが代表例だろう。あいつらヒデトに何をしたと思ってる? ほぼパシリ扱いで俺に泣きながら愚痴ってだぞ? しかもオリヴィアもチャンも全然反省してないし」


「その点に関しては同意します」


 クリスはため息をついた。


「まあ、そんな時代も宇宙人の来訪って言う超展開で終わっちまったけどな――ヒデトの奴、死んじまいやがって……」

 

 その言葉に反応して周囲の生徒たちが口々に、


「ヒデトさんは頑張ったよ。だけど俺達何もしてあげられなかったな」


「ああ。せめてあの世では元気でやっていて欲しいな……」


「クリスさん泣き明かしてましたもんね……」


「正直周りの連中、ヒデトの死なんか自己弁護で必死だったよな。俺、この学園もっといい学園だったと思ったのにどうしてこんな学園に来ちまったかな……」


 と語る。

 

「ちょ、ちょっと!? だだだ、大丈夫ですか!?」


 ユンが驚いている。


 僕は涙を流していた。

 本当にいいヤツ達だ。

 最高だよ君達。

 

 ちょっと周り――クリスさんも動揺しちゃってるけど構うもんか。

 泣いちゃうんだもん。


「ごめん、ちょっとね」


「お前、愛坂 ヒデトの親友か何かか」


「そんなとこです」


 クリスに嘘をついたが流石に本人とは言えないのでそう返した。

 続いてこう言った。


「ねえ、もしもだけど――エクスアーマーの練習とかキッチリ出来るようになったらどうしたい?」


「――恥ずかしい事聞くな、決まってるだろ。ここにいる全員が同じ気持ちだ。コミックのヒーローになれるなんて思っちゃいないがそれでも誰かのために戦うためにここに来たんだ」


 と言うが最後に恥ずかしそうに「まあここで腐ってるような奴が何も言えないからな」と、クリスは言った。



 クリス達と別れてユンと二人きりで何時ぞや座ったベンチに座る。

 

「意外でした。クリスさんは問題児として有名でしたがあんな情に厚い性格だったとは」


「そ、そうだね」

 

「この学園にもああ言う人達がいたんですね」


「まあね。性格がいい人が不当な扱いを受けたり、性格が悪い人が出世したりするからね――」


「皇子はあの方達を助けたいと?」


「助けられるお姫さまって柄じゃないと思うけどね、あの人達は――だけどクリスの言葉に嘘偽りがないのなら――チャンスぐらいは与えてやりたい」


「やはり――愛坂さんは――皇子にとって大切なお方だったんですね――」


「そ、それはどうかな」


 適当に誤魔かしておいた。

 何度も言うが本人ですとは言えるわけがない。

 まあ言ったところで真実だとは思ってくれないだろうが。

 

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