第33話「更なる試練」
Side 綺羅 ユキナ
=アーク・学園長室=
「またとんでもない事になったわね」
あの事件から早々に逃げ込むように学園へ帰還した私は事の顛末を学園長に報告した。
セフィア学園長はやはりと言うか深い深い溜息をついた。
「それでディノ皇子はなんと?」
「出来る限りウチの部下は抑えるが、もうそろそろ限界だと――」
「そうよね――幾ら皇子が聖人でも周りはそうは行かないわよね。むしろ、今迄よく報復を我慢してくれたと感謝しないといけないわ」
「そうですね……」
本当にそうだ。
ディノ皇子にはその点では感謝してもしきれない。
「以前の大侵攻の時の演説でああいってくれたけど、もうどうなるか想像もつかないわ」
「ええ――」
ディセントとエクスアーマーだけの時代が遠い昔のように感じる。
だが今は銀河規模のお話だ。
もはや私達が出る幕がないスケールで話が動いている。
私の最強の称号も銀河規模から見ればお山の大将らしい。
「大変です!!」
そして教員が入ってくる。
今度はなんだ――
「とにかくテレビを!! いや、スマフォでもネットでも構いません!! とにかく大変なことに!!」
どうやら尋常ならざる事態が起きたようだ。
学園長室にあるモニターをつける。
「ニュースを見てください!!」
そしてニュースに切り替える。
そこに移っていたのは――
☆
Side ディノ・ゼラヴィア
「まさか艦隊を差し向けてくるとはね――」
銀河連邦の連中、形振り構わなくなってきたと言う事か。
このままでは学園どころか、地球その物が戦場になる。
宇宙に上がって迎撃するしかないか。
「正直に申し上げますと遅すぎたぐらいかと」
副官のジーナが言うように遅すぎた感はある。
「まあ予測していたシナリオの一つではあるんだけどね――そんなに僕を殺したいのかな、銀河連邦の上の方達は」
追い詰められすぎてまともな判断が出来なくなっているのか。
少なくともこのやり口はリオナ大佐ではない気がする。
そう思うと少しだけホッとした。
「どうしますか?」
と、ジーナが尋ねてくる。
「武力には武力を持って応えるしかないでしょう。戦闘準備だよ」
「分かりました」
☆
Side リオナ・クレーデル大佐
地球圏の宇宙空間で友軍の艦隊と合流する。
私が感じたのは安心感よりも呆れだ。
「まさか上層部がこんな強引な手段をとるとは――鋼鉄ジー〇を見る暇もなかった」
「そんなに好きなんですか、鋼鉄ジー〇?」
「他にも色々と観てるわよ、ボル〇スVとか――今はそれよりもどうやってこの難局を乗り切るか――普通にやったら勝てないから、たぶんロクでもない手を使うに決まってるわ」
「ロクでもない手をですか?」
「我々に従わなければ星を吹き飛ばすとかそんな感じの奴よ」
「我が銀河連邦がそんな野蛮な手を――」
「理由なんて後からどうにでもなるわ。それにここは銀河の中でも、銀河連邦からすれば田舎の辺境銀河。理由なんて幾らでもでっちあげれる」
だからこそ何をしでかすか、身内が恐い。
そしてあの皇子もだ。
平和主義者だけど一線を越えれば何をしですか分からない恐さがある。
ただの肩書だけのお坊ちゃんではなく、かつて惑星を救ってみせた英雄なのだ。
困難な状況に追い込んだとしても油断してはならない相手であるが――
何処か彼にこの状況を止めて欲しいと願う私がいた。
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