第41話「その頃の綺羅 セイジ」

 Side 綺羅 セイジ


 =学園内にて=


 最近はクリスやリョウマと一緒になる機会が多くなった。

 

 御剣やオリヴィア達とは一旦距離を取っていたが徐々にだが元に戻りつつある。


 だが全てが元通りになったと言うワケではなく、あの幽霊騒動からオリヴィアを含め、愛坂 ヒデトに辛く当たっていた少女などは遠慮がちになっていた。


 彼女達は必死にそう言う自分に向き合って無理して明るく振る舞おうとしているが時折影を見せる時もあった。 


 ディセントと行動を共にする黒いエクスアーマー使いの事もある。


 一度腹を割って話し合いをした方がいいのか。


 それとも彼女達を信じて放置するべきなのか悩んだ。


 ただ決まっている事があるとすれば、第二の愛坂 ヒデトを作るならば黙認する事は出来ないと言う事だ。


 それだけは譲れなかった。



 =保健室=


 ある時、保険医の雪音 ミオ先生から呼び出しを受けて御剣やオリヴィア達から相談を受けている事を聞いた。


 皆悩んでいるとの事だった。


 そして愛坂 ヒデトの死に向き合い、後悔し、涙を流した人間もいるらしい。


 先生は言った。


「確かに愛坂君の死の遠因は彼女達にもあるわ。だけど死んだ愛坂君に言われたの。綺羅君を含めてもう一度信じて欲しいって」


「愛坂君――」


 自分の愚かさを呪った。

 死んだ後でもそう言ってくれる、そんな人間を辛い目に遭わせて、死なせてしまったことに。

 新めてそう自分の浅はかさを痛感した。

 


 =墓地・愛坂 ヒデトの墓前=


 暇を見てはここには何度もフラリと立ち寄る。


 クリスや周りの女の子達と鉢合わせする機会もあったが今は一人だった。


 だけどそれが良かった。


 顔もグショグショになりそうで、とてもみっともない顔になっている。


 だけどやらなければならなかった。


 大声で叫びたかった。

 

「今更こんな事言っても遅いかも知れないけど――僕はここに誓う!! 綺羅 セイジは!! 愛坂 ヒデトを死なせた!! それでも――僕はまた会いに行けた時に!! 胸を張って堂々と顔を合わせられるように!! 戦い抜くことを誓います!!」


 それは自ら困難な道を行くと言う誓いだった。


「だからこれからの僕を見ていてください!! そして――こんな僕を、もう一度信用してくれて本当にありがとうございましたぁ!! 僕だけじゃない!! 姉さんやアイナにオリヴィア!! インリン、ティファ、ナージャ、ネーナ!! 彼女達の事をもう一度信用して欲しいと言ってくれて本当に!! 本当に!! ありがとうございます!!」


 その場でハァハァと息を切らす。

 涙を流す。

 顔はみっともないグチャグチャな表情をしているだろう。


 暫く茫然とその場に立ち尽くし、涙が収まった後にその場を後にした。

 

 誓いは終わった。


 後は誓いを守るため、実行に移すのみだ。

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