第36話「決断の空その2」
Side クリス・ヴァレンタイン
厄介な事になった。
周囲を地球軍と銀河連邦の部隊に囲まれ、地球唯一のスーパーロボットをこのタイミングで明け渡せと来た。
正直自分で勝手に判断していい状況を超えている。
『話に乗ったらダメだ』
「綺羅――」
反論したのは綺羅だった。
『学園に手出しをしないと言う約束だけど裏を返せば、するつもりだったと言う事になる』
「確かにな――」
綺羅 セイジがもっともな事を言う。
『さらに言えばそれだけそのロボットが驚異的な戦力に見えたんだろう。だから脅迫紛いな事をしてまで手に入れようとしてるんじゃないか?』
と、感情任せではなく理論的に言う。
『それにそのロボットを下手に手を出せばディノ皇子だって静観する事は出来ない。だから僕達を味方に引き入れる形をとってこんな舞台を整えたんじゃないの?』
さらに続けて綺羅はこう言ってのけた。
大侵攻の時から――いや、ゴースト事件の時から成長したんだなと俺はしみじみ思った。
『黙って聞いていれば好き放題を言いおって――我々銀河連邦がその気になればこんな辺境惑星の下等民族如き、根絶やしするのは造作もないぞ――』
「おいおい本音が出るのが早すぎるだろ――」
銀河連邦の敵司令官の本音が出るのは幾ら何でも早すぎる。
こう言うのってもっとこう、色んな駆け引きとかするもんじゃないのか?
『悪いがグランディスを、お前らみたいな連中に渡すのは引き渡すのは勘弁だぜ』
と、大文寺 リョウマが言う。
『なんだと? 銀河連邦に歯向かう気か?』
『それだ。あんたら銀河連邦とゼラヴィア帝国の違いは』
続けてリョウマはこう言う。
『理由はよく分からねえし裏があるかもしんないがゼラヴィア帝国は俺達地球人のために戦ってくれた。それにディノ皇子も争いの火種になるからと言って俺を開放してくれた』
『それはゼラヴィア帝国の策略だ』
『じゃあどんな策略なんだ? 下等民族の地球人でも分かるように教えてくれないか? こちとら自慢じゃねえが頭が悪いんでぇ』
『貴様――こうなれば力尽くでも奪い去ってやる!! 攻撃開始だ!!』
沸点が低い指揮官だ。
『すまねえな、学園の皆――ここは俺に任せて退避してくれ』
と大文字 リョウマは敵に攻撃しながら謝罪し、退避を促してくる。
『分かった――』
「退くのか?」
『悔しいが――ここで僕達まで参加したら収集が付かなくなる。それに僕が参加したら周りの子達まで――彼女達まで参戦したらもう学園だけの話じゃなくなってしまう』
「お前そこまで――」
悲しいし、悔しいが――綺羅の周りの女の子達はそれぞれの国から派遣されたエクスアーマーの装着者だ。
綺羅が戦いに参加したら彼女達も当然参戦するワケで、そうなれば今の混沌とした地球情勢が悪化する。
最悪彼女達の命がない。
見捨てる形になるがここは撤退するしかない。
「てかあいつら俺達を狙って!?」
『そう言う手で来たか!?』
退避する俺達をワザと狙う銀河連邦。
そのガードに入るグランディスに乗る大文寺 リョウマ。
銀河連邦は勢いに乗ってグランディスに砲火を集中させる。
「ダメだ!! あいつら俺達が逃げられないように包囲してやがる!!」
『判断が裏目に出た!! こうなるなら一緒に戦えばよかった!!』
「その点に関しては同感だ!!」
今から一緒に戦おうにも攻撃のタイミングが掴めない。
グランディスの盾がなくなればあっと言う間に撃墜されてしまう。
愛坂 ヒデトにあの世に行って会いに行く時間が来たようだ。
『高速で接近する超大型の熱源接近――』
「なんだ? ディセントか?」
『いや、これは――』
綺羅が驚いたように上空を見る。
そこから現れたのは――
「ゼラヴィア帝国軍!?」
艦隊を引き連れてゼラヴィア帝国軍が現れた。
『銀河の法を順守する銀河連邦も地に落ちたものだね――』
と、ディノ皇子が呼びかけてくる。
『ゼラヴィア帝国め!! そうやって上手く懐柔してこの星を植民地にするつもりだろう!!』
『先程まで悪役の台詞を言っていた人が言うセリフではないよね』
『黙れ!! 銀河連邦に逆らう者は全て悪だ!! それはゼラヴィア帝国、貴様らとて変わりはない!』
『それで、地球を支配すると? 銀河連邦が?』
『地球人と言う下等民族を銀河連邦の一員に加えてやるのだ! 感謝して欲しいものだ!』
『そうやって幾多の星を支配してどれだけの生命を殺してきた?』
『黙れ悪の帝国の皇子が――なに? なんだと!?』
何かあったのか銀河連邦の船が急に撤退して行った。
一体何が起きたのだろうか?
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