第37話「動いた世界」

 Side リオナ・クレーデル


 地球圏内。


 某宙域。


 私は母艦で同僚の失策を艦内のブリッジからモニターで眺めていた。

 銀河中に銀河連邦の船の横暴な振る舞いが生中継されたのだ。

  

 こんな初歩的な策に引っかかるとは本当に銀河連邦は落ち目なんだなと思う。


 大方、銀河連邦の力で幾らでも揉み消せばいいとか帝国の自作自演として宣伝すれば良いとか考えてるのだろう。


 だがそう言う情報統制も限度がある。

 

 特に地球人の目にはどう映っただろうか?


 完全に悪の侵略国家みたいな態度をどう見るだろうか?


 アレは一部の銀河連邦のバカが勝手にやった事ですと言って通用するだろうか?


 やらかしたあの司令官は、クビが飛ぶか物理的にクビが飛ぶか見物だ。


 ウチの総司令官、ゴーマンは「最終的に勝てばいい」とか思っていそうだが、それが出来ないから帝国相手に苦戦していると言うのが分からないのだろうか……


 だからロクでもない手段を考えている可能性が――



 Side ディノ・ゼラヴィア


 僕は再び学園に降り立つ。

 そこで大文寺 リョウマや綺羅 セイジ、クリス・ヴァレンタイン、綺羅 ユキナ達と出会う。


 今地球圏の世論は反銀河連邦に傾いていて、銀河連邦と繋がっていた日本はピンチな状況である。


 自業自得は言い難く、運が悪かったとしか言いようがない。


「どうもありがとう。皇子様。おかげで命拾いしたよ」


 と、笑いながらリョウマが声をかけてくる。


「まあね。銀河連邦の正体も分かったことだし、あらためて学園を大使館扱いにしたいんだけど」


「わ、分かった、学園長には私から伝えておこう」


 綺羅 ユキナは慌ててそう返した。


「あの皇子様――」


 綺羅 セイジが呼びかけてくる。


「なんだい?」


「ありがとう。僕達を、皆を助けてくれて」


「どういたしまして」 


 たたの短いやり取り。

 でもそれだけで十分だった。


 戦闘に到る直前の経緯も知っている。

 本当に成長したよ綺羅君は。

 ゴースト作戦も無駄じゃなかった。



 黒髪の日本人風の背格好に久しぶりに変装する。

 そして学園内の人気のない場所でユン・シェンハと密会した。

 学園の様子を聞くためだ。


「地球人とは勝手ですね。アレだけ帝国を叩いていたのに、今は帝国の歓迎ムードですよ」


「まあ仕方ないよ。それが人間って奴だから」


「……はい」


「それよりも学園の状況だけど――」


「学園の方は人がガラガラですが、徐々に戻りつつある感じですね。学園の外に戻っても待ってるのは批判、批難でしたから」


「それに関しては僕もどうかと思うけど、銀河規模のどうにもならない話だからね。そのやり場のない気持ちを誰かにぶつけたくなる気持ちは分からないでもないけど、やはり聞いてて気分の良い者ではないね」


「その、話によればまた演説をすると聞いたんですが」


「そうだよ? この機会を逃しちゃいけないからね」


「また歌を歌われるんですか?」


「あ~」


 またそう思われてるんだ。


「あれは何度もやると効果が薄れるからね。今回はやらないよ」


「今回はってまたやるつもりなんですね……」


「必要とあればね」


「はあ――失礼ですが、ディノ皇子のお考えが分からなくなる時があります」


「ごめんね~」


 とりあえず謝っておこう。


 さて、演説の準備をしないと――

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