第34話「決戦前の一時」
Side ディノ・ゼラヴィア
地球圏はまるでこの世の終わりが来たかのような大騒ぎだ。
騒ぎの元凶となっている銀河連邦の艦隊からのメッセージはこうだ。
君達は帝国と繋がっている。
帝国への支援はやめたまえ。
帝国に協力するあらゆる勢力は敵とみなす。
と、この辺りはまだいい。
問題はここからだ。
今後、地球圏は銀河連邦の管轄下に置かれる。
そのために地球圏は銀河連邦の一員となり、共に悪のゼラヴィア帝国と戦おう。
である。
つまり銀河連邦の手下となってゼラヴィア帝国と戦えと言う事である。
銀河連邦は何を考えているのやら。
これでは地球で内乱が起きるぞ。
まあ、それが狙いなのかもしれない。
☆
二度も言うが地球は全土が大騒ぎだ。
今度は自分達が銀河連邦とゼラヴィア帝国との宇宙規模の覇権争いに巻き込まれるかもしれないのだ。
その割を食ったのが日本である。
表立って銀河連邦との繋がりを示し、あろう事か銀河連邦と一緒に皇太子の捕縛、あるいは暗殺しようとしたのがまずかった。
銀河連邦に脅されていました、許してくださいと言う言い訳が通用するほど政治の世界は甘くはない。
世界全土からお偉いさんが日本に詰め寄せ、あらゆる政治、外交手段で情報開示を迫り、それこそ死人が政治官僚やその関係者から出る程の酷い状況だと言う。
東京都民は大パニックで以前語った通り田舎に疎開している人間も大量に出ている。
だが中には国会議事堂で暴動になる勢いのデモが起きている。
日本の近隣諸国もミサイルを撃ったり艦隊を配置したり――逆に日本を守ると言う建前で日本を包囲するように軍隊を配備したりしている。
日本への渡航は原則禁止。
日本から脱出する外国人は多くいて、日本人は海外への渡航が原則シャットアウトされた。
まるで日本だけがターゲットになるみたいな雰囲気であるが、僕からすれば銀河連邦は銀河の片隅の地域国家の集まりがどうなろうが知ったこっちゃないだろう。
そもそも日本とアメリカの区別すら付いているか怪しいもんだ。
距離的にも宇宙基準の彼達からすれば目と鼻の先である。
日本と間違えてアメリカに大量破壊兵器を打ち込むぐらいはやりそうだ。
そして学園だが――
学園から退避する人間は大勢出た。
一応学園って帝国の大使館みたいな扱いだからね。
それに間接的とは言え、銀河連邦ともやり合った事はある。
ほぼほぼ、もぬけの殻となってしまった。
人類を守るエクスアーマーの装着者の育成機関を育てる場所であるが――まあ仕方ない。
相手が悪すぎるし想定される戦いの規模も桁違いなのだから。
それでも悟りを開いたかのように学園に残る生徒や教員も少なからずいた。
☆
Sideクリス・ヴァレンタイン
大勢の学生は逃げたが残ったもの好きもいる。
綺羅 セイジとかもそうだった。
俺と綺羅は愛坂 ヒデトの墓の前にいた。
「まさかお前も残るとはな」
皮肉気味に俺は綺羅に言った。
「相手の考え方のスケールが違うんだ。どうせ何処に逃げても一緒だよ」
「だよな」
こいつに対しては正直幽霊騒動を経た今でもむかつくが意見は一致している。
「周りの女はどうした?」
「距離を取っている。皆、学園に残ってゼラヴィア帝国とどうにか出来ないかと言われているみたい」
綺羅の周りの女は皆、綺羅の事が好きな連中だ。
同時にヒデトが辛い日々を過ごす事になった元凶の一つでもある。
いいイメージを持たないが、ゼラヴィア帝国がこの学園に来てからと言うもの、専用機持ちの女子達は言っちゃ悪いがすっかり落ち目だ。
今迄の彼女達と綺羅の地位を大文寺 リョウマがとって変わった印象がある。
姉で教師の綺羅 ユキナも過去の栄光で持ってる節がある。
正直こうなるとは思いだにしなかった。
それはそうと――
「あのバカでかい戦艦も無くなったなぁ」
「そう――だね――」
あのゼラヴィア帝国の旗艦は学園から居なくなった。
学園を少しでも巻き込まないための配慮らしい。
思うに彼達は本当に善良な宇宙人だったんだなと新めて思う。
「って、こんな時に警報かよ――」
この学園にはロクな戦力が残ってないのに、人類の天敵ディセントが迫りくるようだ。
ロクな戦力も残っていないのに――
そもそも銀河連邦の匙加減一つでこの学園も吹き飛ぶのに。
戦う意味なんて。
守る意味なんてあるのか?
そう思ってしまう。
「戦わないの?」
「戦ってどうなるんだよ?」
「そうだね」
「お前は戦うのか?」
「うん。誓ったから」
「たく――変わったよお前は――」
綺羅 セイジはまだ憎たらしいが変わった。
もっと早く変わってくれりゃアイツの、ヒデトの運命も変わっただろうに。
だが今は戦う事が重要だ。
俺達はエクスアーマーを装着し、空を舞う。
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