第31話「リオナ大佐」

 Side ディノ・ゼラヴィア


「これはどう言うことだ!?」

 

 天下の綺羅 ユキナがエクスアーマーを装着して明らかに狼狽している。

 この状況では完全に彼女は端役だ。

 それが不謹慎ながらディノはちょっと面白かった。

 

「銀河連邦がこんな大胆な手を打ってくるとはね。たかが大佐風情が? 上は承知なのか?」


 挑発気味に僕は探りを入れてみる。


「ゼラヴィア帝国の皇子に死んで頂ければ戦況は好転します」


 と、リオナ大佐は言うが――


「そんな簡単なものかね? 僕が死んでも神格化して祭り上げて士気高揚に使うと思うがね」


 と、ガンダ〇のガル●の死を思い出しながらディノは言った。

 ゼラヴィア帝国は緩い雰囲気があるが、やる時はやる帝国だ。

 無能ではない。

 そもそも無能ならとっくの昔に滅亡している。

 

「そもそも僕がここで死んだとしてもだ。待ってるのは落としどころのない全面戦争だよ? 君達は連戦連勝を重ねてると本国ではアピールしてるけど、戦争が終わった頃には他の勢力に食いつぶされるのがオチだ」


 昔のスパロ〇のバッドエンドルートであったな。

 幾らマジンカイ〇ーや真ゲッ〇ー、ガン〇スターを保有していても戦略的に立ち回らなければ政治、外交的に敗北してしまうのだ。 

 

 いや、この3機があれば力押しでいけるか?

 宇宙怪獣の群れともマトモにやり合えるし。


「ご教授頂きありがとうございますわ。なら捕虜になって頂きましょうか? 賠償金は幾らになるでしょうか?」


「最初からそれが狙い?」


「いえいえ。私も上のやり方に振り回されての行き当たりバッタリですのよ」


(キャラクターが掴めない……油断しない方がいいな)


 頭が悪いのか、それとも柔軟性があるのか分からない。

 本当に行き当たりばったりの可能性もあるが現に平然とやり方を変えた。

 こう言うギャグマンガの世界に片足突っ込んでるようなキャラクター性の奴は油断してはならないとディノは考えている。


「それに日本も銀河連邦のやり方に賛同していただけると思いますし――世界中の国々はどうでしょうかね? 何時までも学園に引き籠っている帝国と有益なビジネス相手になってくれる連邦。どちらを優先するか考えるまでもないとは思いますが」


「そんな物、状況次第でいくらでも言い訳すると思うよ。例えば一時的に君達に味方して、帝国が有利になった後、問い詰めても銀河連邦に脅されましたとでも言えばそれで済むわけだし」


「ふむ。ただのお坊ちゃまではないみたいですね」


「皇帝の皇子の肩書は伊達じゃないんでね」


 そう言って僕はこう続ける。


「それにここまで大々的に動いてどう誤魔化す気? 銀河連邦の法的に大丈夫なの?」


「それはご安心を。武力と権力さえあればどうとでもなると言う奴ですわ。まあ都合が悪くなれば私の独断とでもするつもりなんでしょう」


 リオナ大佐の副官が「それ自分で言いますか」と呆れている様子だった。

 ディノはますます厄介な手合いに感じていた。


「最悪、この場の事態も日本政府の独断にして私はその事態を収集しに来たと言うシナリオもいいかも知れませんね」


 今度は周囲が「えっ!?」となる場面だった。

 完全に場の空気はリオナ大佐の独壇場になっている。


「ちょっと待ってください大佐。我々の任務は――」


「分かってます分かってます。ディノ皇子の始末、できれば身柄の確保でしょ? それと地球を銀河連邦に抱き込めないかでしたね。手始めに日本はほぼ抱き込めた感じでしたけど――今一この国の連中信用できないのよね。たまたま通った駄菓子屋のおばちゃんとかを仲間にした方がいいわね」


「私の目を盗んでなにやってんですか?」


 部下の目を盗んで駄菓子屋行ってたのかよ、この人。

 てかまだ駄菓子屋経営しているところあるのかこの日本に。

 逆に教えて欲しいとディノは気になった。


「息抜きは必要よ? それにこの国酷すぎない? よくクーデター起きないわね。私ならクーデター起こしてるわよ」


 などと漫才を始める始末だった。

 てか銀河連邦はそう言う目で見てるのか日本。

 色々と終わってるなこの国、などとディノは思う。

 

「あーなんか疲れてきた。帝国に亡命しよかな。ぶっちゃけ銀河連邦落ち目出し、ブラックだし」


「しまいに射殺しますよ?」


「助けてディノ皇子。部下が脅迫してくる」


「あの、副官の方、そのまま射殺すればよろしいかと」


 ディノは自分の立場を忘れてなんかどうでもよくなった。

 副官のジーナも、綺羅 ユキナも、取り囲んでいる兵士も微妙な雰囲気になっている。


(なにこの状況)


 もうこのまま帰ってもいいかなとかディノは思い始めていた。

 これが心理戦の類なら間違いなくディノの完敗であるが実際はどうなのだろうなどとディノは頭を働かせる。


「んじゃあそろそろ真面目にお仕事しますか。帰って鋼鉄ジー〇みないといけないし」


「何故そこで鋼鉄ジー〇?」


「あら? やっぱり皇子も知ってるの鋼鉄ジー〇? あ、そうじゃなくて仕事仕事。取り押さえて――」 

 

 などと言っているウチに外で爆音が響いた。

 

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